スペ設定のVD夢




久しぶりにマサラタウンに戻って来て、のんびりしていたオレは家の前でぐるぐる回っている彼女に気が付いた。


「はあ……」
「自分の家の前で何立ち往生してんだよ?マヨ」

「!っレッド!?」
「な、なんだよ…」
「べべ別に何もないよ!?レッドこそどうしたの?」

「なんかうろうろしてるどっかの誰かさんが目に付いたのが気になっただけだけど?」
「……そんなに挙動不審に見える、私?」
「まあ、周りから見れば」

「うわあ……恥ずかし…!」
「んで?なんか悩んでるように見えたけど」
「――うん、まあね。今日が何の日か知ってる?」
「今日?」


もちろん知ってる。
今日は2月14日だろ、とっくにわかりきってるよ。
だから戻ってきたんだ。
たまたま、なんてそこまでオレも鈍くない。


「分かるとは思うけど、今日ってバレンタインでしょ?
だから……チョコ、あげようかどうか決心がつかなくて」

「――つまり好きな人に?」
「!は、はっきり言わないで!他の人に聞かれたら…っ」
「周りには誰もいないし、田舎町だからそんな人も通らないと思うけど」

「気持ちの問題なの!」
「ふうん――…ていうか好きな人、いたんだな」

「…なにその反応、私にだって好きな人くらいいるわよ。片想いだけど……」
「意外だな、そんな素振り今まで見たことなかったからさ」
「そりゃそうでしょ。だって……」
「?」
「……ううん、なんでもない」
「ならいいけど。……その好きなやつにあげないの?」

「だから渡す勇気が持てなくて困ってんじゃない。
ブルーに後押しされて作ったけど……やっぱりやめとこうかな…」


ああ、それがいいよ。
他のやつにチョコをあげる姿なんて見たくない。
しかもそれが、片想いの相手とかなおさら。
……そっか、好きな人…いるのか。
なんだよそれ、失恋確定じゃん。
もしかしたらマヨからチョコ、もらえるかなって少しだけ期待してたのに。
そのためにわざわざ戻って来たのに。
はは、失恋するために戻ってきたとか……ホント笑えないって。

チョコなんてあげなくていいじゃんと声高にして叫びたい。
でもオレとマヨは幼馴染で、オレが勝手に好きなだけだから何も言えないし、こう言うしかない。
それが例え心ない、偽善の言葉でも。


「せっかく作ったんだろ?渡してこいよ。ついでに告白したらいいじゃんか」
「こっ…!?やだ、どうしてブルーに言われたこと知ってるの!?」
「え?……マジで?」
「やだレッド!なんでそういう勘だけは鋭いの、普段は鈍いくせに」
「鈍い?何が」
「…何でもない、こっちの話。レッドが後押ししてくれるなら、私頑張れそう。
ブルーも絶対大丈夫だって、言い切ってたし。勇気湧いてきた!」

「そっか、じゃあ早くそいつのところへ行ってこいよ」


うそ、行くな。引きとめたい。
でも体が動かない。マヨの笑顔が眩しすぎて近づけない。
本当にそいつのことが好きなんだって伝わってくる。
いつまでたっても幼馴染という距離から一歩も踏み出せないオレと違って。
行ってくるとはにかんで背中を向けるあいつの手を掴もうとして……止めた。
これはオレなんかが口出ししていいことじゃない。
行くな、と引きとめすら出来ない臆病主に何を言う権利がある?

確かにマヨは好きなやつのところへ行くと言っていた。
なのにどうしてまだオレの前にいるんだ?


「レッド、これあげる」
「……それ、好きな人にあげるんじゃ、」
「――…もう、察してくれたっていいじゃない」
「それって……」


オレの前に差し出されたピンク色の箱。
目を逸らしながらも、ちらちらオレを見てくる。
さっきまで胸を支配していた痛みが、心音の高鳴りに変わっていく。
今自分の顔を見たくない、多分頬が緩んでいるはずだ。


「オレも、…オレもマヨのことが――…」


さっきまで憂鬱だった気持ちは一瞬で幸せに変わった。
今からお返しを考えないと、初めて大切な人に贈るんだからな。




執筆時間30分\(^0^)/
ぱっと浮んでそのまま訂正もなしにあげてしまったww
思い付きだからオチが微妙だけど、シリアス以外を久しぶりに書けたから後悔はしてない←





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