私には両親を除いて、大切な人が2人いる。
2人とも、幼い頃からの古い友人、腐れ縁。
またの名を幼なじみともいう。
そのうちの一人に、……うんまあ、片想いしてるんだけどさ。
鈍感って言うか、恋愛自体に興味がない、ポケモン馬鹿?だから、努力は水の泡になったし。
なんていうの?恋人同士になりたいっていう気が、今一つ起こらないんだよね。
ずっとこのまま、付かず離れずに甘んじてもいいかなー、なんてね。
なんかこう、付き合った恋人像が浮かばないんだよ。
今のままでも満足してるし、グリーンは後押ししてくれるけど……そんな勇気私にはないから、さ。
シロガネ山まで会いに行くのは結構大変だけど、たまに会えるくらいで十分。
ポケギアで頻繁に連絡を取ろうとも思えない。
というか、そもそもこれは恋愛感情と言えるのだろうか?って自分でも感じるくらいだもん。
けどレッドと会うたびに感じる胸の高鳴りは、きっと気のせいじゃない。
弱虫で結構。そんなアニメや漫画や、ドラマみたく告白なんて簡単には出来ないんだよ。
あれ、ちょっと夢見すぎだよね。
現実ってそんな簡単にうまくいくわけがないし、自分の都合のいいように転がらない。
ハッピーエンドなんて、そうそうない。
「好きだ」なんて、あいつが言うわけないもの。
絶対に幼なじみ止まりだわ、断言できる。


「だからね、話を聞いてもらってるグリーンには悪いけど……私そんな気がないの」

「まあ、俺には口出しする義理はないけどよ…お前があまりにも、」

「あまりにも…なに?」

「…いや、何でもない。
告白する気がないなら、それでいいんじゃねぇか?
あいつの機嫌が悪化して、巻き込まれるのは挑戦者だけどな」

「なんでレッドの機嫌が悪化するわけ?」

「……もういい」

「ちょっと、言いなさいよ」

「お前のあまりの鈍さに……あ、」

「失礼ね、どこが鈍いってのよ。
自分の思いに気付いてるんだから、鈍感なんかじゃないわ。
きっと鈍感な人は、好きって自覚すらないと思うの」

「あの、まよ…」

「だからね、私はこのまま今の関係でいたいの。
レッドに好きな人が出来ても応援できるかは……分かんないけど。
きっとそのまま身を引くんじゃないかなって」

「そ、そっか…」

「あーあ、本当に…グリーンを好きになればよかった。
なんで…あいつなんだろ」

「それは俺だからじゃない?」


私の背後から聞こえてきたグリーンとも違う声に、飲んでいたラテを吹き出しそうになる。
なんとか飲み込むが、肩を畏縮してしまう。
なんかもう逃げ出したいです。
ええ、そりゃもうダッシュで。
逃げるは勝ち!
というかレッドと顔なんて合わせられるわけがない!
何も言ってくれなかったグリーンに内心舌打ち、勢いよく立ち上がって逃げだそうとした……が、腕を掴まれてしまう。
だめだ、怖いマジで!
あいつがなんでここにいるのよ、あんた山にいたんじゃないの!?

ものすごく嫌だったけどちらっと振り返れば、無表情の彼が滅多に見せない笑みを浮かべていた。
それに思わずときめく私は、本当に空気が読めなくて嫌になる。


「あ、の……レッドさん?
もしかして、ですけど…今までの話全部聞いて…?」

「途中からだけどね」

「あわわわ…ヤバい、私すごく恥ずかしい!
ちょ、ホント逃げ出したい!
ね?離して?穴に入らせてえぇぇ!」

「断る」

「(レッドが言うと勝てる気がしない!!)」

「(これフラグ立ってんなー。つか俺のこと忘れてんだろこいつら)」

「わ、私が無理!レッドに顔見せらんない!」

「断る、見せて?」

「断るのを断る!」

「……そういえば、さっき告白しなくてもいい、とか言ってたんだっけ?」

「(しっかり聞いていらっしゃる…!)」

「まよが良くても俺は良くない。
……俺から逃げられると思うなよ?」

「で、ですよねー…」


前略、5分前までの私。
伝説の人に私が勝てるわけがありませんでした。




遠くから…

(なんて出来るわけがなかった!)
(おーい、帰っていいか?)




オチが迷子になったきっかけのもの。



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