煌びやかな会場は普段の謁見の間とは違う顔だった。
なぜ私がダンス会場にいるのか?
答えは簡単、部屋を出たあと「今からダンスがございますので支度を」と侍女の人に、連れられいつのまにかおめかしをさせられていたから。
………いつの時代も侍女は強いらしい。
前にもこんなことがあったような気がして、思わずため息を零した。
ダンス―――…私たちのときは兵士の功労を労う目的だったり、または記念日などでもない限り行われなかった。
戦時中だから当たり前のことなんだけれども。
一応英才教育を受けているので、一通りのことはできる。スポーツも、音楽でも文芸でも。
しかしポケモンバトルというのはしたことがない。
私の時代では今のように、ボールから出してバトル!じゃなく、何かをするための手段に近い。
例えるなら道具、勿論そんな人ばかりではないけれど。
サトシはトレーナーというそうなので、明日バトルについて教えてもらおうかしら。
一人思案を重ねながらホールの端っこにいると、男性からダンスを申し込まれた。
でも気が乗らなくて断るとホールを見渡す。
ふと、王座の隣で座るサトシを見つけて、さっきのことをもう一度謝ろうと近付いた。
「あ、あのサトシ…くん」
「え…あ、さっきの人?」
「うんリースよ。さっきは本当にごめんなさい混乱してたから」
「別に気にしてなんかないからリース…さんも気にしないで下さい」
「ふふ、敬語じゃなくていいわ呼び捨てて頂戴。ありがとうサトシくん」
「オレこそ呼び捨てで構わない、ぜ!
……リースって本当に昔のお姫様なんだよな?」
「うんそうみたいね、実感はないけど」
「ふーん……本当にそんなことあるんだな」
「私も信じられないくらいよ。ねえサトシ、あなたダンスはできる?」
「え、ダンス?オレしたことない」
「じゃあ私がリードしてあげる」