レツェルの騎士/ドロッセルの剣パロ
パロのはずがまんまになってしまって似非ルビーにw



あなたと一緒に過ごした中庭に咲き誇る薔薇は、あの時と変わらず美しく気高い。
私たちは双子、ずっと一緒だって約束したじゃない。
周りの大人たちは狡賢く、どうやったら王様になれるかばかり。
嘘と欺まんだらけの世界で、唯一信じられる存在だったのに。
あなたは突然消えてしまった。
私を置いて、異国の地へ去って行った。
今でも鮮明に覚えてる、引き留める私を彼は氷のような瞳で私を蔑み、何も言わず背中を向けたことを。
それから私は毎日涙で枕を濡らした。
悲しかった、行くなら私も連れていってほしかった。
あなたと一緒ならどこへだって行けるというのに。
彼のことを思い出さない日はなかった。
どうして、そう毎日彼の最後の背中に問い続けた。
積もり積もった悲しみは、やがて私の心に薄暗いものを生む。
それは日ごとに大きくなり、涙は憎しみに変わっていつしか私は彼を憎むようになっていた。

「私を置いていった彼を許さない」

そうよ……裏切ったルビーが悪いのよ。
私はあなたがいればそれだけで良かったのに……
最初から私を置いていく気だったなら、約束なんかしないでよ!
私を縛るその約束は、思い出すたび剣のように私を鋭く引き裂く。
憎しみは炎のように私の胸に灯り、燻り続ける。
許さない…絶対あなたを許したりするもんか……!
そうして私は白銀の剣を手に取った。




ボクには双子の姉がいた。
生まれた時からずっと一緒で、離れるなんてありえない。
そう思ってたボクは父から、国王から条約を結んだ異国へ行くことを言い渡された。
条約締結の証だなんて尤もらしいことを言って、本当は人質も同然であることをボクは知っている。
けれど彼女を守るためならば、ボクは異国の地へ赴こう。
愛しく麗しい姉、君を守る騎士(ナイト)になれるのならば、ボクは喜んでこの身を捧げよう。
この国にいれる最後の日、彼女は何も知らされてないからボクを必死に止めようとした。
涙を零す君を振り払うなんてこの身が裂けそうなくらいの苦痛だったけど、何も言わず出ていった。
この身一つで渡った異国にも、ボクらがよく一緒に遊んだ中庭のような美しい薔薇園があった。
薔薇を見るたびに、愛しい君の姿を思い出す。
その薔薇を一輪摘み、まよと君の名前をつけ愛でることにした。
叶うならば、君を抱きしめその美しい髪に口づけ、白磁の頬をなぞり、薄紅の淡い唇に口づけを落としたい。
愛しく麗しいボクの双子の姉、この世界で誰よりも愛してる。
強く握りしめた薔薇の棘で、滲んだ血はあの日の君が流した涙のように地面を赤く染めた。




数年後異国の地で行われた舞踏会で、二人は逢瀬を交わした。
一人は瞳の奥に憎しみを湛えて、一人は瞳に愛情を滲ませて。
別れたのは幼い頃だったが、お互いあの日と変わらぬままの姿で。
二人とも声も出せずに立ち尽くすままだったが、やがて弟が口を開いた。


「久しぶりだね、姉さん」
「そうね、ルビー。もう何年になるかしら」
「ボクらがまだ小さかったから、5年は経つんじゃないかな」
「そう…もうそんなに……」
「……」


わずかに伏せた同じ色の瞳に、その姿に、抑えていた感情が堰を切ったように溢れ出す。
ああ、やっぱりボクはずっと彼女のそばにいたい。
一緒に笑いあって、同じものを見て、愛を語り合いたい。
祖国がどうなったって構わない。
彼女さえいれば、それだけで満たされるんだ。
誰もいない、ボクらだけの世界へ。

彼は気付かない、目の前の女性が、姉が、同じ色の瞳に憎しみを湛えていることを。
憎悪に染まり切った彼女は、隠し持っていた白銀の剣を取り出し、そして雷のごとく彼を貫いた。
湧き上がる悲鳴、剣を伝って滴る真紅の血。
まるでいつかの薔薇のようだと、弟は笑みを浮かべる。
痛みよりもひどい熱さに、意識も朦朧としていたが彼は表情を崩さなかった。
剣が貫通しているにも関わらず、弟は姉を強く抱きしめた。


「やっと君をこの手で抱きしめることができる」


それは嘘偽りのない彼の本音。
憎しみに彩られていた瞳は、驚愕へとその色を変える。
わなわなと震える体を押さえつけるように強く抱きしめる。
動揺した彼女は彼の腕から逃れようと、必死に身をよじる。
その拍子に彼女の胸に飾られていたブローチが、音を立てて床に落ちた。
それを見た二人は目を丸くした。
そのブローチは昔、弟が姉に初めてプレゼントしたもの。
まだ大事に持ってくれていたのかと、それだけで嬉しさがこみ上げてくる。
しかし血だまりに落ちて割れたそれを見て、姉は己の過ちにようやく気付いた。
憎しみは人を盲目にする。大切な人に刃を向けることができるくらいに。
憎悪に駆られて、自分はとんでもない過ちを犯してしまった。


「あ、ああ……私はなんてことを…!」
「これで、いいん、だ……姉さん」


殺させるなら姉さんに殺されたい。
そしたら姉さんの中でボクは一生忘れられない存在になるんだ。

それは歪でねじ曲がった愛情。
親との関わりが少なく、姉からの愛情だけを受けたと言っても過言でないくらい愛情に飢え、貪欲に求めた。
己を剣で貫き、自らの罪に涙を零す姉を愛おしいと思えるくらいに。
彼女の為なら、何だってできた。


狂った愛を胸に抱いて、彼は静かに目を閉じた。
冷たくなっていく体を抱き込み、必死に揺らす姉。
深く刺さった剣から零れ落ちる鮮血は彼女のドレスを赤く染め上げていく。
違う、私の望んだものはこんなものじゃない。
ただそばにいたかっただけ、どうして置いて行ったの?って聞きたかっただけなのに。
ルビーを見た瞬間、憎しみに染まって、気付いたら白銀の剣を手にしていた。
次の瞬間覚えているのは、彼の体を貫く剣と赤く染まる私の両の手。
そして床に落ちた彼からの最初で最後の贈り物を見て、自分の過ちを知った。
泣き暴れる私を抱きしめ、ルビーはこれでいいと呟いた。
それは罪悪感から?私を置いて行ったことへの罪滅ぼしだと考えているの?
もしそうなら私は全然嬉しくない!!
罪を感じているというなら、私の側にいてよ!
私を一人ぼっちにしないで……!

彼の体から力が抜け、支えきれず抱えるように抱き直す。
優しい笑みを浮かべたまま、まるでただ眠っているよう。
しかしその体からはだんだん温もりがなくなっていく。
頬に手を添わすと、まだ温かい。
だめだよルビー、私のこと全然分かってない。
私はルビーと一緒じゃなきゃ生きていけないんだから。

だから、すぐそばにいくね……


ルビーの体に刺さっていた剣を抜くと、私はそれを自らに突き立てた。



ずっと一緒だよ、って約束したもの、ね…







ドロッセルの剣/レツェルの騎士
OSTER project feat鏡音リン/レン

一番最後の一文はとあるゲームから
分かった人はすごい



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