TOSパロ 内容と台詞は何となく覚えてても、流れが分からなくなった結果がこうなった。 他の仲間が全く出てこないです← ご存知ない方でも読めます……多分。
ロイド…レッド コレット…まよ
世界再生…それは天に選ばれし神子が衰退する世界を救う為、女神様の使徒である天使へと生まれ変わり祈りを捧げること。 天使になるためには、世界各地にある封印を解放しなくてはならない。 再生の神子として選ばれた私は、三つの封印を解き、その度に天使の力を授かってきた。 古文書によれば、残りの封印はあと二つ。 封印を全て解いたとき、私は天使として生まれ変わり世界を再生する。 世界中の人々の希望である私は、逃げることも失敗することも許されない。 これまで何十、何百人という神子が再生の旅に失敗し、命を落としてきた。 今度こそ私の代で、世界を再生させないと。 これまで犠牲になった神子の分まで…そしてこの忌むべき仕組みを継がせない為。 天使の力を授かるにつれて、私は天使になるということが一体どういうことなのか、元から知ってたけど、改めてその意味を感じざるを得なかった。 だからこそ、こんな負の連鎖は断たねばならない。 私一人の犠牲で大勢の人が助かるなら、どうなったっていい。 私は世界再生の為に生まれた神子。
自身に宿る力は、段々人間離れしつつある。 五感は異常に発達した、力だって大人を片手で担ぎ上げられるくらい、ついた。 嫌いなものだって食べられるようになった。 レッドだって私が世界を再生することを望んでる。 大切な人が望むのなら、私は何だってできるよ。 レッドは優しいもの。 村で孤立していた私に分け隔てなく接してくれたのはレッドだけ。 だからレッドが、今の私の状態を知ってしまったら絶対に悲しむ。 レッドに悲しい思いなんてさせたくない、から。 私は嘘をつき続けるんだ。
三つ目の封印で得た天使の力の反動で体調を崩した私の為に、遺跡の側で野宿することになったことも、もはや通例だった。 夜も更け休息を取らないといけないのに、眠れず身を起こした。 仲間にはちょっと夜風に当たってくる、と野営地から離れる。 体調もすでに回復しており、問題もない。 仲間の話し声も耳に届かないくらい距離を取り、腰を下ろした。 衰退する世界に対して、夜空の星の輝きは美しい。 ただの、普通の旅ならどんなによかっただろう。 思考の海に沈んでいた私の名前を呼ぶ声に振り返る。 そこには、コップを両手にレッドが立っていた。
「隣いいか?」 「いいよ」 「サンキューな」
私の左隣に座ったレッドは、コップを私に差し出した。
「ほら、ホットコーヒー」
「ありがとうレッド」
「…熱くないか?」
「そうだね、取っ手を持たないと火傷しそうだよ」
「本当に?」
「…どうしたのレッド、おかしいよ?」
「……ごめん。本当はそれ冷たいんだ」
「…あ、そうだっけ。 こんなに冷たいのにおかしいなぁ…あはは……」
「ウソ、実はそれ熱いんだ」
「え…」
「…まよ…もしかして何も感じなくなってるんじゃないのか?」
「…な、やだレッドそんなわけ…」
「ホットコーヒーを冷たいって言ったのに? それに今日まよが怪我したとき、酷かったのに平然としてた… なあまよ、本当のことを言ってくれよ…!」
「…レッド」
「感覚…もうないんだろ。 それに最近ご飯の食べる量も減った。 ほとんど一口しか食べてないじゃんか。 あんなに嫌いだった物も普通に食べてるし… まさか味覚も……」
「……」
「まよ!」
「…レッドに、みんなに心配を掛けたくなかった…」
「やっぱりそれじゃ…」
「…一つ目の封印を解放したとき味覚を失った。 二つ目の封印を解放したら眠くならなくなった。 横になっても全然寝れない。 あれから私は一度も睡眠を取ってない。 …今日封印を解放して、感覚も失った…もう何も感じない」
「じゃあ天使に近付くことで、まよは人間じゃなくなっていくのか…?」
「それが天使になることなんだと思う。 でも私はこのシルヴァラントが好き。 だから苦しむ人々を救えるなら…」
「その代わりにまよが何かを失うんだろ!? おかしいよ、そんなの間違ってる!」
「だめだよレッド…私は神子としてしか、生きる理由はないの。 私は世界を再生させる為に、生まれてきた。 それでレッドたちを守れるなら…」
「なんでだよ…どうしてまよがこんな目に… 大切なヤツが目の前で苦しんでるのに、オレには何もできないのかよ…!」
「…レッド。村で独りぼっちだった私にレッドが声をかけてくれたから、私はこの十五年間ちゃんと生きようって思えた。 それまで世界再生は義務であり、私の生きる価値はそれだけしかないんだと思ってた…… 私レッドにすごく感謝してるんだよ。 だからそんなこと言わないで」
あの日レッドが手を差し伸べてくれなかったら、私は操り人形と変わらなかったかもしれない。 短い間だったけど、楽しい人生を送ることが出来た。 この旅の終わり…世界再生のとき自分がどうなってしまうのかも、本当は知ってる。 次の封印で今度は何を失うのかは分からないけど、怖くなんかない。 ……うそ、本当は少しだけ怖い。 けどそんなことレッドになんて言えない。 全てを知ったらレッドはこの旅を止めさせようとするだろうから。
「……ごめん。オレ、まよが苦しんでるのに全然気付かなかった」
レッドが私を抱き締める。 わずかに声も震えてる。 レッドの背中に添えようと上げた腕を、静かに下ろした。 私にレッドを抱きしめる資格なんてない。 今だってどんな風に抱き締められてるのか分からない。 温もりだって感じない。 そんな私が、レッドに触れるなんて出来ないよ…
「…せっかくレッドが私の為に泣いてくれてるのに、私…涙も出ない」
「ごめんねレッド…」
けれど数日後、四つ目の封印を解放した私は、声を失った――…
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