夜もすっかり更けた時間帯に、珍しく私はまだ起きていた。
今日は現世で言えばクリスマス、みんながお祭り気分で日頃の柵を忘れる日だ。
どうせ一週間もすれば忘年会と称して一年の嫌なことはすべて忘れてしまうわけだが、それは知らないふりをしておく。
そういうわけで私は今日、ささやかながら刀剣たちを労うべくプレゼントを用意し御馳走を作った。
その流れで宴会状態になってしまったのは必然というべきか、こんな時間まで夜更かしをしてしまったというわけだ。
私は少し呑みすぎてしまったが皆楽しそうにしてくれていたし、現世の習慣を持ち込むのもたまにはいいかもしれないと思う。
新しいことを持ち込むのに抵抗がある刀剣もいるが、楽しいことから仕入れていけば多少は抵抗もなくなるのではないだろうか。
多くのことに触れるのはいいことだ、私は最近心からそう思う。
「あ、主。
探したよ、こんなところにいたんだ」
曲がり角で光忠に遭遇した。
光忠も大分呑んでいたような気もしたが、顔色にはほぼ変化がない。
神様はお酒が好きだというし、皆強いのかもしれないな。
「実はね、今日が特別な日だってこと、なんとなく知ってたんだ。
だから僕から主に、プレゼントを用意してみたんだよ」
「え……」
完全に不意打ちだった。
今日は私がみんなを労おうとしていただけなので、今日がイベント的な日であることは誰にも伝えていなかったのに。
伊達政宗の所持刀、侮れない。
「メリークリスマス、っていうんだったよね」
そう言いながら光忠が差し出してきた包みは流石に赤と緑ではなかったけれど、センスのいい彼らしく、綺麗な和紙に包まれていた。
「ありがとう……開けても、いい?」
「うん、もちろん。
喜んでもらえるといいな」
私はドキドキしながら、包みを開いた。
次の瞬間、寒さで目が覚めた。
布団はベッドの下に落ち、私の体は外気にさらされている。
窓の外を見ると、白い雪が少しだけ降っていた。
道理で寒いわけだ、とは思うが、それ以外の感慨は特にない。
寝ぼけた頭で布団を引きずりあげ、二度寝の態勢に入った。
何の夢を見ていたんだっけ、とても幸せな夢だった気がするんだけど、思い出せない。
どうしてこんなに切ない気持ちになるのかもわからない。
でも、いいか。
今は寝てしまおう。
彼との約束は夜だから、まだ時間はたっぷりある。
目を閉じて、一瞬浮かび上がった眼帯の男性。
いったい誰なのか、眼帯の人なんて一度会ったらきっと忘れないのに。
まあでも、どうでもいいかな。
◇
主と離れてからこの日を迎えるのは、何度目になるだろう。
ここでは毎年この日になると雪が降っている。
主が元いた世界では、この季節に雪が降ることは、少なくとも主が暮らしていた地域ではめずらしかったらしいけれど。
この雪にのせて、僕の思いが少しでも主に届けばいいのに、なんて。
格好悪いかな。
せめて、君が今日も明日も、これからもずっと、幸せに過ごせますように。
今年も聖夜に、そう祈る。