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 04

「なまえ、あんたさっきから一体何してんのよ?」
『暗号で書かれたラブレター解いてんの』
「はっ!?ラブむぐっ」


園子が大絶叫しそうだったので、ペンを放り出して慌てて口を押さえた。
お兄ちゃんに聞かれたらどうなるかは火を見るよりも明らかだ。


「ちょっと、お兄ちゃんに聞かれたらどうすんのさ!?」
「ごめんってば。それで?」
「呼び出し時刻と場所が書かれてるはずなんだけど、なかなか解けないんだよっ!」


あー、言葉にしたら余計にイライラしてきた。
ったく何だってこんなことになったんだ。
次はあたしから仕掛けるって決めてたのに、あの怪盗さん!!



それは三日前の夜に遡る。
冷蔵庫の中が空っぽになっちゃったから、お兄ちゃんが推理小説を読んでる間にこっそりと家を出てスーパーへと向かった帰り道。

何かがあたしの上空を通過したので、上を見ると、正面でバサリと音がした。


「こんばんは。なまえ嬢」
『怪盗さん、あたしに会いに来てくれたの?うっれしー』


棒読みでセリフを言いながら、突然目の前に現れた怪盗さんを見据えた。
この両手の荷物が邪魔だなと地面に置こうとした途端、怪盗さんが真剣な声色で話しかけてきた。


「今日はなまえ嬢にお願いがあって参りました」
『何?捕まえるの辞めてって言うんなら聞かないよ?』
「いえ、貴女に現場に来て欲しくないのです」


同じじゃん!
だから聞かないって今言ったよね!?


「私の犯行現場付近は時折危険な戦場になる」
『何言ってんだか分かんないんだけど?』
「お兄様に聞いていただければ分かりますよ」


お兄ちゃん?
お兄ちゃんが怪盗さんの何を知ってるって言うのさ?


「しかし、貴女には納得していただけないだろうということも分かっていましたので」
『よく分かってんじゃん。じゃあ今の話しはなかっ』
「ゲームをしましょう」
『は?』
「これから週に一度貴女とお会いしましょう。ここに日時と場所が書いてあります」
『…』


この人、何を企んでるの?
怪盗さんが何を考えてるのか読めてない時点であたしの負けだ。
考えろ!あたし!


「ただし、これは暗号化されたラブレター。貴女が解けなかった場合は潔く、現場に来るのを諦めていただきたい」
『もし、あたしがソレを解いたら?あたしに何か特典でもあるわけ?』
「貴女の質問に一つだけ答えましょう。ただし、私の身の上は話せませんのでご了承下さい」
『ここで断ったら?』
「ゲーム放棄は貴女の自由ですが、それは貴女が私の犯行現場に来るのを諦めたという意思表示ですよ?」
『…』
「さぁ、どうしますか?」


どうしますか?だって?
あたしに残されてる選択肢なんて一つしかないじゃんか!


『いいよ。そのゲーム、やってやろうじゃん!』
「それでは、なまえ嬢にまたお会い出来るのを楽しみにお待ちしています」


あたしが持っていたスーパーの袋に封筒をキレイに投げ入れた後、怪盗さんは煙に包まれていなくなった。


その日からずっとこの暗号と戦ってるのに、未だに全文の解読が出来ない。
唯一、読めたのは追伸の部分。


P.S. お兄様がこのゲームに参加した時点で、貴女のゲームオーバーです。悪しからず。


んなことは言われなくても分かってるんだよっ!
とにかく時間がないんだ。
今までの解き方が間違ってるんなら、他の解き方を見つけなくちゃ。
そして、ペンを走らせようとしたその時、


「なまえー!帰っぞー!」
『へ?もう放課後!?』
「オメーまた授業聞いてなかっただろ?最近こそこそと何やってんだよ」
『お兄ちゃんには関係ないことだよ!ほら、帰るよ!』


お兄ちゃんの手を取って歩き出す。
これだけはお兄ちゃんに知られるわけにはいかないんだ。
第一、あたしに解けないのに、お兄ちゃんがあっさり解きでもしたらそれこそムカつくじゃん!

絶対今日こそこの暗号を解いてやる!


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