スペレッドで悲恋



「レッドくんはこんなことをして満足するんですか?」

「……どうなんだろうな」


目の前の彼女はオレ越しに天井が見えているはずなのに、いつもと変わらない態度。
ただ押し倒した時に、一瞬だけ目を丸くしただけ。
少しだけ目を見開いてまたいつものように静かにまっすぐオレを見つめる。
その瞳がオレは苦手だった、全てを見透かされているようで。
(必死に隠してるオレの気持ちなんて、そう簡単に)
彼女の優しい瞳がオレ以外を見ているのも知ってた。
それが苦しくて、オレを見てほしくて――…押し倒した。
でも落ち着いている彼女を前にして、オレだけが焦っているようで焦らされる気分になる。
なぜオレを見てくれない?
年下だから?子供っぽいから?
思い浮かぶ理由なんてたくさん。
でも彼女がオレを見てくれないのはきっとあいつがいるから。
オレがどんなに頑張っても、きっとあいつには勝てない。
(そんなの自分が一番分かってる)
(彼女はあいつしか見てないから)


「オレ、マヨがあいつを好きなのを知ってるよ。
でもあいつは、マヨを見ていないじゃないか」

「……そうね、レッドくんの言うとおり私はあの人が好きですよ。
あの人が私以外の人を好きだっていうことも知ってます。
でも好きって気持ちは歯止めが効かないんです、それはレッドくんが一番知っているでしょう?」

「―――うん、知ってる。
なんでこんなに苦しいんだろうな、恋ってさ」

「想い焦がれる事こそ恋の醍醐味っていいますけどね……
それは両思いじゃないと意味がないんです。
片思いなんて、苦しいだけなんです。
……だからいっそう、相手を好きになるんじゃないかと私は考えています」

「より相手を思う、か……」

「きっと私も、レッドくんもシアワセになれないと思います。
散りゆく華もまた美しい、そう言うじゃないですか」

「それは、オレもマヨも……想いが届かないってことなのかよ」

「……そういうことになりますね」

「それが、答えなのか?」

「……」


真剣な瞳を見ていられなくて私は少し目をそらす。
彼のこんな余裕のない姿は初めて見ました。
本当はレッドくんの私に対する気持ちに、なんとなく気付いていました。
でも私は目を反らして、気付かないふりをしていたのです。
だって私は彼の想いに答えることはできません。
私があの人を好きなことは、事実なのですから。
多分、一生想いが通じないことも、ですが………
彼が私を好きなことを知っていて私は変わらず同じ態度を取っていました。
本当なら期待させないように、突き放すなり何なり出来たはずなのに……
もしかしたら私は、独りでみじめな思いをしたくなかっただけなのかもしれません。
だから、純粋な彼を――…レッドくんを巻き込んでしまった。
浅ましく罪深い私がレッドくんに愛される資格なんてあるわけない。

楽しく二人で、私の部屋で談笑していた時にこうして今、彼に押し倒されて少しだけ驚きましたが拒否することなんてできませんでした。
想いをひた隠しにして、行動しない私よりむしろ彼の方が立派だとさえ思えました。
レッドくんが苦しそうに顔を歪めているのを見て、私ももしかしたらこんな表情をしていたのかなと思うと、多分レッドくんを見る目が同情混ざりになっていたかもしれません。
果たして私は彼のように、自分の思うまま行動できたのかと。
ごめんなさい、全ては私が原因なんです。
私があの人を好きでいないでいられたなら、彼のことを諦めていられたなら。
あるいはレッドくんの想いに答えられたのかもしれないのに。
もし、私が思わせぶりな態度を取らないでいたら……そう考えるだけで罪悪感に襲われます。
でも私はレッドくんに謝らないですよ。
私も悪いですが、あの人が好きだと知っていて私を好きになったレッドくんもいけないのですから。
私とレッドくんは同罪、なんです。



∽(無限)ループ


(私は罪を認めるのを恐れた)
(オレは現実を拒否したかった)





某有名Pのぼかろ曲を流し聴きながら作成
最近は悲恋しか浮かばない……orz
(なんてこったい!)
思考が暗くなっているんだろうか…

ヒロイン年上設定
相手役は特になし



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