ボクにとって、レッドさんは大切な人。
マヨもボクの親友で、大切な人。

そうだよ、二人とも同じくらい大切な人なのに……
ボクは、自分の考えに嫌気が差した。








スオウ島でのあと、ジムリーダーを目指してレッドさんは特訓を重ねていた。
みんなそんなレッドさんに差し入れをしたり、応援していた。
もちろんボクもその一人。

だからといって、バトルの相手になったことなんてないけどね。
レッドさんの特訓場所は二ヶ所ある。
一つはわざを磨くために、森で自然を相手……もしくは手持ち同士でバトル。
もう一つは、トキワシティの公園で対人。
つまりはトレーナーとバトルすること。
最初の頃は森に籠りきりだったけど、最近は公園にいることが多い。
実戦の方が学べることが多いとレッドさんは言うけど、それは違うと思う。
ううん、理由の一つかもしれないけど、きっと本音は……


「よっ、また絵を描いてるのか?」

「……こんにちは」


毎日マヨは、これくらいの時間になると公園のベンチに座っている。
いつも絵を描いていて、とっても上手。
ボクも彼女に絵を教えてもらったことがある。
幼なじみというほど長い付き合いじゃないけど、でも親友と言える存在。
そんな親友のスケッチブックをボクはまだ、見せてもらったことがない。
へただから、なんて謙遜して覗かせてもくれないんだ。
将来は絵関係の仕事に就きたいマヨは毎日ひたすら絵を描く。
好きなのは水彩画と色鉛筆。
今度見せてくれるって、約束した。
でも、いつも何の絵を描いてるんだろう?
花壇の花?遊ぶ子供とポケモン?公園の風景?
……でも、どれもしっくりこない気がした。

本当は、考えたくもないけど……もしかして、マヨが描いてるのは…レッドさんなんじゃないかって。


マヨがよくこの公園に通いつめるようになる前から、レッドはたまにここでバトルをしていた。
楽しそうにバトルするレッドさんの姿を、いつも見ていた。
ここにいれは、月に一度は必ずレッドさんに会える。
だから、マヨはよくここへ来るようになったのかなあ、なんて。
……あ、ちょっとマヨのことをイヤって思ってしまった。
レッドさんと一緒にいたら楽しい。
とてもドキドキする。
ずっと一緒にいたいって思える。
マヨは昔からあまり人付き合いがうまくできなくて、ちょっと友達が少ない。
彼女は絵を描いているだけで満足してるけど、このままじゃダメだって思った。
だから先輩たちにマヨを紹介した。
私の感じる気持ちを、人と接する楽しさを、マヨにも知ってほしくて。

でも、今はイヤだなんて……勝手すぎるよねボク。
どうしてイヤだと思うのか、理由が分からないんだ。
マヨに話しかけて、笑うレッドさんの姿を見たくない。
…まるで、自分の居場所を取られたような、




そっか……居場所を取られたから、拗ねてたんだ。
ああ、なんて幼稚なんだろ。
きっとマヨに嫉妬してたんだ。
ボク以外にボクだけしか知らない表情を見せるマヨ。
レッドさんと私以上に仲良くなってる気がするマヨに嫉妬してたんだね。

ごめん、マヨ。
ボクは少しだけでも、マヨのことを嫌いだなんて思ってしまった。
マヨはボクの親友、マヨの親友はボク。
そうなんだよね?


ある日マヨから手渡された一枚の、スケッチブックの一部。

「イエローにあげる。約束、してたから」

広げた紙に描かれていたのは、チュチュと遊ぶ色鉛筆のボクの姿。
想像以上に絵がうまくてびっくりした。
ほらね、こんな素敵な絵を描くマヨがボクを裏切るわけない。
ありがとう、ボクの宝物にするから!






「ボクたち、ずっとずっと親友でいようね?」


「…もちろん。私とイエローはずっと親友だよ、」


(そうやって信じこむボクは)
(あの絵がマヨの世界のすべてだなんて気付けなかった)


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