扉が最後まで閉まったと同時に彼女は力が抜けたように、ベッドに倒れこんだ。
見つめる天井は自分が知るものとまるで変わらない。
家具も、カーテンも多少くすんではいたが自分が愛用していたもので。
今にもアーロンが扉をノックしそうだ、「おはようございます」そう言いながら。
寝ぼける私を天蓋の向こうから呼ぶ声は未だに鼓膜で再生される。

さっきサトシを見たときは本当に彼だと思った。
確かに眠りから覚めた直後で少し視界は霞んでいたけれども。
それを差し引いてもサトシとアーロンは似すぎている。
まるでサトシがアーロンの生まれ変わりみたいに。
………生まれ変わり。
もうお姉さまもアーロンもルカリオも、乳母も婆やも城のみんながいないなんて。
本当は全然納得なんてできていない。
理解する方が無理な話だと思う。
この間まで多少不満は持ちながらも日常を送ってきて、目が覚めたら伝説の登場人物?なんて非現実。

全てを鵜呑みにできるわけじゃない、でもアイリーンという人が言っていることが嘘だとも思えなかった。
彼女は驚くほどお姉さまに瓜二つで、そこにお姉さまがいると勘違いしたくらいに。
アイリーンさんがお姉さまの血をひいているのなら、あり得ない話ではないけれども。
一度に情報を詰め込み過ぎたせいで頭痛がするのはきっと気のせいではない。
頭を抱えながらもゆっくりとベッドの柱を支えに床に立つ。
―――久しぶりの感覚だった。



まずは右足、左足と両腕を軽く回してみる。
だいぶ慣らしたところで、記憶のまま私は部屋を出た。
向かう場所は謁見の間。
私の毛嫌いしていたあそこへ―――









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