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攘夷戦争。
突如地球外から現れ開国を迫った天人及びそれに屈した幕府軍、そして国を護ろうと反旗を翻した攘夷志士との間に起こった長い長い戦争。

結果は知っての通り、攘夷志士は敗れ、今では天人がふんぞり返って歩く時代。

真選組は幕府に属しているため、今でも細々と活動している攘夷浪士は取り締まるべき相手となる。
中でも攘夷党の党首・桂小太郎は、過激なテロ行為で危険視されており、今までも数回尻尾を掴んではソーコの隊と追いかけっこをしている。
しかし逃げ足が異常に速い桂を毎回取り逃がしているため、ソーコも相当ストレスがたまっているらしく、桂の情報が入ったら自分に知らせろ、と山崎に口酸っぱく言っている程だ。

真選組の優秀な監察方が、そんな桂の尻尾を掴んだのがつい先ほどのこと。

既に戌威星の大使館が爆破テロに遭い、ニュースはその話題で持ちきりだった。


攘夷党は現在、池田屋というホテルを拠点にどうやら動いているらしい、と山崎が情報を持ってくると、既に大使館近くに待機していた土方とソーコ 率いる一番隊は、すぐに移動を始める。幸い此所からそんなに遠くない場所だ。
今度こそ取っ捕まえてあの鬱陶しい髪を引きちぎってやる。そんな思いに駈られてソーコは自然と早足になった。


あの、屯所の私室を移動する事件があった翌日から、ソーコの服装が変わった。
今まで彼女は動きやすいからとショートパンツを着用していたのだが、今は他の隊士と同じ隊服だ。
肌の露出をしなくなったことを突っこんで聞くことなど誰もできず、理由は解らないままだ。
しかし、土方は何となくソーコが異性の目を気にし始めたのだろうと読んでいる。あの日自分が一喝入れてやったから、少しは女としての自覚が生まれたのかもしれない。

前を歩くソーコの背は、相変わらず細く、頼りないが、内側から沸き上がる自信が、一番隊を率いる者としての強さを感じさせた。





◆◇◆◇◆◇




真選組が池田屋に突入したのは、そろそろ日が落ちる時間帯、江戸の町が橙色に染まり行く頃であった。
山崎の読み通り、このホテルの一室に拠を構えていた桂は、偶然を装って巻き込んだかつての同志・坂田銀時と彼が率いる万事屋と共に、ホテル15階の倉庫に身を潜めていた。

こうやって隠れたり逃げたりするのは日常茶飯事だが、噂に名高い真選組の鬼副長さま直々にお相手することになるのは初めてだ。
武者震いがする。


「桂さん!なんなんですかさっきの人ら!?」


「武装警察真選組。反乱分子を即時処分する対テロ用特殊部隊だ」


真選組に追っかけられるなんて人生初の体験で、新八は顔面蒼白している。反対に、既に慣れっこの桂は涼しい顔で答えた。


「ヅラァ、どーすんだよ夕方のドラマの再放送見逃しちまうじゃねーか」


同じく涼しい顔で銀時は鼻をほじりながら、間延びした声で言う。ちなみに銀時が観たがっているドラマは今日が最終回である。敵と味方、禁断の恋の行方は…!?的なやつである。
あーあ、毎日楽しみにしてたのになぁ……とストーリーを思い返していると、銀時は何かを思い付いたようにハッとしたのだった。


ついさっき、真選組が御用改めに乗り込んで来た際。瞳孔開き気味の鬼副長の隣で無表情で立っていた少女。
数分後には此方に向かってバズーカをぶっぱなして来た破天荒な少女。

彼女と桂はどうやら顔見知りのようで、敵である真選組の少女を見て桂は頬を緩めていたのを思い出した。


『オッキー!何だその格好は!いつもの絶対領域が見えないではないか!』


『誰がオッキーでィ…。桂!今日こそ逃がしやせんぜ』


緩みきった顔の桂を冷酷な顔で見下ろし、肩にバズーカ砲を担いだまま、細い身体のどこにそんな体力があるのか不思議な程、凄いスピードで追いかけて来た通称“オッキー”。攘夷浪士と真選組。男と女。敵と味方の禁断の恋の行方は的な事が、もしや桂にも起きているのではないか。
恋愛など長いことご無沙汰な銀時は、昔馴染みである桂がそんな状況下に居るのが面白くない。



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