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そこら中の電信柱にある宣戦布告状を剥がして歩いていたら、いつのまにか町外れに出ていた。
こんな所にまで貼るとは、うちの隊士は相当暇をしているらしい。人通りも疎らなこの辺りに貼ったってなんの意味もないだろうに。
溜め息を吐きながら、また一枚、びりっと剥がす。


「…ん?」


その貼り紙におかしな所を発見し、ソーコは文章をもう一度始めから読み返した。
白髪の侍へ、から、一族根絶やしにすんぞ、まではそのままだ。しかし、その後。
今までのものには最後に「真選組」と書いてあったのに、これには書かれていない。
まさか一枚一枚手書きで書いているわけじゃあるまいし、何故だろうと首を傾げるソーコの目に、すこし離れたところの民家の壁に、また貼り紙が見える。
それにも近寄ってみると、文章はそのままで、今度は最後に"↑"の矢印が書かれていた。



「…何でィ、こりゃ?」


素直に矢印の方向を向いてみると、かなり離れた場所に紙切れが見える。遠すぎて何が書いてあるかは解らない。
あちらはもう完全に町外れで、少し歩けば道路も舗装されていない砂利道になってしまう。

間違いない、誘導されている。
罠だろうか。

引き返そうとも思ったが、もしここで引き返したら大物を取り逃がすかもしれない。
それに今日は帯刀しているし、万が一戦闘になったとしても負けてやるつもりはない。


「…罠に引っかかってやるかィ」


ポツリと呟いて、ソーコは早足で少し離れた場所まで行く。

その貼り紙にはもう文章すら書かれておらず、更に奥へとソーコを誘う矢印だけだった。
その指示に素直に従うソーコ。
辺りには時折吹く風の音と、自分の足音だけが響いた。

その誘導は数枚続き、あまりにも誰の気配もないので少々飽きてきたが、6枚目の貼り紙を見た後、山道の入り口のところの一本杉に貼り紙が貼られているのを見つけた。
山まで行ったら流石に面倒なことになるので引き返すか、と思ったが、遠目でもそれが矢印ではなく文章であることにソーコは気付く。

駆け足で一本杉に近付き、そこに書かれていた文字をよんで絶句した。




『お友達から 桂』




一瞬何が何だか解らなかった。

しかし内容を理解すると、ゾワッと身体中に鳥肌がたつ。



「………」



きっとこの近くに身を潜めているのだろう。何処かから自分を監視しているのだろう。どこかに隠れて此方の反応を窺っている。

あの長髪の優男がーーー…




『我々は相容れぬ関係だ…しかしそれでも…

オッキー!!
お友達から始めようじゃないかァ!!』



「お友達にもならんわァ!!」




ーーーザンッ!



いつかの池田屋の桂を思い出せば体が勝手に動き、一本杉は貼り紙もろとも真っ二つに切れて、音を立ててそこに崩れ落ちた。





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