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シリアス/死ネタ




毎年この季節になったら、レッドはどんなに遠い所にいても、例え海を越えていても。
必ずマサラに戻ってくる。
家族に顔を合わせるわけでもなく。
彼女の好きな花を持って、しゃがみこんだ目の前には一つの墓石。
そこに刻まれた名前を指でなぞり、微笑む。
いつもの明るいレッドはどこにもいなかった。


「今年も来たよ、マヨ」


マヨ……それがここに眠る人物の名前。






レッドとマヨは幼なじみというほど親しい間柄ではなかったが、家が隣同士でよく一緒にいた。
……いた、というよりレッドが傍にいたという方が正しいのか。
マヨは体が弱く、外に出たことが一歩もない。
自分の相手はいつも本。
そんな彼女とどうやって知り合ったかといえば、マヨの親がせめて話し相手にとレッドにお願いしたからだ。
歳も同じで、気さくなレッドはすぐ仲良くなった。
マヨの知らない外の話をレッドがする、本で読んだ雑学をレッドに教える。
そんな少し変わった友達の関係。
いつかレッドがニョロを撫でながら、マヨに夢を語ったことがあった。


「オレおっきくなったら旅に出て、バッチを集めてリーグに出場する!
んでチャンピオンになるんだ」

「きっとなれるよレッドなら!私応援するね」

「うん!マヨは何かなりたいものとかってないのか?」

「私は……元気になって、外を歩きたい。
レッドと一緒に旅がしたいな」

「じゃあ行こうよ!」

「…え?」

「オレちしきとかまったくないしさ、マヨが教えてくれよ」

「……うん。レッドに一人旅なんて今のままじゃムリだもんね」

「あ!今悪口言っただろ」

「ふふ、ごめん」

「笑うなよ!」

「あはは!」

「あっ、こらマヨ!」


あの時、一緒に旅に出ようと約束した。
マヨがレッドと離れたくないように、レッドもまたマヨと離れたくなかった。
けれどその約束は叶うことはなかった。
マヨの体は一向に良くならず、時がきてレッド一人が旅立つことになった。
旅立つ直前にマヨの元へ挨拶を言いに来たレッドに、マヨは空のボールを渡す。


「ごめんね、約束守れそうにないから。
これ、私の代わりに持って行ってくれないかな」

「……ああ。大切に使う。
今度会った時は、体が良くなっているといいな」

「レッド、私頑張るね。
だからレッドも旅…大変だろうけど頑張って」

「もちろん!なんたってオレはチャンピオンになるんだからな」

「そうだね、未来のチャンピオンさん」

「……もうそろそろ行かなきゃ」

「行ってらっしゃい。怪我に気を付けて」

「おう」

ずっと、待ってる


マヨの期待を背負ってレッドは旅に出た。
時折余裕があれば、手紙を送って現状報告をする。
こちらからの一方通行でマヨから返事が来ないのは少し寂しいが、旅をしている身なのだから仕方ない。
ただ心配させないためにも、無事であることだけを知らせるという目的で手紙を書く。
……それと、自分のことを知ってほしいという気持ちもある。
旅をしていくうちにレッドは気がついた。
自分がマヨを好きなことに。
これまで一緒にいることが当たり前で、離れることはなかった。
旅に出て、一人になったことでマヨのいない淋しさに気付いた。

自覚してからは手紙を書くことが面倒くさいと思ったことは、一度もない。
これが今の自分にとって、彼女ととれる唯一のコミュニケーション。
そらをとんで帰ることもできるけど、次マヨに会う時はチャンピオンになった自分……と決めていた。
男ならば好きな子には、格好いいところを見てもらいと思うだろう。
だから寂しくて、どんなに会いたくても我慢した。
せめて手紙の返事が欲しかったけど、マヨは鳥ポケモンを持っていない。
マサラに帰ればいつでも会えると、レッドはたかをくくっていた。
……のちに後悔すると気付かず。











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