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【拍手お礼:KIDver.】



「なまえ嬢、また貴女に逢いに来てしまいました」

『…あたし窓の鍵ちゃんと閉めてたと思うんだけど?』

「私にとってこの世のどんな鍵もないに等しいのです」

『ただの不法侵入よね?警察に通報していい?』

「かけがえのない貴女との甘い時間をそんな無粋な行為で壊さないで下さい」

『はぁ…』


最近何故か毎日あたしの部屋に入ってくる、自称(他称?)怪盗紳士、もとい怪盗KID。

世の中にはこの怪盗のファンクラブまであるらしいが、一体何処がいいのか、あたしにはさっぱり分からない。

初めての出会いは一週間前。

綺麗な満月をベランダで眺めていると、遠くからパトカーのサイレンの音がして、何かあったのかとそちらを見れば大きな白い鳥が飛んできた。

驚いてる間に、その鳥はトンと軽い靴音を立て、あたしの前に降り立った。

白いシルクハットと白いマント。片目を隠しているモノクル。


『怪盗、キッド?』

「私のような者の名前を知っていていただけているなんて、光栄ですよ。なまえ嬢」


そう言って方膝をついたかと思えば、あたしの手のひらをとって、その指先に口付けを落とした。

何て気障なヤツなんだと思ったが、後を追ってきた警察に


「また今度ゆっくりとお会いしましょう」


と飛び立ったキッドのいた場所には一輪の赤い薔薇が残っていた。

あの人、結局何がしたかったんだろう?と思っていたら、次の日から毎日来訪を受けている、という訳である。

キッドから話しかけられては適当に返していたら、次はマジックショーをされた。


『片付けるの誰だと思ってるの?』


と返せばこれまたマジックで何事もなかったような綺麗な部屋に戻されるのだから、こいつは人をオチョクってるのかと思ってもあたしのせいじゃないと思う。


『で、結局あんたは毎日何しに来てるわけ?』

「なまえ嬢の笑顔を是非一度拝見したいと思いまして」

『は?』

「なまえ嬢は私に一度として笑顔を見せて下さらない。ですから、なまえ嬢の笑顔を見たいが為に毎日此処に通っているのです」


こいつ本気か?
と余計に表情が歪むのが分かった。

するとポンと軽い音を立てて、キッドはその手にふわふわのテディベアを出して、あたしに差し出す。


「プレゼントです。受け取って下さい」


この部屋に飾ってあるいくつかのテディベアを見て、あたしが好きだと分かってこんなプレゼントをくれたのだろう。

不法侵入は迷惑だけど、とりあえずこの気遣いはムダにしたくない。
(というより、その可愛いテディベアに一目惚れした)

テディベアを手にとって、一応の礼として


『ありがとう』


と微笑めば、白い怪盗は今まで見せていた作ったような笑顔ではなく、とても優しい微笑みを返してくれた。





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