君を飾る全て | ナノ


階下から私を起こす母の声がする。



今日は何曜日で、一限目は何だっけ。



さっぱり思い出せないことを若干不思議に思いながら起き上がった。



長い夢を見ていた気がする。



その内容も思い出せない。



ちょっと寂しいようなきがする。



その理由もわからない。



挨拶を交わした母の顔を、随分久しぶりに見る気がする。



まだ少し、寝ぼけているのだろうか。



カレンダーを見ると今日は火曜日だった。



制服に着替え、ふと気づく。



これでいいんだっけ。



手元には茶色のヘアゴムしかないし、机の周辺を見てもメイク道具も可愛い髪留めもない。



当たり前だ、買った覚えがないのだから。



なのにどうして、物足りないような気がするのだろう。



自転車をこいで学校へ向かう。



帰りに駅ビルに寄ろう。



そして、何かアクセサリーを買おう。



もうすぐ春だから、明るい色のものがいいかな。



薄いピンク色とか、桜みたいでいいかも。



なんだろう、ちょっと泣きたいような気持ちになってきた。



でもきっと学校について、友達と喋ったら気分も晴れるよね。



通り過ぎた民家の前、植えられた梅の花が綺麗で。



同時に、そんなものに目をとめた自分に、少し驚いた。



冬が終わる。


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