「マニューラ戦闘不能、よって今年の波動の勇者はマサラタウンのサトシ!」
「やったぜ!」
嬉しさから飛び跳ねるサトシの青いマントがひらり舞う。
ピカチュウに駆け寄ったが割り込んできたエイパムに、足を止める。
しかし楽しそうに踊る二匹の姿を見て、微笑ましそうに見つめていた。
「ふう……あなたとピカチュウは最高のコンビね」
さっきまで対戦していたその人が兜を外せば、長い髪が揺れ落ちる。
彼女はキッドと名乗った。
いつの間にかサトシの目の前で口説こうとするタケシがいるわ。
マサトに連れていかれる光景も見慣れたもの。
この後アイリーン主催のダンスパーティに招かれたサトシ達。
お城の中を案内されている途中、アイリーンの顔がひどく陰った気がした。
「サトシ、パーティーの前にあなたに見てもらいたいものがあります」
「え、何ですか?」
「もしかして何かくれるのかも!」
「わ―、いいなぁサトシ」
「………」
はしゃぐサトシ達と違い若干俯き気味なアイリーンに、タケシは首を傾げた。
やがて5人は廊下の突き当たりの部屋にたどり着いた。
この部屋の近くだけは兵もおらず、静まりかえっている。
心なしか暗く見えるその部屋の扉を、アイリーンは重々しく開けて彼らを招いた。
部屋の中央には豪華な椅子と机、部屋を囲む家具は白塗りに金のラインが走り美しい。
日の光を淡く反射する薄桃色のカーテンは帆を垂らしている。
広い部屋で目を引いたのは、天蓋つきの大きなベッド。
何重にも白いレースが重なり、中の様子はあまり分からない。
ただ誰かいるらしく、黒い影が透けて見えた。
「サトシこちらへ……」
「見せたいものってこれですか?」
「はい、彼女の名前はリースといいます。………私のご先祖様です」
「ええ!?」
天蓋を掻き分けると、中で一人の女性が眠っていた。
日の光に当たっていないのか肌が白くまるで陶器のよう。
アイリーンの発言に全員目を丸くした。
目の前にいる彼女がご先祖――…途方もない話だ。
「リース様はリーン様の妹君で、勇者アーロンと仲が良かったそうです」
「じゃあこの人は何百年も前の人!?」
「信じられないかも!」
「オレはどうしたらいいんですか?」
「リース様は波動を使う者のみが目覚めさせることが出来るそうです」
「―――オレ波動使えないんですけど」
「彼女に触れることができたら……」
「あ、壁みたいなのがあるよ」
「壁?」
サトシがマサトが言う壁に触れるとヒビが入り、簡単に砕けた。
「あ……」
「随分呆気ないな」
「壁が壊れた……!」
あまりの簡単さに驚きながら、サトシはそのまま彼女に触れた。
なぜそうしたのか分からないけど体が動いたのだ。
そして彼女の瞼がピクリと動く。
「私は、……」