旅に出て半年が経った頃の話だ。
その時オレはジョウトのジム制覇のために、それぞれの町を回ってバッチを集めていた。
山に登ったり、海を渡ったり“そらをとぶ”が使えるようになるまで苦労した。
でも“そらをとぶ”で行けるのは今まで行ったことのある所だけで、新しい町へはやはり自分の足で行かなくちゃならないけど。
こおりの抜け道を寒さに凍えながらやっとのことで乗り越え、最後のジムがあるフスベシティに着いたオレは、ジム戦の前にコガネシティへ飛んだ。
一体道具を整理してから挑もうと思ったんだ。
特になんでもなおしは、ほぼ底を尽きかけていたしな。
こおりの抜け道で、さんざんこおらされて対処に困るし、寒いし、滑るしで散々だ全く。
ジムがなければこんな辺境ともいえる所まで来てなかったと思う、多分一生。
最後のジムリーダー、イブキさんはドラゴン使いって聞いたから対策も立てないとな。
まあオレのオーダイルがこおりの抜け道でふぶきを覚えたし。
いざとなれば相性なんて関係ない、力で押し切るのみだ。

だからオレはデパートで道具を買い込み、いらない物は売ってかばんをすっきりさせた。
使わない物を後生大事に取っておいても重いだけじゃん。
今日はここのポケモンセンターに泊まって、明日フスベシティに戻ろう。
一晩体調をベストにしてからジム戦だ!
最後だし、強敵になることは間違いないから気合い入れていかないとな。
ポケモンセンターに戻り、手持ちのポケモンを全部出してご飯を食べさせていた。


「ねぇ、この子たちってあなたのポケモン?」

「…そうだけど。もしかしてバトルの申し込み?」

「ううん、あたしトレーナーじゃないから」


旅をしていたが、トレーナー以外と会うのは珍しかった。
だから何をしているのか、と訊ねた。
そしたら「ウォッチャーよ」なんて返ってきたんだ。
ウォッチャー、観察者……ポケモンの生態系を記録する人。
職業は知っていたが、実際にしている人を見るのは初めてだった。
どうやらカントーから来て、着いたばかりらしい。
オレのポケモンを珍しそうに観察していた。
この地方じゃ、どいつも珍しくないポケモンなんだけどな。
代わりに彼女の手持ちも見せてもらった。
さすがにカントー出身だけあって、ジョウトでは見れない珍しいポケモンばかり。
特にピカチュウは初めて見たから思わず触ったら、驚かれて感電したっけ。


「へぇ、バッチを集めてるんだ。
あたしの幼なじみもバッチを集めに旅に出たんだよ。
今は音信不通なやつもいるけど」

「心配、じゃないんですか」

「心配だけどポケモン馬鹿だからね、きっとどこかにいるよ。
それよりさ、他にも珍しいポケモンはいない?」

「オレはあんまりポケモン捕まえないから……
あ、他のトレーナーが珍しいポケモン持ってたっけ」


そうやってポケモン図鑑を取り出して、ジョウトにしかいないポケモンを一覧から探していたら、彼女は目を丸くした。


「それってポケモン図鑑…!」

「はい、ウツギ博士から……知ってるんですね」

「知ってるよ!だってレッドとグリーンも持ってるもの。
オーキド博士から貰ってね」

「あのオーキド博士から?ラジオで有名な方ですよね。
すっげぇ……レッドとグリーンっていうのは」

「さっき言ったあたしの幼なじみね。
グリーンはカントーに来たらいずれ会えると思うわ。
それかマサラタウンを訪ねたらあいつの実家もあるし。
グリーンは強いから、きっと手強い敵になると思う。」

「へぇ、グリーンね……面白そうじゃないですか。
いつか行ってみますよ、カントーに。
その時は案内してくれます?」

「いいよあたしでよければ。ポケギアは持ってる?」

「はい」

「これあたしの番号ね、いつでも連絡して」

「ありがとうございます」

「ごめんね、今から約束があるんだ。
またジョウトのポケモン見せてね、ゴールドくん」

「はい。その時はカントーのポケモンも見せてくださいよ」

「オッケー!じゃあね」


笑ってエンさんは外に出ると、オニドリルに乗って空に消えた。
エンさんね……うん、なかなか面白い人だった。
バッチ全部集めて落ち着いたら、カントーに渡ってみようかな。
コガネとカントーのヤマブキ間にリニアが開通する予定だから、それを待つのもいい。
カントーのジムリーダーはどんなタイプを使うのだろうか。

その時オレは自分がチャンピオンになることも、リーグ制覇した後すぐにカントーへ渡ることも知らなかった。
そしてワタルさんを倒したあとに耳にする「レッド」という、伝説のトレーナーの話。
新しく目標が一つ増えた、楽しみだな。






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