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同じ沖田総司の所有刀だった加州清光と大和守安定は、本質は似ているものの違っている点が多くあった。



清光は、私のことを慕ってくれていると思う。



自分を愛しているかと度々聞いてくるし、甘えてくるし、尽くしてくれる。



一方で安定は、おそらく私を主と認めていない。



どこかよそよそしいのだ。



もちろん私は前の所有者に大きく劣るだろうし、歴史修正主義者を倒すという刀剣男子の本分さえ全うしてもらえばいいのだけれど。



安定は少し扱いにくい。



「主、僕を近侍から外すの?」



「うん、近侍というよりは第一部隊の隊長を交代する。



今までお疲れ様、ありがとう」



ここに来て日が浅い安定には、隊長として経験を積んでほしかったのでしばらく近侍にしていた。



けれど、もうそれも十分だろう。



安定も、慕ってもいない私のサポートなんてごめんだろうし。



そう思って外したら、安定の反応は意外なものだった。



「僕はもういらないのか……」



刺はない言い方だった。



本当に、ただの感想といった風の発言。



それが、却って私をどきりとさせた。



「そういう訳ではないよ。



部隊から外す訳じゃないから」



弁解しても安定は表情を変えない。



何が気に入らないというのか。



「主は僕が嫌い?」



「好きでも嫌いでもないよ」



安定の言いたいことがわからなかった。



私を好きじゃないのは自分だろうに。



「……僕を、外さないでほしい」



「え………いいけど」



安定は、淡々としたところがある。



清光と内番をしている最中なんかは割と楽しそうにしているから、あまり心配はしていなかったけど。



「……安定、一つ、聞いてもいい?」



「何?」



「安定は私のこと嫌いだよね?」



そう尋ねたときの安定の顔はまさしく、鳩が豆鉄砲をくらったという感じだった。



ところで今までまじまじと見たことはなかったけど、安定って結構可愛い顔をしている。



「僕、主に嫌いだなんて言ったかな」



「言ってないけど、なんとなく」



「嫌いじゃないよ。



むしろ、僕は主が好きなんだと思うけど」



「おや?」



初耳だ。



今までのなんとなくよそよそしい態度のどこをそう解釈したら良かったのか。



「主は確かに沖田くんより僕のことを理解してないけど、それは当たり前だし。



僕もそれがわからないほどじゃない。



僕にとっての一番は沖田くんだけど、主は三番目くらいに好きだよ」



二番は多分加州清光かな、と安定は全く淡々と呟いた。



「……じゃあ、近侍、お願いしてもいい?」



「いいよ、任せて。



僕は女の人では多分主が一番好きだから、他の男が主の近侍になるのは気に入らないからね。



それで、僕を好きになってくれたら嬉しいな」



微笑んだ安定は私の頬に口づけ、満足そうに去って行った。



二回目になるけれど、今までのどこを、私が好きだと解釈したら良かったんだ。



なんて分かりにくい子だ。



でも、嫌われていないようで少し安心した。



安定の笑顔と呼べるものを初めて見たと思う。



微笑み程度のものならいつも浮かべているけれど。



さて、好きになるかどうかはわからないけれど、思いの外可愛い近侍を、もう少しよく見てみよう。

Fin.



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