隣で何かが動く気配で目が覚めた。
気怠さを押しやって目を開ける。
見慣れた宗三の寝間着が視界に入った。
「おや……起こしてしまいましたか」
「……行くの?」
ぼんやりする頭で何とか言葉を絞り出す。
何となく、戻ってほしくない。
昨夜、というかもう今朝方のことだけれど、強く意識した宗三の体温を、もう少しだけ感じていたかった。
「兄上と小夜が目を覚ます前に、部屋に戻っておきたいのです。
……尤も、兄上には知れてしまっているでしょうが」
冬だからまだ薄暗いが、もう明るくなり始めている。
この兄弟はとても行儀がいいので、幼い小夜も早起きなのだ。
江雪さんはともかく、小夜は宗三の不在を訝しむだろう。
わかってはいるけど。
「もう少し、いて」
「……困った方ですね」
ため息をつきながら宗三が腰を降ろしたので私も起き上がろうとすると、真っ白い腕に止められた。
「このままで構いませんよ、まだ早いのですからもう一度眠ってしまいなさい」
目を塞いだ手がやっぱりぬるい。
昨夜は少し、温かかったのに。
何だか名残惜しさが増してしまったな、そう思った瞬間宗三が少し動いた。
一瞬だけ唇に何か触れた、そう思って口を開こうとしたけれど止めた。
宗三は私の目に当てた手を外さない。
いつも余裕のある表情を浮かべてばかりだと思っていた、だから今宗三の表情を伺うことはしないことにしよう。
宗三が今の顔を見られたくないのではないか、それもただの推測だ。
このまま目を閉じれば、きっと眠れるだろう。