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01
6月の終わり。
一気に夏になったんじゃないかってくらいに急に暑くなって、その暑さにうんざりしてる時に蘭から電話が来た。
『え?警視庁のパーティー?』
「そうなの!お父さんが呼ばれたんだけどね、なまえにも是非来て欲しいって目暮警部が言ってたんだって!」
『は?何であたしが行かなきゃいけないの?』
この暑い中、警察の集まりのパーティーなんてめんどくさい。
「ほら、なまえって時々事件解決してるじゃない?しかも警部が電話しただけで解いちゃうこともあるし!だから、そのお礼なんじゃないかな?」
『あはは…あんなのたまたまだって』
事件の犯人もトリックも最初から知ってれば、そりゃ新一より先に事件解決出来るって。
電話で解決してるのだって、現場まで行くのが面倒だから、必要な確認だけ頼んでいかにもそれで確証得ましたって見せかけてるだけだしね。
「ねぇ、あたしとコナン君も行くから行こうよ?いくら顔見知りの刑事さんが居るって言ったって、あたし一人じゃ寂しいしさ」
断りたいのはヤマヤマだけど、蘭からの頼みじゃ断れないし。
『いいよ。何着て行けばいいの?』
「ホントに!?ありがとう!服装はワンピースみたいなので十分だって言ってたから、」
ってなわけで、何でかよく分かんないけど、警視庁のパーティーとやらに出席することになった、んだけど。
「なまえ!久しぶりやな。今日はえらい可愛らしいカッコしてるやんけ」
『平次!?何であんたがここに居んの?!』
「俺かて東京でいくつか事件解決してるんやから、別に居ってもおかしないやろ?っていうのは冗談で、今日は親父の代わりに来たんや。なまえに会えるかもしれん思うて引き付けたんやけど、正解やったな!」
『あはは…うちが来たんが失敗やったわ』
にっこにこ楽しそうに笑ってる平次に顔がひきつった。
何か嫌な予感しかしない。
だって平次は、
「お。やっぱり工藤も来てるやんけ!ちょっと行って来るわ」
『ちょお待って!』
「何や?」
未だに新一のことをコナン君って言えないんだから。
腕にしがみついて平次を止めて、ムダだと分かってる釘をさしておくことにした。
『何回も言うてるけど、蘭は何にも知らんねんから、ちゃんとコナン君って呼ぶんやで?』
「なんや?まだバレてへんかったんか?」
『当たり前やろ!』
もうっ!平次のこのお気楽思考な頭、誰か叩き直してよ!
「なまえさん、お久しぶりですね。今日は一段とお美しい」
『あ、白鳥刑事。お久しぶりです』
「そちらはなまえさんの彼氏ですか?」
「あ、やっぱりそう見える?実はな、」
『違います!こちら、大阪府警本部長の息子さんで、西の高校生探偵の服部平次くんです!』
白鳥さん、大阪人が喜ぶボケなんてふらなくていいですから!
平次が調子に乗るに決まってるんだからっ!!
「それなら良かった。なまえさん、どうです?今夜一緒にお食事でも」
『毎回お誘いいただけるのは嬉しいですが、結構です』
この人しつこいんだよね。
小林先生が初恋の人って分かるまでは、佐藤刑事にゾッコンって設定じゃなかったっけ?
寧ろ、現職刑事が高校生ナンパするなっての!
「あら、なまえちゃんじゃない!」
『佐藤さん!お久しぶりです!』
「ホント、会うのは久しぶりよね。なまえちゃんいっつも電話で事件解決しちゃうんだもの。あたしたちの出番がなくて困ってたのよ」
『あ、佐藤さんが困るなら、あたし目暮警部からの電話着拒するんでいつでも言って下さい!』
佐藤さんはサバサバした性格で話しやすいから、何度か会っただけでホントのお姉さんみたいに仲良くなってしまった。
「ダメよ。そんなことしたら警部泣いちゃうから」
「ワシが何だって?」
「け、警部!いえ、何でもありません!」
「なまえ君、今日はよく来てくれたね」
『ご招待ありがとうございます』
「工藤君が帰ってくるまでは、また君の力を借りてしまうかもしれないが、よろしく頼むよ!」
『あたしに出来ることでしたら』
あたしに出来るのは元々知ってる事件の解決を早めることくらいだけどね。
と、心の中でだけ呟いた。
「なまえお姉ちゃん!」
『あら、コナン君。久しぶりね』
「うん!なまえお姉ちゃん、最近全っ然、遊びに来てくれなかったもんね!」
…にっこにこな子どもスマイルの後ろに、「何で最近全然事務所に顔出さねぇんだよ?」って字幕が見える気がするのはあたしだけ?
『もうすぐ高校のテストがあるから勉強が忙しくて』
「あれ?なまえお姉ちゃん、テスト勉強は蘭姉ちゃんたちとしてるんじゃなかったっけ?」
『…』
しまった。中身が新一なんだからこんなんで誤魔化せるわけがないんだった。
「なまえお姉ちゃん、抱っこして?」
『いいよ』
これ、周りからは甘えてる仕草に見えるけど、これから本性出しますっていう前触れだから。
抱っこしたら内緒話が出来るから、新一モードに切り替わるんだよね。
ホント、新一って有希子さんの血を濃く受け継いでると思うわ。
「ったく、あの服部といちゃついてたのは何だよ?」
『別にいちゃついてなんかないわよ?』
「じゃあ、さっき服部の腕に抱きついてたのは何だったんだよ?」
『あれは、また平次が工藤って叫びながら行きそうだったから止めてただけよ』
「その後、白鳥刑事にも口説かれてたよな?」
『どっから見てたの?』
「最初から全部」
『もう…そんなに不貞腐れないでよ。ちゃんと断ってたでしょ?』
「バーロー!オメーには俺がいるんだから当たり前だろうがっ!」
『今日はこれで機嫌直してね?小さな探偵さん』
蘭があたしとコナン君を見つけて走って来てるのが見えたから、蘭に見えないようにこっそりと新一の頬にキスをした。
【小さな探偵の悩み】
それは、人気者の彼女を堂々と守れないこと。
「あ!コナン君、またなまえにワガママ言って!下りなさい!」
「はーい…」
『蘭、あんまり怒らないであげて?あたしが最近蘭の家に行ってなかったから、コナン君寂しかったんだって』
「なぁ、なまえ。帰りお前ん家に寄ってええか?」
「僕も行く!」
「(何でお前まで来んねん)」
「(バーロー!誰がオメーとなまえを二人っきりになんかさせるかよ!)」
→あとがき