ヤンデレッドさん
注)ヒロインを監禁してます!



目に当てられた布の向こうから光が覗いている、きっと今は朝か昼頃なんだろう。
微弱な光としか分からないのは、部屋のカーテンが閉められているから。
もっとも、手足が鎖に繋がれて身動きが取れないから知ったところでどうしようも出来ないんだけど。
……この暗く狭い部屋に閉じ込められて何日経ったのか、もう考える気力すら湧かない。
この部屋から逃げ出してしまいたいが、手段は全て奪われてしまっている。
どうしてこんなことになったのか、自分でも理解できない。
ただあの時…あいつの、レッドの様子がおかしいことに気づいていればこの事態を避けられたのか――…後悔しても遅い、か。

ガチャリ、と階下から鍵の開く音がして、ああ帰ってきたんだと思うと身が震えた。
あいつはまず真っ直ぐこの部屋へ上がってきて、扉を開けたらこう言うんだろう。


「ただいま、まよ。
ちゃんと大人しくしてたみたいだな」


今あいつは、満面の笑みで私を見下ろしてるに違いない。
荷物を置くと、私のいるベッドに腰を掛け……おそらくじっと私の顔を見ている。
たとえ見えなくても視界に入るのが嫌で、僕は体ごと横に逸らす。
「つれないなあ」なんて声がしたと同時に頬へ手が伸び、再び正面へ向かされた。

「はあ…まよが目の前にいるなんて今でも夢じゃないかって思うよ。
オレが連れてきたから夢じゃないんだけどね。
…そうだ、最近お風呂に入ってないだろ?これ外してあげるから入ってきなよ」

「……」

「ちゃんと目隠しも取ってあげる。
じゃないと見えないもんな」


その言葉通り、レッドは手足の鎖を外し布を取った。
直射日光ではないにしろ、カーテンの隙間から漏れる久しぶりに見た僅かな光に思わず目が眩む。
薄暗い部屋で嫌でも目に入る、嫌悪するほどの赤。
こいつが…どうして私がこんな目に会わなきゃいけない。
側にいるだけで吐き気がする、殺してしまいたいと思えるくらいに。
殺気立たせているであろう私をレッドは「そんなに見られると恥ずかしいって」などど呑気に、けれど嬉しそうにするものだから、最低という言葉しか浮かばない。


「あ、でも風呂場の場所が分からないか。
ならオレが連れて行ってあげるよ」


ずっと碌に食事も取ってないから暴れる体力すらなく、レッドにされるがまま抱き上げられ、階段を下りて行く。
……ここで最後の気力を振り絞って暴れたら、レッド共々まっさかさまに落ちるかな。
ああいや、こいつと心中だなんてごめんだし、逆に喜ばれそうで嫌だなあ。
そんな考えが過ぎるも、すぐに叶わないと絶望に打ちのめされる。
この拘束から逃れられるなら、身を滅ぼしたっていい。でもそれは出来ない。
多分私は一生こいつから逃れることは出来ない。
それだけの理由をレッドに握られている。


「分かってると思うけど、もし逃げ出そうとか考えてるなら……」



まよのポケモンがどうなっても知らないよ ?




ニコリと無邪気に笑って見せるレッドの顔が、私を地獄の底へ叩き落とした。
私は一体どうすればよかったのか……
私が何をしたんだろう。
レッドに狂おしい愛を受けるほど、容姿に自信があるわけでもないし、性格だって良いわけじゃない。平々凡々だと断言できる。
レッドと私は旅を共にした仲間なんだと、私はずっと思ってた。
今までも、これから先だって。
…監禁される前の最後の記憶、たまたまマサラへ来ていたゴールドとグリーンと、クリスと一緒に笑い合った温かく楽しかった遠い過去。

私は一生籠の鳥として、レッドに愛でられ世話をされるんだろう。
それこそペットのように……



君が移り気なのが悪いんだよ。
オレは君しか見ていないのに、君がオレを試すような真似をするから。
そんな悪い子にはお仕置きしなきゃ。
大丈夫……いやでも毎日オレに会えるんだから、お仕置きとは言えないか。
嗚呼、オレってば馬鹿だなあ!
これじゃあまよにご褒美を上げてるようなものじゃないか!
これからずっとずっとオレだけを見てオレだけを愛してずっと側にいてくれるようになったら、この部屋から解放してあげてもいいかなあ?
……でもやっぱり君の目にオレ以外の人間が映り込むだけで嫌悪しちゃうから、この部屋から出してはあげられないや!



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