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すっかり日も暮れて、辺りは闇に包まれる。

厠で発見された近藤は、何故か逆立ちで便器に顔を突っ込み、気を失っていた。
被害に遇った他の隊士同様、譫言のように「赤い着物の女が…」と言っている。

これまで幽霊事件には半信半疑だった万事屋一行も、現場に居合わせてしまえば信じるほかない。

局長室で寝込んでいる近藤を囲み、土方とソーコ、そして万事屋一行は、今後の対策を練る。


「この屋敷に得体のしれねーもんがいるのは確かだ」


「…やっぱり幽霊ですか」


新八が冷や汗を流しながら呟くと、万事屋の大人代表、銀時は鼻をほじりながら声をあげる。
いい加減家に帰って休みたい。
そもそも何で無償で真選組の幽霊退治に付き合わなきゃならんのか。夏だしオバケ退治なんて儲かるんじゃねーの、とほんの出来心で試みた作戦だったが、どうやら失敗だったらしい。


「アホらし、つき合いきれねーや。オイてめーら帰るぞ」


「銀さん…」


そう言って立ち上がると、迷わず銀時は神楽と新八の手を握った。



「「「………」」」



手を繋いで帰る、なんて。
しかも少し汗ばんでいるという。

まさか、と思ったソーコは目を光らせ、
「あっ赤い着物の女!!」
と鎌をかけてみると、面白いぐらい単純に引っ掛かった。銀時は瞬時に押し入れに飛び込んだのだ。

どうやら幽霊が恐いらしい。

人の弱味を握るのが大好きなソーコは、思わぬ餌の登場に、久しぶりに頬を綻ばせて黒い笑みを浮かべた。


「土方さん土方さん、コイツは……。

ん?」



隣に座っていた筈の土方の肩を叩こうとしたが、ソーコの手は空を切った。見れば、隣には誰もいない。ついさっきまで此処にいたのにおかしいな、と、局長室をきょろきょろ見渡すと、部屋の奥に飾られた壷の口から足がジタバタ動いているのが見える。



「………」



釣れなくてもいい魚まで釣れた。
今まで散々馬鹿にしていたくせに、幽霊が恐いなんてオチじゃあ、笑えない。

年少組の冷ややかな視線を受け、「待て待て待て!違う!」と必死に弁解を始める銀時と土方。
しかしもう誤魔化しきれないレベルなので、新八も神楽も、ソーコも、このダメな大人二人に愛想を尽かしたのか、さっさと部屋を出ていこうとする。

そしてその時、先頭を歩いていた神楽が、部屋を覗く何者かにいち早く気付く。それに続いて後ろの二人も、"それ"と目が合ってしまった。



「「「ぎゃあああぁ!!!」」」



逆さ吊りで口をぱっくり開け、此方を恐ろしい形相で覗いていた、黒髪の女と。

三人は土方と銀時を置き去りにし、無我夢中で屯所内を走り回った。



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