あたしはよく分からない空間にぷかぷか浮いていた、それも元の姿で。
もしかして元に戻ったのかな……でも感覚がない、まるで死んだようだ。
―――あたしは死んだのだろうか?
殴られて意識を失う瞬間見えた緑の巨体は多分バンギラスのもの。
もし避けて戦っても多分勝てない、だって相性的に難しいから。
アイアンテールでも使えたら心強いけど、あいにくあたしが覚えているのは普通のわざばかりで。
その前に避けれなかったから気絶して、ここにいるんだけど。
レッドにまた迷惑かけちゃうな。きっとグリーンはあたしのことを馬鹿にするだろう。
お母さんを泣かせちゃうかもしれない。

心残りがあるとするならば、この間タマムシでグリーンに相談しながら選んだプレゼントを彼に渡せなかったこと。



最初から行動していた意味が彼だったと思うと思わず笑いが込み上げる。
どれだけ好きなんだ。
あいつはポケモン馬鹿で、ポケモンさえいればいいような。
レッドはあたしのことなんて見ていなくて、寂しかったことを覚えている。
思えば物心つく頃からずっと一緒で、二人で一緒に寝たこともお風呂に入ったこともある。
毎年流れるリーグの決勝も並んで観ては、お互いにチャンピオンになると言い合っていた。
ある日オーキド研究所を訪れたときにたくさんのポケモンを見て、わくわくした。
その時にもっとポケモンを見たい、色んな姿を見てみたいと思った。
それがウォッチャーを目指したきっかけ。そしてその時グリーンとも出会ったんだ。

ピカチュウになったこともそう。
もうすぐ彼が誕生日で、でもしばらく会ってないから何が欲しいのか分からなくて。
もしかしたら彼のポケモンなら知ってるんじゃないかと、グリーンからシロガネ山にいるらしいとは聞いていたから。
この間タマムシにわざわざリザードンを借りてまで行った理由も。
グリーンとレッドの誕生日プレゼントを買う約束をしていて、相談にも乗ってもらうつもりだった。
旅に出てからはあたしよりもグリーンの方がレッドを知っている。
………プレゼント渡せなかったな、せっかく悩んでグリーンにアドバイスされながら選んだのに。
いやだ、まだ死にたくない。あたしは、レッドと一緒にいたい!


「……、エン…」

「レッド!ッレッド!!」


誰かがあたしを呼ぶ声がする。
誰か分からないのにあたしはその人の名前を叫んで手を伸ばした。
そしたら周りは光に包まれたのだった。






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