Devious続き
ホウエンに、昔カントーにあったサファリパークと同じような施設があるらしく、楽しみにしながら遠出した私はやつと鉢合わせした。
「げ、ルビー…」
「何だいその態度は、相変わらずだね」
「はいはい、成長してなくてすみませんね。ルビーさん」
「……なんで苛々しているのか分からないけど、ボクに八つ当たりしないでくれないかな」
ムッカー、何よそれ!
元はといえばあんたが悪いんじゃないか!!
いつもいつも挑発してきたり、何かと文句言ってくるし……!
そんなに、私のことが嫌いなわけ?
そうですよね、友達じゃないんだし?
昔、家が近かっただけのお馴染み……いや、腐れ縁なだけだもの。
ルビーが突っ掛かってくるから、私は素直になれないだけだし!
(なんて言い訳してみたり)
もうやつの顔も見たくなくて突っぱねていたら、ルビーがいきなり真剣な声色で話し掛けてきた。
「――…本当にどうして、そんなに怒ってるんだい」
「っあ、あんたが悪いんだからね!
人が苦労してバッチ集めて旅してるのに笑うし!
私にはあんたみたいに才能なんてない、両親だって普通だし……家事だって、満足にできないわよ!
なんでもこなせるルビーと一緒にしないで!!」
「あ……マヨ…」
言ってやった。
考えてたこと全部言ってやった。
胸に溜まってたもやが晴れてスッキリしたが、少しして今自分が口にしたことを思い出して、思わず閉口する。
目の前のルビーは、驚いたというような表情をしていて。
つい吐き洩らした本音が恥ずかしくなって、その場から逃げる。
……が、ルビーに腕を掴まれて立ち止まった。
ルビーは顔を伏せていて、表情が分からない。
「マヨはそれを……ずっと溜め込んでいたのか」
「……そうよ。ずっと思ってた。
分かる?比べられる気持ちが。
“ルビーくんはすごいわね”“マヨちゃんも頑張って”…?
ふざけないで!
私はルビーじゃない!あいつとは違う!
みんな私を比べて劣ると笑う……嫌よ、そんなの。
いつもいつも私はあんたに追い付けない!……私は昔みたいに隣にいたいだけなのに…
これもルビーが優秀すぎるのが悪いんだから!このバーカ!!」
「ちょっ、痛いって!殴るのは止めてくれ!」
「このアホバカ、誰が許すもんかコンテストオタク!」
もう自棄になってルビーをポカポカ殴った。
顔を見たくなかったから、そうやって誤魔化した。
それに今私は多分情けない顔をしていると思うから。
過去の嫌な思い出、自分で掘り返しといて傷つくなんて……バカみたい。
それにね、こんなこと言うつもりはなかったの。
素直に「コンテスト制覇おめでとう」って言いたかったのに。
あいつが、私が全部ジムバッチ集められるのは当然、みたいなこと言うから……
ついむきになって、思わず隠してた幼い頃のトラウマやらを全部吐き出してしまった。
そんな自分に自己嫌悪。
これ以上墓穴を掘りたくなくて、彼の手を振り切ろうとした。
そしたら逆に引き寄せられて、ルビーの胸に顔を押しつけられた。
え、抱きしめられてるの……?
戸惑い逃げ出そうと暴れる私を押さえ付けるように、背中に回った腕の力が増した。
多分5分くらいだろうけど、私は一時間くらいその姿勢でいるみたいに感じて、顔に熱が集まる。
ちょっ、周りに誰もいないとはいえなんて羞恥プレイ!
ここ一応道から外れてるとはいえ草むらの中だからね?
つまりは外!もし誰がが通ったら……恥ずかしさで死ぬかもしれない…!
本当離れてほしい、切実に。
でも、
「ごめん」
小さく呟かれたルビーのたった一言で暴れるのを止める。
だってルビーから謝ってくれるなんて滅多にない。
それにこんなか細い声は初めて聞いたの。
ルビーは何度も繰り返した。
まるでルビーと関わること、一つ一つの出来事について謝られているようで切なくて。
十回くらい呟いたとこらで彼の口を防いで止めさせた。
「もういい…もういいから!」
「ごめんマヨ、ごめん。
ボクは無知だった。マヨがまさか劣等感を感じているなんて思わなくて……ずっと不快な思いをさせていたんだね。
何回謝っても足りない――…ボクのせいだ。
ボクと出会わなければ、」
「待って!!」