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「#エロ」のBL小説を読む
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01


今日の部活は休日ってこともあって、朝から今までぶっ通しで練習してたんだけど、いくら試合が近いからってちょっと今日の練習は厳し過ぎなかったか?
もう夕日で空真っ赤だぜ?

とか考えながら、早く家に帰って疲れた体を休めようと帰り道を歩いていると、河原の向こうから歌声が聞こえてきた。
この声、なまえか?


―君が居なくなった
ねぇ一人にしないで
目に映るものが
全て歪み始めてた―



近づくにつれ、はっきりと歌声が聞こえてきた。
まだ結構距離があっけど、向こうで歌ってんのはやっぱなまえで。
いつもみてぇに川の方を向いて歌っていた。


―どうしてこんな空は遠い
君に会いたい―



邪魔すんのもどうかと思ったんだけど、せっかくなまえ見つけたんだし、なまえが歌い終わるの待って一緒に帰るか。


『あ、新一。部活終わったんだ?お疲れ様』


なまえの元へ走っていた俺の足音に気付いたらしくて、なまえが歌うのを辞めて俺の方を振り向いた。
なんか、その表情が寂しそうに見えるけど、気のせいか?


「なぁ、さっきの歌だけどさ」
『聞いてたの?』
「部活から帰ってたら、たまたま聞こえてきたんだよ」
『そういえば此処って新一の帰り道だったっけ?』
「おー。でさ、さっきの歌なんだけどな」
『ん?』
「ちゃんと聞きてーから、もっかいはじめから歌ってくんねぇか?」
『いいよ』


ふんわりと笑って承諾してくれたなまえに、隣に座って耳を澄ます。
いつか誰かもこんな風になまえの隣に座ってなまえの歌を聞いてたなとか、過去のことがチラッと頭を過ったけど、なまえが歌い始めると、今は俺がなまえの歌を独占してんだってどす黒い感情もすぐに消えていった。


『いくら泣いても涙ってものは
決して枯ゆく事などないと知りました』


さっき聞こえてきた“一人にしないで”って部分まで来ると、歌声がやけに苦しそうに聞こえて、なまえの表情を仰ぎ見ると、瞳が潤んでるように見えた。泣いてる、のか?


『君が居なくなった
何もかも無くなった
目に映るものが
全て色を失った』


なまえの切な気な歌声は俺の心にも浸透してしまったらしい。


『一番大切な人とは
どうして一緒に居られない
君に会いたい』


何だかなまえがいなくなっちまうような気がして不安になってきた。
それはこの歌詞のせいかもしれないし、心で泣いてるような切ないなまえの歌声のせいかもしれない。


『そして今この世界から
星空に向かって飛び立つ
やっと会えるね』


気付けば俺は歌い終わったなまえを後ろから抱き締めていた。


『新一?どうしたの?』
「いや、なんかなまえがどっか行っちまうような気がして、さ」
『あたしここにいるでしょ?』
「そうだな…」


俺の腕に自分の腕を添わせたなまえに抱き締める力をほんの少し強めた。


「なぁ、どうしてあんな悲しい歌、歌ってたんだ?」
『え?』
(コナンの曲でこの歌が好きだったから久しぶりに歌いたくなっただけなんだけど…言えない)
「俺、ちゃんとなまえの傍にいるぜ?」
『うん?』
「さっき一人にしないでっつってただろ?」
『あれは歌詞でしょ?』
「…そうだな」
『ねぇ、新一』
「ん?」
『抱き締めてくれるなら正面からの方がいいな』
「ほら」


俺が軽く両腕を広げると飛び付いて来たなまえを改めて抱き締める。
なまえの歌声は明るい歌も切ない歌も周りに伝染させてしまうから時々怖くなる。




【君の歌声で】

君を離したくなくなった。


「なぁ、今日家に泊まりに来ねぇか?」
『え?急にどしたの?』
「何となく今のなまえ離したくねぇ」
『よく分かんないけど…それじゃあ新一の家行こうか?』
「おう」

手のひらに伝わる温もりがなくなんのが嫌で、離されねぇようにしっかりと握り直した。
家に帰ったら久しぶりにバイオリン出してみっかな。
なまえ、Amazing Graceとかも歌ってるって蘭に聞いたことあっから、他にもなんか俺が弾ける曲あるだろうし。



→あとがき

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