「待って、行かないでアーロン!」

「申し訳ありませんリース様」



首筋に手刀が落ち、リースはぐったりと彼の腕に倒れこむ。
そのまま彼女を抱き上げると、バルコニーにいる主君の元へ急ぐ。
オルドラン城の城主、リーンはもうすぐ始まる戦争に眉を潜めながら祈るように手を組んでいた。



「アーロン、あらリース……眠っているの?」

「リーン様。私は過ちを犯しました、私はもうリース様に合わせる顔がない」

「……どういう」

「私は、彼女を永遠の眠りにつかせてしまった……!」

「リースが?なぜ………」

「私が、私が悪いのです!でもこうしなければリース様は、私の後を追ってしまう」

「落ち着いて、意味がよく分からないわ」

「私は戦争を止めに行きます。しかしリース様はついて来られるでしょう。
それでは困るのです。
だから私は彼女を封印してしまった、波動をぶつけて。
おそらく私と同じ波動を使えるものが現れない限り目覚めないでしょう」

「そんな!ならあなたがリースを……」

「いえ、それでは駄目なのです。リース様が死ぬなんて私は望んでいませんから」



アーロンは目を細めると、リーンに背を向ける。
そして彼女の声から逃げるように立ち去った。
進む方向はリースの部屋。
豪華なベッドに彼女を下ろし、前髪をそっと掻き分ける。

白く透き通るような頬に手を寄せ、そして。





「アーロン様、アーロン様!」

「ルカリオか」

「物凄い大群が向かってきています」

「そうか……」


アーロンは水晶を伝って聞こえるルカリオの報告に、立ち上がり扉の前で足を止める。

ベッドで眠る彼女に深く頭を下げ、そして足早に出ていった。
口笛を合図に現れたピジョットの背中に乗ると、ある場所を目指す。


「私は城を捨てた」

「アーロン様?なぜ!」


苦行を共にしてきたルカリオを杖に封印し、彼は走る。
緑の光が放たれ、そして世界は平和になった。
後にアーロンは波動の勇者として伝説になる。

ただ一人と一匹を残して……





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