無垢な彼女は私に眩しいくらいの笑顔を向けた。






「マヨ!」

「どうしたの?イエロー」

「聞いてよ、あのね…今度レッドさんとタマムシへ遊びに行くんだ!」

「……そっか。それで私に頼みたいことはなに?」

「うん!あのね、ボク今までそういうところに行ったらことがないから……この服しか持ってなくて…」

「つまりはお洒落したいのね。あのイエローが……そっかぁ」

「!、べ別にレッドさんだからとかじゃなくてっ!」

「そうなの?」

「もう!意地悪しないでよマヨ!」

「ごめんごめん。でもそのままでも十分可愛いと思うよ」

「そ、そう?」

「自信を持って、ほら?」

「ありがとうマヨ!」


それでも鏡の前で悩むイエローは可愛らしい。
その姿を素早くスケッチブックに納める。
スケッチブックはイエローばっかり。
時々マサラの図鑑所有者の人たちや野生のポケモンが間に挟まっている。
スケッチブックの中にいるイエローは、私だけのイエロー。私の世界。
可愛い可愛いイエロー。
レッドさん絡みになるともっと可愛らしい。
普段あまり見せない“女の子”になる。
レッドさん、と紡いで笑う姿は私が好きで好きで仕方ないイエロー。
ただ、その大好きな彼女を正面切って見るのは私じゃない。
マサラの情熱の赤。

仕方ないと思っても、心のどこかでは納得していない。
――…イエローに私を見てほしい。
そう願えどもイエローは女、私も女。
同性に恋してしまった禁断の想い。
イエローは底抜けに優しい。
すべてを包み込み包容する、といっても過言ではない。
そんなイエローの優しさに惹かれた私。
でもね、あなたの想い人はイエローを見ていないんだよ。
あの人はイエローの向こうを見てる。
ずっとあなたを見ている私だから気付いたの。
彼が誰を好きなのか、私は知らないし……興味は正直言ってあまりない。
私はイエローがいてくれたらそれでいいから。
例え想いが伝わらないと分かってていても。
勝機のないものだと理解して、勝負も出来ない臆病な私。
この親友という関係が崩れてイエローがいなくなってしまったら……それこそ耐えられない。
それでも、応援するよだなんて嘘もつけないから。
親友という距離のまま、あなたの隣にいさせてください。
いつかイエローが離れて行ってしまうまで。
誰よりも近い距離に。



ずっとずっとイエローを見ていた私は気付かなかった。
あの人がイエローのうしろにいた私を見ていたなんて。
私も、イエローも、あの人も決して報われない。
この関係はただ空回りするだけ――…



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