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二人は二手に分かれて捜査を行うことにした。

銀時が煉獄関最強の闘士・鬼道丸の後をつけ、その身辺を調査、対してソーコは煉獄関周辺を張り込み、怪しい人物に事情聴取をすることになった。

刀を隠した女が一人でこんな場所に居れば、近寄ってくる輩は山程いたが、そういうやつは大抵雑魚だった。一応情報を吐かせようと詰問するが尻尾は出てこない。

倒した雑魚の山の上に座り、溜め息を吐くと、今までの輩とは違う鋭い視線を感じたので、ソーコは緊張を走らせる。

やっと大物がきたか…と、ソーコは気取られないように瞳をそちらにずらすと、今一番見たくない人物の顔が映った。


「げっ…」


思わず声を漏らしてしまう程。
その男は腕組みをしたまま此方を鋭い視線で居抜き、くわえ煙草からは灰が微かに舞った。


「オフの日まで仕事とは御苦労だな。お前がそんなに働き者だとは思わなかったよ…」


そう言うとゆっくりソーコに近付いてきた。

土方は、最近様子がおかしいソーコに気付いており、非番の日を狙って後をつけていたのだ。


「あーあ、見つかっちまいましたねィ」


膨れてお手上げのポーズをしてみれば、土方は笑みを深くした。騙されないぞ。笑っていない。口元は上がっているが、目は笑っていない。

煉獄関は関わってはいけない場所だ。
御上が絡んでいる違法な場所は、幕臣である以上見てみぬ振りをしなくてはいけないのだ。


「帰るぞ」


「…いや、実は、土方さん…あたい一人で調査してるわけじゃねぇんで」


言いにくそうにボソボソと言葉を濁す。普段の凛とした姿とは打ってかわって、悪戯が見つかった子供のようになっているソーコを叱りつけるのは気が引けたが、土方は大分苛々していた。
煙草の消費量がいつにもまして多い。


「知ってる」


細っこい腕を引いて屯所に帰ろうとするが、ソーコは抵抗した。
ソーコが朝屯所を出たときから今まで尾行していたのだ、手を組んだ相手が誰だかは解っている。
それが気に入らないのだ。
万事屋の男は土方の中で一番気に障る男だった。
飄飄としている癖に計り知れない強さを隠し、そして虎視眈々とソーコを狙っているのが解る。

ぐいぐい引っ張っていく土方に、始めは気後れしていたソーコだったが、次第に自分も苛ついてきた。


「放しなせェよ、こっちはアンタみてーに心腐らせてまで幕臣気取ってるわけじゃねぇんでさァ」


土方がぴたり、と動きを止めた瞬間にソーコは手を振り払う。

確かにソーコの気持ちも解らないことはないのだ。

幕府が何だ、不正を取り締まるのが警察の役目じゃないのか?と何度も疑問に思ったことがある。
ただ、真選組を失うことだけはしたくない。
それと天秤にかけると、どうしても身動きがとれなくなってしまう。

押し黙る土方を睨み付けソーコは腕を振り払い、目もくれずにスタスタと早足で歩いていく。


「…おい、何処行く」


チッと舌打ちをしながらも、このまま放っておくわけにはいかない。


「そろそろ約束の時間でさァ」


お互い得た情報を共有するため、銀時とは町で落ち合うことになっている。此方は大した情報は得られなかったが、銀時の方は鬼道丸について何か解ったことがあるかもしれない。今はほんの少しでも手掛かりが必要なのだ。

しかし、彼女にいくら勘に障る態度をとられても、勝手にしろ、などと言ってやるつもりは無かった。

黙って去っていく彼女の背を、土方は追った。



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