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ドSが泊まりに来た。

いつもなら銀時に新八の所行ってこい、と厄介払いされる神楽であったが、昨日は何も言われなかったので、そのまま居座ることになった。
風呂上がりのソーコと遅くまでお笑い番組を観、自然と睡魔が襲ってきたので寝床である押し入れに引っ込むと、いつの間にか眠ってしまったらしい。

夜中、厠に起きた神楽が何気なく寝室の襖へ近付くと中から物音がしたので、二人がまだ起きていると分かったが、その襖を開ける勇気も覗く勇気もなかった。
声は抑えていたが、ソーコが微かに喘いだのが聞こえたからだ。普段の彼女からは想像が出来ない声に絶句し、急いで用を済ますと、再び押し入れに閉じ籠もる。
暗闇の中、早く寝ようと目をぎゅっと閉じ、睡魔が来るのを待っていたが、こんな時に限ってなかなか寝付けない。

神楽は久しぶりに小一時間程眠れない夜を過ごした。






翌朝、やはりソーコは朝食の時間になっても起きて来なかった。
寝ぼけ眼の銀時だけがボリボリと頭を掻きながら現れ、適当に朝食を作ると、いつも通り二人で食卓を囲んだ。



「…まだ寝てるアルか?」



卵かけご飯を掻き込みながらそれとなく聞いてみると、味噌汁を啜りながらテレビを観ている銀時は「あー寝てる寝てる」と上の空で返事をかえす。
朝起きれなくした原因の男を白い目で見つめ、食べ終わった食器を流しに入れて身支度を整えると、神楽は外へ飛び出した。

夏休み中の近所の子供たちと遊ぶために。





◆◇◆◇◆◇


子供たちの間で今流行っている遊び。
それはカブト虫相撲。
樽の上でお互いのカブト虫を闘わせて勝った方がそのカブト虫をゲット出来るというシンプルな遊びである。


「強ェェェ!!マジ強くね?よっちゃんの曙X!」


曙Xは五人抜きを果たした。樽の横にしゃがみこみ、それをじっと見つめていた神楽は、時は来たと遂に重い腰を上げる。


「ハイ!ハイ!次私が行くアル」


「おう神楽か、いいぜ〜その生意気な鼻へし折ってやる」


「私の定春28号だってお前らの奴とは食べてるものが違うネ、いくぜ定春28号!!」


まるでポケモンのように神楽が自信満々で取り出したのは、定春28号というカブト虫…ではなく、フンコロガシ。確かに食べてるものは違うが、一体何処で捕まえてきたのだろう。
土俵に上がった定春28号を見て、観戦している少年たちは皆一斉にシーンと言葉を失った。
しかし次の瞬間、堰を切ったように不満が爆発する。


「お前さァルールわかってんの!?これはカブトムシ同士で相撲をとらせる遊びなんだぞ!」


「オメーどこの世界にクソまみれで土俵に上がってくる力士がいるよ!!もういいよ!帰れお前!」


男の中に女が一人。まだ年端もいかぬ子供達にとって、それだけでも仲間外れの対称となり、口々に神楽を追い出そうとしたが、それを止めたのは通りがかりの人物だった。



「オゥオゥ、仲良く遊ばなきゃいけねーよ」



突然ふらりと現れたソーコからは、風呂上がりの良い匂いがした。今日は非番だと言っていたので、薄地の着流しだけをさらっと着ている。
真選組の姉ちゃんだ…と少年達は呆気に取られ、恥ずかしいのか皆大人しくなっていると、神楽だけはいつもの調子で噛み付いてくる。



「いつまで寝てるアルかァ、さっさと勝負するアル!」


そう言って、土俵の上で動いている定春28号を指差した。


「真選組の姉ちゃんがカブトムシなんて持ってるわけねーだろ!早く帰れよお前!」


少年達が慌てて神楽を牽制するが、神楽の闘争心に満ち満ちた目からは炎が消えない。このガキ共は勝負すらしてくれないから、最早相手はソーコしかいないのだ。

じいっと樽の上のフンコロガシと、少年達が手に持っているカブトムシを眺めて状況を把握したソーコは腕を組み、何かを思案した後、勝負をしろと駄々をこねる神楽を引っ張ってその場を後にした。



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