吹雪に見舞われ荒ぶる山は野生のポケモンの巣窟と呼ばれている。
限りある人しか立ち入ることは許されず、またその人達すら入ろうとしないその山の名はシロガネ山。
カントーとジョウトの間に位置するシロガネ山は、雪に閉ざされ物音もしない。
猛者がたまに挑戦すれど、怪我するのが関の山。
そんな恐れられている山の頂上に一人、彼は立ち尽くしていた。
寒い外で半袖でいる彼の名はレッド、史上最強のトレーナーと噂されている。
彼は強さを求めていた。
ポケモンを愛するが故の貪欲なる探求心。
そして彼はロケット団を一人で壊滅し、最年少でチャンピオンとなった。
そんな彼にも幼なじみがいる。
かつてのライバル、グリーンは現在トキワのジムリーダー。
もう一人は、2人と違い強さを求めるのではなく、ポケモンを観察するために旅立った。
グリーンとはたまに連絡を取っているが、もう一人……エンとはマサラタウンで別れて以来会っていない。
その時はお互い連絡手段がなかった。
だからどこかで偶然会わない限り再会はない。
(エンは元気にしてるんだろうか)
過った彼女の顔を思い浮べていたらポケットの中のポケギアが震えた。
電話のようだ、グリーンと表示されている。
「もしもし」
「ああレッドか!大変なんだ、エンが……!」
「とりあえず落ち着けよ」
「今すぐにトキワジムへ来てくれ!いいな!」
要件を伝えるなりブチリと切られた。
……エンに何かあったのか?
疑問を残しつつオレは言われた通り下山してトキワジムに向かう。
外に出たのは何年ぶりだろうか………
このところ食料調達も道具の買い出しもポケモンに任せきりだったから。
雪のない景色が懐かしく思える。変わらない町並み、思い出すあの頃。
トキワジムの前に立つと、中から声が聞こえてくる。
グリーンだなこの声は、近所迷惑じゃないか?
そんなどうでもいいことを浮かべながら中に入った。
いるのはグリーンと黒い服装の女とピカチュウが一匹。
「……グリーン」
「お、レッド!」
「レッド!!」
………ん?
誰かグリーン以外にオレの名前を呼んだ。
黒い服装のやつは初対面だからオレの名前なんて知らないはず。
残るはピカチュウのみ。
気のせいか……?
「レッドもエンに何か言ってやれ、この馬鹿が」
「うううるさい!!あたしの勝手じゃない!」
「それが馬鹿だっつてんだよ」
「何を―!グリーンのくせに、ヘタレのくせに!!」
「なっ…オレはヘタレじゃね―!」
「ヘタレじゃん。レッドに逆らえないじゃん」
「………話が見えないんだけど」
とりあえず、何でグリーンとピカチュウが会話してるんだ。
しかも弾丸トーク。
もう一人はおろおろしているし、状況を説明してほしい。
「あはは……久しぶりレッド―…」
「え、ピカチュウが喋った」
「こいつはエンだ」
「は?」
「実はですね……」
困惑するオレに横にいた女が控えめに話し始めた。