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「やっべぇ!マジでやっべぇ!!」


普段のソーコからは想像が出来ない取り乱し様に、新八は慌ててソーコを宥める。


「ど、どうしたんですか沖田さん!?」


「あれ見ろィ!とっつぁんの軍艦だ!!ターミナル諸とも吹っ飛ばされて終いでさァ!!」


「え゛え゛ぇ!!!」


このまま軍艦のキャノン砲に一斉放射されて骨も残さずに死ぬのは絶対に御免だ。
ソーコは全速力で駆け出して、出来るだけ軍艦から見えやすい場所へ移動し、松平に向かって大きく手を振る。
こうなったら、自分の身を囮に使って時間を稼ぐしかない。


チラリと横目で戦場を見れば、えいりあんに取り込まれた神楽を救出するのに必死になっている二人の姿が見える。まだ時間が掛かりそうだ。
幸いにも松平はターミナルから手を振るソーコに気付いたらしく、スピーカーからいつものとっつぁんの声が聞こえてきた。


『ソーコ…テメェそんなとこで何やってる?さっさと逃げねえと松っちゃん砲の餌食になるぞ』


「とっつぁん!!ガキが一人えいりあんに取り込まれてる!!もうちっと待ってくれィ!!」


果たしてこの声が届いているのか不明だが、最悪の事態だというのは理解できる。松平は気が短いのだ。さっさと撤収しないといくらソーコが残っているとは言え、あのキャノン砲を容赦なく発射するだろう。

今現場の指揮をとっているのは松平だ。これが近藤だったら神楽救出まで待っていてくれるだろうが、松平は子供一人の命と江戸を同じ秤にかけるようなことはしない。良くも悪くも大義に殉じている。



『因みにソーコ、5時から娘の誕生パーチーあるから。あと5分で発射だから』


「「5分んんんん!!??」」



側で聞いていた新八も、松平の衝撃の発言に声を荒らげる。5分以内に神楽をえいりあんから救出してターミナルから離れないといけない。脳内でシミュレーションしても、5人の生存率は絶望的だ。



「旦那ァァ!!最低でもあと3分で何とかしてくれィ!!」


必死にえいりあんと闘いながら神楽を起こそうと奮闘中の銀時に呼びかけると、銀時は目を血走らせて反論する。


「カップラーメンじゃねぇんだよ!!えいりあん相手にしてんのコッチはァ!!」


斬っても叩いてもきりがないえいりあんに苛つきながらも、とりあえず神楽の目を覚まそうと声をかけ続ける。ソーコと新八も加勢した。



「チャイナ!!テメーさっさと起きやがれ!!」


刀を振り回しながら神楽の眼前でソーコは叫ぶ。
新八はソーコの素早い動きに圧倒されていた。
思えば彼女が闘っている姿を見るのは煉獄関以来であるが、全く無駄のない動きと迷いのない太刀筋は、幼い頃から剣術修行に明け暮れていた新八の目から見ても見事としか言いようがない。
型にはまらない銀時の強さとは違う種類の凛とした強さを持っている。

ソーコと銀時、そして星海坊主。この三人が揃ってもまだ抵抗してくるえいりあんを見て、勝利は絶望的かと思えた。



「この糞チャイナぁぁ!!酢昆布灰にされてもいいのかァァ!?」


「神楽起きろ!!ほーら!!酢昆布食べちゃうぞ〜!!」


こうなったら神楽の好物で釣るしかない、と、二人は酢昆布作戦を強行した。
その瞬間、深く閉じられていた神楽の目蓋がピクリと動く。


「あ…神楽ちゃんが!!」


もう一押しか、と銀時は懐に忍ばせていた酢昆布をくちゃくちゃとかじり出す。何故懐に酢昆布が、という疑問は言わないでおこう。

酢昆布を貪る音と独特の香りに、遂に神楽は目覚めの時を迎える。


パチッと瞬間的に目を見開き、
「それワタシの酢昆布ネェェェ!!」と叫びながら、自らえいりあんの脚を振りほどいて飛び出してきた。

その拍子に空中に投げ出された身体を、ソーコは寸での所でキャッチする。



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