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先に捕まえるのはどっち?




「なまえー!」
『園子?どうしたの?』
「どうしたの?じゃないわよ!そういうあんたこそこんな夜中にどうしたのよ?」
『夜中って…まだ8時過ぎたとこじゃない』
「こんだけ暗けりゃ夜中よ、夜中!なんかあったら危ないじゃない。あんた一人暮らししてんだからさ」
『まぁ、そうかもしれないけど…最近の怪盗さんは人の心配までしてくれるんだ?』
「はぁ?あんた何言ってんの?」
『残念だったわね、怪盗さん。園子は今日は財閥のパーティーに出掛けてていないのよ』


顔を思いきりつねったら、ぽんって軽い音と共に一瞬にして“園子”から世間を騒がせている“怪盗キッド”へと姿を変えた。
白いマントが風で靡いている姿が何とも言えず幻想的だ、けど。


『毎回毎回あたしの周りの人に成りすまして近づいてくるのはいいけど、毎回毎回その人物があたしの傍にいれない時に現れて正体がわかるようにしてるって言うのはどういうことなのかしら?』


そう、この怪盗さんは何がしたいのか分からないが、あたしが夜に一人で歩いているとよく出没するのだ。
決まってあたしの知り合いに変装して。
まぁ、初めて会った時は怪盗さんが仕事帰りだったみたいだったから、この白い姿だったけど。


「なまえ嬢がよく夜に一人で出歩いているようなので心配で」
『あたしの勝手でしょ』


さりげなくあたしの手をとってキスをしようとしてたから、思いきり振り払ってやった。
噂通りホントに気障な人だと思う。


「貴女に見つけていただけるのは快感でしてね。一度それを味わってしまうと癖になってしまった様で」
『それ以上は辞めてくれる?なんか鳥肌立ってきたから』
「酷い言われようですね」


苦笑してるのは雰囲気で分かるけど、こんなに近くにいるのに顔もよく見えない。
そんな人物を信用しろって言うのが無理な話で。


『これ何か分かる?』
「携帯電話、ですか?」
『正解。しかも通話中だったりするの』
「おや?私という相手が目の前にいながら、どなたと通話を?」
『貴方だから、この人に電話をかけたのよ』


遠くからパトカーのサイレンの音が近づいて来る。
もうすぐ通話相手が此処へ来るのだろう。


『出てみたら?』
「…それでは少しお借りしますよ」
「キッドー!!今日と言う今日は貴様を逮捕してやる!!!」
「これはこれは中森警部。今日私は仕事ではなくプライベートなのですが?」
「そんなこと知ったことか!娘の友だちにまで手を出しおって!!もうすぐ着くからそこで大人しく待っていろ!!」
『ですって。どうする?』


中森警部が怒鳴りっぱなしだったので、会話は筒抜けである。
青子のお父様には申し訳ないけど、たぶん青子のお父様にはこの怪盗さんは捕まえられないんじゃないかしら?
だって彼は掴み所のない人だから。


「なまえ嬢、これはお返ししますよ」
『ありがとう。返してくれなかったらどうしようかと思ってたの』
「それでは今宵はこれでお別れですね。夜道は危険ですから、外出は控えて下さい」
『貴方に指図される謂れはないわ』


これは会話終了の合図。
あたしと貴方は反対方向へと歩き出す。
彼のすぐ後をパトカーが追って行ったけど、きっと彼は今日もあっさりと逃げてしまうのだろう。





【先に捕まえるのはどっち?】

「なまえ!大丈夫だった!?」
『青子?何がよ?』
「キッドに何かされなかった!?」
『何もされてないから大丈夫よ』
「ちーっす」
『快斗おはよ』
「はよ、なまえ」
『最近忙しくて大変ね?』
「こんくらいどーってことねーよ」
「ねぇねぇ、何の話?」
「『内緒』」

貴方があたしを捕まえるか
あたしが貴方を捕まえるか

あたしは譲るつもりはないけど、ね。



→あとがきという名の懺悔

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