ヒロインが若干腐女子ぽい?



町での自由行動中、ポケセンで自分の手持ちにフーズをあげていたら、買い物に出たはずのサトシが早々に戻ってきた。
さっきまで頭に乗せていたピカチュウの姿はない。
一緒にいたタケシに預けたのかな?
いつも側にいるから、何だか違和感を感じて笑ってしまう。
旅に出る前は、それが当たり前だったのに……慣れって怖い。
一人にやけていたらサトシに不審そうな顔をされたので、慌てて表情を戻す。
「若い頃は…」なんていうおばさんとか言わないで!


「サトシ、買い物に行ったんじゃなかった?」

「行こうと思ってたけど、まよに聞きたいことがあったから戻ってきた」

「私に?改まるなんて珍しい」

「オレだってたまには改まるよ」

「ふーん。今まで幼なじみしてきたけど、そんなこと一回もなかったと思うけどなあ?」

「む、昔は昔。今は今だろ!」

「はいはい。で、何を聞きたいの?」

「……」

「…おーい、サトシくん?」

「やっぱいい。恥ずかしいし」

「恥ずかしいって何。もしかしてスリーサイズ?
私スタイル良くないから、教えられないし何の得にもならないよ?」

「そそんなんじゃねえよっ!」

「なら何の話さ?」

「……わ、笑わないか」

「笑わない笑わない」


本当に恥ずかしいんだろう。
こんな俯いてもじもじするサトシは初めて見る。
……なんかこっちまで緊張が移る感じ、恥ずかしくなってきた。

「……前、」

「うん?」

「ヒカリと恋バナ?してんの聞いちゃったんだけどさ」

「やだサトシ、あれ聞いてたの!?マジか!」

「たったまたま聞こえたんだって!
それでさ、その時……きききき…」

「き?…もしかしてファーストキスの話?」

「そうそれ!」

「そんなことも話したっけ……それが?」

「だーかーらー!…その、その相手って一体誰なんだよっ!!」

「…それが聞きたかったこと?」

「―〜〜そうだよ!なんか悪いのか!?」

「いや、まさかそこ聞かれるとは思ってなくて(タイプじゃなくてよかったああ)」

「まよしたことあるって言ってたじゃん。
……やっぱりシゲルなのか?」

「経験はあるよ?でも何で気になるの?」

「…別に何だっていいだろ」

「……はいはい。
サトシくんが頑固ですから、幼なじみに先越されて悔しいってことにしときますよ」


そんなに先越されたのが嫌だったのかぁ……思春期って難しいね。
私も思春期真っ最中なんだけどさー。
でもね、答え聞いたらサトシきっとがっかりすると思うんだよなぁ。


「サトシ」

「な、なんだよ?」

「いやだからサトシだって」

「はあ?」

「キスの相手、あんた。おけ?」

「なっななな…!うそだ!!そんなの知らないぞ!!」

「そりゃ知らないでしょ。
まだちっちゃいとき、寝てるサトシの唇が柔らかそうだなーって思ったらつい」
「女が夜這いすんなよ!?つかオレのファーストキス…」

「純粋な好奇心と言ってくれたまえ。
サトシくん知らなかったんだしノーカンでいいんじゃない?」

「――っなかったことになんて出来るかよっ!!」


サトシがいきなり大きな声をあげるものだから、思わず怯んでしまう。
後退りサトシを見ると、彼の顔は真っ赤だった。
……そんなに嫌だったの?
やっぱ自覚ないって言ってもファーストキスは特別かあ。
キスなんて回数こなしていけば忘れてしまいそうなものだけど。
サトシくんは天然タラシだからねぇ。
カスミでしょ?カノンちゃんにチコリータにマサラの友達にもいたよね……
くそぅ、そんなにたぶらかしおって……けしからんいいぞもっとやれ!
――…さて冗談はここまでにして。
私にサトシが怒っている理由が皆目検討がつかない。
なんでそんなに怒ってるの?そんなに私じゃ嫌だった?


「まよが良くてもオレがダメなんだっ…」

「(んん?どういう意味だ?)つまりファーストキスを奪われたのがショックだったの?」

「そうじゃなくて!ていうか誰も嫌だなんて言ってないだろ」

「あれ、そこじゃなかった」

「オレの知らないとこでキスされたのが嫌だったんだよ!!」


なんだ、やっぱり自分の意思でしたかったんじゃん。
……サトシったらおませさんだなぁ。
そこまで初だとお姉さん照れちゃう。
そうやってみんな落としちゃうのか。
普段攻めのくせにそこだけ初とか何それ萌える。
誰かシゲル呼んでこい!!
しかし、上か下なのか分からないよ。
サトシくんはどっちも才能あると思うけど、個人的には襲い受けが好みです。


「サトシ…君って幼なじみは末恐ろしいよ」

「は?…ええ?」

「けどもう過ぎちゃったことだからいくら謝ったってしょうがないしね。
今度はぜひ自分の意思で好きな子にしてあげなよ。
お姉さん応援してるから」

うーん、我ながら決まったらね。
カッコつけてポケモンを戻すと、外に出てみる。
……こりゃしばらくポケセンには戻りにくいなぁ。ま、いっか!


「……え?なに?ちょ、ついていけないんだけど。
…なんかすごい誤解をされてる気がする…」

オレは自分の意思でまよにしたかった…って伝わってないだろこれ。
まよはこうやってたまに暴走するのがなぁ。
オレだって鋭い方じゃないけど、でもまよほどじゃないって断言できるよ。
本当に、いつになったら気付いてくれるんだろ。

(ていうかオレのファーストキスは好奇心で奪われたのか…)





ヒロインの理想のタイプは、きっと白馬の王子様みたいな夢の人物だったんだと思います。



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