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最近雨の日が続いている。



こんな悪天候の日には、出陣も遠征もいかせたくないのだけれど、そんなことを言ってはこの時期何もできない。



仕方ないから今日も遠征と、少し楽と思える戦場に部隊を送った。



私は雨は嫌いではない。



雨音は趣があるし、庭に植えた紫陽花も美しく咲いている。



私は青紫の花が好きだけど、清光は赤紫の花が好きらしい。



土の質で色が変わるという話を聞いたことがあるけど、あれは本当なのか。



「審神者」



自分を呼ぶ声に振り返ると、宗三左文字が立っていた。



私は雨が好きだけど、左文字兄弟や山姥切国広なんかはカビが生えそうにじめじめしている。



「どうかした?」



今日は非番のはずの宗三は、一体何用でここへ来たのか。



宗三のテンションというか、勝手に展開されていく会話にはついていけないのだ。



「用が無ければ来てはいけませんか」



「そうじゃないけど。



私といて、楽しいの」



どうせなら可愛い弟の相手でもしてあげたらいい。



あ、小夜は遠征部隊に入れたのか。



「楽しくはありませんが、心は穏やかになりますね」



「なら、いいんだけど」



宗三の色違いの両の目が、庭の紫陽花を眺めていた。



「宗三は、紫陽花は何色が好き?」



「僕ですか?



………そうですね、白でしょうか。



ここの庭にはないようですが、あれはとても清らかに思います」



なるほど、白か。



確かにここにはない。



植えてもいいけど、どこに植えよう。



どことなく、赤紫や青紫と一緒に植えてもバランスが取れない気がする。



というか、宗三が花を愛でること自体意外だ。



「花、好きなの」



「まぁ、並程度には」



「宗三が何かを特別視して、気持ちを傾けるところが想像できない」



かなり失礼なことを思ったままに言ったら、盛大に顔をしかめられた。



「僕だって、美しいものを愛でる気持ちくらい持ち合わせています」



「ふーん」



まぁ、宗三の趣味に口を出すこともあるまい。



「ねぇ、白い紫陽花を植えるんだったらどこがいい?



他の色と並べて植えても浮かない?」



「別に、楽しみたければ町で買ってきて水盆に活けます」



「ああ、その手があったか」



私が宗三の部屋に紫陽花を活ければいい。



「宗三、町に行こう」



「今からですか?」



「そう、今から。



私、雨が傘を叩く音、好き」



「わかりましたよ……」



「あれ、素直に来てくれるんだ



」何だかんだ言って付き合ってくれる宗三は優しい。



「ええ。



何故だか貴女は雨の中で美しく見えるものですから。



もう少し、独占していたいです」



「お世辞がうまくなったの?」



「違います、失礼な!!」



宗三がそんなことを言うとは意外。



今日は宗三の知らなかった顔を知ってばかりだ。



「貴女は自分のことをわかっているのですか」



「さあ、どうだろう」



未だにドキドキしていることは、せめて悟られないように。



傘をさしかけてくれる宗三を見上げて微笑んだ瞬間。



口づけが降ってきた。



「やっと、独占できました」



「………今まで私を避けてたくせに」



「機会をうかがっていたんですよ」



そう言って弧を描く薄い唇が、なんだかひどく官能的に見えた。



Fin.



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