床に散らばったたくさんの服、迷って選んだピンクのスカート。
髪型もいつもと違う。
時間を確認し、お気に入りのパンプスを履いて家を出た。


「レッド!今度の休みに映画観に行かない?」

「いいけど。何の映画?」

「魔法学校シリーズの最終章」

「それオレも観たかったんだ!
……でもブルーと一緒に観に行くって聞いてたけど」

「ブルー急用が出来たらしくて。
グリーンも誘ったんだけど来れないってさ」

「あ、そうなのか…」

「じゃあ土曜の朝に待ち合わせね」

「分かった」


(レッドとデートだ!)
(これって期待していい、のか?)





そんなわけで暇そうなレッドを誘って映画を観る約束をした。
(本当はグリーンを誘ったとき、俺はいいからデートに行ってさっさとくっついてこい、って言われた)
(くっついてこい……て、言われてもなぁ)
私だって少しくらい夢見てもいい、よね?
幼なじみの特権だと言い張ってみたりする。
待ち合わせ場所は暗黙の了解で、私の家の前。
というかレッドの家の斜め前でもある。
ちなみにグリーンは私達の家から10分くらいのところである。
家を出たらもうレッドが待っていた。
黒いシャツに赤いパーカーとジーンズ、よく知る彼の服装。
レッドと目が合ったので微笑むと、レッドが顔を逸らす。
……笑わない方がよかったのか、な。(不快だったのかもしれない)
少し悲しくなったけど、無理やり笑顔を浮かべてレッドに声を掛けた。


それから二人並んで映画館へ向かう。
レッドの態度はいつもと変わらなかったけど、一度も私を見てくれなくてまた少し悲しくなった。
映画を見終わったあと、感想とか言いながらショッピングモールを見て回った。
可愛くて一目惚れしたネックレスを買ったその場でつけたり、文房具を買ったり、一緒にクレープも食べた。
でも彼は私をまともに見てくれない。
……そんなに私と来るのが嫌だった?
ただ映画が観たかっただけなの?
私を見てくれないの?
今日私頑張ったよ。
服もいつと違う可愛い系のものを選んだし、髪だって結んでみた。
いつもはしない化粧だって、ちょっとだけ背伸びしてみたんだよ。
あなたから「可愛い」って、ただその一言が聞きたかったから。
(空回り過ぎて切ないよ)


もう空もオレンジ色で帰路につく。
たわいない話のはずなのに、どこか虚しさを感じるのは私だけ?
心に積もる不安は拭えず。
そんな時だった。


「あ……」

「雨、か?」


ぽつり、と手のひらに落ちた滴はどんどん増えていき夕立になって私達を濡らす。
天気予報で夕立が降ると聞いていたので、あらかじめ用意していた折り畳み傘をパッとさした。
よく見たらレッドは雨濡れのままで立っている。


「レッド、傘は?」

「持ってない」

「天気予報見てないの?今日夕立が降るって言ってたよ」

「見てない。別にいいよ、濡れて帰るから」

「傘入れてあげるけど?」

「名前が濡れるだろ」


頑として入らないレッドに、私は無意識にため息をついていた。
何だか今日は無駄にストレスが溜まる気がする。
……もう嫌になってきた。
大体親切で言ってるのに断るってどうよ。
どうせ折り畳みなんだから元から狭いし、二人とも肩が濡れていいじゃない。
私はそれで構わないのに……そう、か、レッドは私と傘に入りたくないって……どうして気付かなかったの。
よく考えたらあちこちにそう思わせる要素があったじゃない。
結局家の前で待ち合わせてから、あるから一度も私を見てくれなかったし。
何よ、嫌いならはっきり言えばいいじゃない。
それとも幼なじみだから付き合ってくれてるの?
幼なじみだから女として見てくれないなら、私は幼なじみなんて……いらない。









「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -