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隣に立つソーコが纏うオーラがどんどん冷たくなっていくのを感じ、土方は冷や汗をたらす。
まさか桂がソーコにこれだけ好意を寄せていたとは…。最初は青筋を立てて桂を諌めていた土方も、ここまで愛の言葉を捲し立てられているのを見れば、何も言えなくなってしまう。
というか、桂が最近良く姿を現すようになったのは、ソーコに会いたいが故なのではないかと思ってしまう。それならソーコを餌に桂を誘き寄せる作戦もあるか……?と、考えたがすぐに止めた。彼女にそんな器用な心理戦が出来るわけがない。


「……土方さん、あたいそろそろ限界でィ」


言うが否や、ジャキっと肩に担いだバズーカの銃口を目標に合わせてセットした。


「ここを桂の棺桶にしまさァ」


散々な一日だ。まさか今まで追いかけてきた攘夷浪士にデートに誘われるなど、情けなくて仕方がない。ここまで馬鹿にされたのは初めてだ。ソーコ にしてみたら桂に、お前なんて怖くもなんともねーよ、と遠回しに言われているように感じる。


「……馬鹿にすんのもいい加減にしろよ、桂ァ」


誰にも聞こえない声でボソッと呟き、その目をぎらりと光らせると、ソーコはバズーカ砲の引き金を引……こうとした。瞬間。

突然襖が開いたかと思うと、中にいた四人が一斉に飛び出してきた。


「「!!」」


咄嗟に身体が反応し、避けることは出来たが、先頭で飛び出していった桂の姿は一瞬のうちに小さくなっていた。
やばい、とすぐに後を追おうと駆け出したソーコの前に、今度は銀髪が立ち塞がる。彼とは今日初めて顔を合わせた。初対面だ。
しかし今は構っている暇はない、と避けようとしたが、銀髪はしつこくソーコの行く手を阻む。



「オッキー!オッキィーー!!」


「なっ……何でィあんたは!?そこどきなせぇ!!」


物凄い形相で見知らぬ男に勝手につけられたあだ名でよばれ、流石のソーコも怯む。


「ヅラよりこの爆弾止めてくれェ!!爆弾処理班とかさ……なんかいるだろオイ!!」


「「…………」」


一瞬、その場は水を打ったような静寂に包まれる。

ソーコもソーコの周りの隊士達も、皆食い入るように銀時が持っている爆弾を見つめると、次の瞬間一斉に散った。


「おわァァァ爆弾もってんぞコイツ!!」


「ちょっ……待てオイ!!」


一目散に逃げ出す隊士達に便乗するかのように、悪いがあたいは爆弾処理班じゃねーんで、と言い残し、ソーコもしれっと逃げ出した。
一人取り残された銀時は、手に持った爆弾の画面を見て驚愕する。あと6秒しかない。


無理!!もう死ぬ!!


かつて戦場で死を覚悟する瞬間など何度も経験したが、まさかこんな所で終焉を迎えるとは。
今までの人生が走馬灯のように見え始めた時、パッと自分の前に現れた小さな影。


「銀ちゃん歯ァくいしばるネ」


「!」



ほあちゃアアアアア!!



幼い少女の絶叫が聞こえたと思うと、銀時の体はホテル廊下の窓を突き破り、あっという間に見えなくなった。
そして数秒後、凄まじい爆音が江戸の町に轟いた。


ぽかんとその場に座り込んだソーコは、さっきの男の安否が気になったが、それ以上に桂をまた取り逃がした事に気付き眉をしかめる。



「お……沖田隊長、大丈夫ですか?」


「あたりめーだろィ。桂は?」


「それがさっきの騒動で見失ったらしくて……」


聞かなくても解っていたことだが、改めて言葉にされるとやはり悔しい。一体いつまでこの鬼ごっこを続ける気か。むしろ桂がそれを望んでいるらしいのが勘にさわる。
ふぅー、と大きく息を吐くと、ソーコはすっきりした顔で予想外のことを言い放った。


「やめでさァ。あたい桂を追っかけんのはもうやめる!ザキにも言っといてくだせぇ」


今度からは他の隊に回してくれ、そう言ってソーコはホテルの非常階段のドアを開けて行ってしまった。

残された隊士は呆然として言葉を失う。


沖田隊長が獲物を諦めるなんて、明日槍でも降ってくるんじゃねえのか!?と。

しかしこのソーコの選択が、逆に桂につきまとわれる原因になるのは言うまでもない。



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