ジョウトのジムバッチを全てゲットし、生息する全てのポケモンを図鑑に記録したオレはカントー地方に来ていた。
まあぶっちゃけ言うと、どっちでも良かったんだけど博士からチケットもらったし。
勿体ないしな、金は天下の回りものだって言うだろ?
それにカントーには伝説のチャンピオンがいるって聞いたんだ。
オレと同い年で、あのR団を壊滅させたって。
(マジありえねぇ)
(いやオレも復活を阻止したけどさ)
やっぱり強いやつと戦いたいって思うのがトレーナーの性というもので。
……もしかしたら、万一だけどあの人にも会えないかなあ。
ジム制覇している途中に出会ったカントー出身の彼女。
色んなポケモンのことをたくさん教えてもらった。
名前は、エン。
確かマサラ出身と聞いていたので、マサラタウンに行きたかったがカビゴンが道を塞いでいるし。
グレン島を迂回しようとしても、工事していたから足止めを食らうという。
マサラ行きは諦めて、タマムシデパートでこれまでのジム戦で消費した持ち物を補充していた。
さすがタマムシ、コガネのデパートにも劣らない品揃えに感心しながら回っていた。
二階ですごいきずぐすりを購入しようとしたら、まさかここで彼女と再会するなんて!
「あれ……エンさん?」
「ゴーじゃん!なんでカントーに?……もしかしてジム制覇したとか!?」
「まあジョウトは。今は図鑑完成も含めてカントーを回ってます」
「向こうじゃ珍しいポケモンがいるもんね!良かったら案内してあげようか?」
「エン」
その時オレは初めて彼女の横にいた人に気付いた。
赤い上着の下に黒い服を着て、帽子も同じ赤。
もしかして彼氏、とか……?
「彼はゴー…じゃないゴールドね。ジョウト地方のチャンピオンで、図鑑所有者。
それでゴー、こっちはレッド。あたしの幼なじみで同じく図鑑所有者なんだよ」
へえ、この人がカントーの……図鑑所有者なら、レッドという人は多分強いのだろう。
オレやシルバーのように。
……レッド?どこかで聞いたことあるな。確か最近のはず。
どこで聞いたか……そんなオレの疑問を解決したのは次の言葉だった。
「なんかゴーとレッドってどこか似てる気がする……同じ図鑑所有者でチャンピオンだからかな」
「――…ええ!?この人がチャンピオン?
もしかしてR団を壊滅させたのって……」
「レッドだけど」
なんてこったこの人があの伝説と呼ばれているレッドさんなのか!
驚いたが言われてみれば、風格を醸しているように感じる。
よく考えたら、レッドさんに会うことも目的の一つなのだ。ならばやることは、
「レッドさん!オレとバトルしてください」
「………」
「いいじゃん、チャンピオン同士で!カントーとジョウトの地方対決だね」
「お願いします」
「レッド?受けないの」
「……別に構わない、ただし」
シロガネ山まで来れたら相手する。
シロガネ山……聞き覚えがあるけど思い出せない。
場所を訊こうとしたら、レッドさんはエンさんを引っ張って階段を降りていた。
多分追い付けないだろう。
――レッドさんってもしかして、エンさんのことが…?
そうだとしたら、なんてわかりやすい人なんだ。
エンさんは自分のこととなると鈍いようだから、多分あからさまなレッドさんの態度に気付いていないはず。
むしろあのレッドさんでさえ、手を焼いてるのかもしれない。
「面白そうじゃん。行ってやるよ、シロガネ山に」
こうしてシロガネ山を目指すという目的が一つ増えた。
でも、どうしても思い出せなくてウツギ博士に聞くと、カントーとジョウトの境界にあるらしい。
チャンピオンロードから行ったが封鎖されてて、訊ねたオーキド博士にカントーのジムバッチを集めてこいと言われて、シロガネ山が遠ざかった。
(てことはエンさんもシロガネ山に入れるだけの実力があるのか!?)
レッドさんとエンさんが付き合っていることを知るのは、後の話である。