「それでねー、彼がその時私を……」

「何で俺があいつの話を聞かなきゃいけないんだ」

「それは私の弟だから?」

「……最悪だ」


どうして俺があんなヌルいやつの話を(しかも)姉さんの口から聞かなきゃならないんだ。
そもそも姉さんとあいつが一緒に旅してるということさえ腹立たしい。
(前に止めたら「タケシくんの技術を盗みたいのよー」なんて言われた)(姉さんはブリーダー志望だから)
しかもその時「ついでに彼のバトルを研究したいのよね」なんて付け足して!
どうしてオレじゃないんだ、弟だからか?そんなの理不尽だ。
姉さんは誰にも渡すつもりはないし、仮に百歩譲っても俺より強いやつじゃないと許せない。
なのに、どうして。
姉さんがあいつを好きになったんだ………!



「おーい、マヨー!そろそろ行くぞー」

「あ、うん。今行くから」

「ちっ……お前に姉さんは渡さん!」

「な、何だよ!お前には関係ないだろ」


「また始まっちゃった……」

「いつものことだな」

「ヒカリちゃん、タケシくん。まったくどうして仲良くできないのかしら」


はあ、とため息をつく彼女の横で2人は苦笑いをこぼした。
なぜ彼らが会うたび喧嘩するのか。
それは彼女が原因だというのは誰が見ても分かるのに。
報われないサトシと、姉離れできない弟を見て肩をすくめた。




果てしなく遠い


(さっさとシスコンを直したらどうなんだ!)
(俺はシスコンじゃない!)
(どこがだよ!)
(貴様こそ姉さんから離れたらどうだ)
(誰がマヨと離れるもんか!)

(喧嘩するほど仲がいいって言うわよね)
(マヨ……(ちょっと違うかも))





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