「リース様っリース様!ご無事ですか!?どこか優れないところは…っ!」

「わ、たし…そっか、呑まれたんだっけ…」

「肝を冷やしましたよ!?もしリース様に何かあれば私は…!」

「…私は大丈夫。ごめんなさい心配をかけて」

「良かった…本当に良かった……っ」

「…ありがとうルカリオ」

「リース」

「?サトシ…?サトシも無事だったのね。キッドさんも…良かった…」


一緒に呑み込まれた二人も無事で、手持ちのポケモン達は二人に抱き付き泣いて喜んでいた。……が、私を見つめるサトシの目は吊り上がって私を睨んでいた。


「どうしたの?…そんな怖い顔をして」

「リース」

「……」

「どうしてあの時逃げなかったんだ。捕まっていないお前だけなら逃げられたはずだろ」

「そ、れは……」

「…サトシくん」

「捕まったらどうなるか分からなかったのに、わざと捕まるなんて…なんでそんな危険な真似をしたんだ!」

「……」

「リース」


「……怖かったの。目の前で捕まる二人を見た瞬間、また私は置いてけぼりになってしまうのかと思った…
もがく二人が姉さまとアーロンに姿が重なって見えて…また私は一人になってしまうような気がして…
――起きたときの私の気持ちが分かる?
目の前には知らない人がたくさんいて、城の中も様変わりしてた!私の知ってる人は一人もいない、住んでた頃の面影が何一つないこの寂しさが、孤独が!!
みんなは私を知ってると言うけど私は何も分からない…っ!ただ眠ってただけなのに、起きたら知らない世界だったのよ!?
サトシやみんなが仲間になって、ルカリオもいて……孤独は晴れたけど胸の奥で燻る不安が私に恐怖を与えた!
だって…お姉さまにまた城を抜け出してって怒られたのは私にとって昨日のことなのに…!
…もうこれ以上親しい人を失うのは嫌だったの…っ!私の日常は、もう戻ってこないんだから……!!」


「……リース…」

「リース、さま…」


静まりかえった場を見て、私は我に返った。
なんてことを言ってしまったの。
そんなつもりじゃなかったのに……核心をつかれた気持ちになって、ついサトシに当たってしまった。


「………ごめん。オレ何も考えてなかった…リースの気持ち分かってなかった。偉そうに言ってホントごめん…っ!」

「サトシ……」

「申し訳ございませんリース様…そのようにお考えだったとは……従者失格です」

「ルカリオ……」

「そうだよな…いきなり知らないところに来たんだもんな、オレだって不安になるよ…オレにはピカチュウが、みんながいるけど…いなくなったらすっげえ寂しいよ…
無神経なこと言って本当にごめん!!」

「私も…あなたが時々俯いていたことに気付いていたのに……ごめんなさい」

「キッドさん…」

「私も、リース様と同じでした…同じ孤独を抱えていたのに自分にいっぱいいっぱいでリース様のお気持ちに気付かず……そんな私をリース様が気遣って下さってくれていたというのに、私は何もお返しすることができなかった…リーン様に何と言えば良いのか…っ!」

「ルカリオ……ごめんなさい、私も大人気なかったわ。
ついカッとなっちゃって…みんなは悪くない。私が勝手に抱え込んじゃっただけ、サトシは私を心配してくれたんだよね?
ありがとう…キッドさんも…それにルカリオ。あなたは本当によく頑張ってくれてる。
私がいくらわがままを言ったって最終的には聞いてくれた、城の外にも連れ出してくれた。
外の世界のことたくさん教えてくれたのに…ルカリオ、いつもありがとう。
もう抱え込まないから…ちゃんと言う、相談するよ」

「そんな…リース様、なんと勿体なきお言葉…!」

「リースがわざと捕まったとき、オレ本当に心臓が止まるかと思ったんだからな。すっげえ怖かった」

「…うんごめんなさい。もうしないから」

「それにしてもこれは一体…」

「ミュウがおみゃーたちがバイ菌じゃないって樹に教えてやったのニャ」


あ、しゃべるニャースってまだいたんだ…
それよりもミュウが私たちを助けてくれたの?
キッドさんの見解では、ミュウとこの樹はお互いの力を分かち合う共生関係にあるのではということだった。
ミュウにお礼を言おうと思って周りを見回すと、水晶の輝きが一瞬歪んだように見えた。
今のは私の見間違い…?でも確かに今…
ミュウは床に転がっていたサトシの帽子を拾い、ちょうど手渡すところだった。
しかしサトシが受け取る前にミュウは力なくふらふらと床に倒れ込んでしまう。


「ミュウ!?」

「大丈夫、ミュウ!?」


頬を赤らめ具合の悪そうなミュウをキッドさんが駆け寄り抱きかかえて様子を見ている間に、周りの水晶が次々に色を変え腐食するようにボロボロと崩れ果てていく。
その様子はまるでこの樹が力を失い尽きていくように感じた。
先ほどのキッドさんの考えが当たっていたとするならば、ミュウが私たちを助けるために力を使ったことでこの樹も力を失った。
つまり、この樹とミュウは繋がっている…!?
このままでは樹もミュウも命が危ない!?一体どうしたらいいの…!
困り果てる私たちの腕からミュウは苦しそうに浮かび上がると、ある方向を指して飛んでいった。
まるでついて来いと言わんばかりのように。
私たちはミュウの案内に従い、揺れる地響の中を洞窟に沿って走った。
胸に過る今までとは違う不安を抱えながら…





なんかもっとうまく間を取れたら良かったんですけど、私にそんな技術はなかった…orz



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