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- ナノ -


 02

「おい、なまえ。オメー本気でキッド追うつもりかよ?」
『しつっこいなぁ!追うつもりも何もあたしが捕まえるんだって言ってんでしょ!?』


あの日以来、お兄ちゃんはヒマさえあればこの質問を繰り返してる。
もういい加減耳にタコができるっつーの!


「んだよ。俺はオメーのことを心配してだな」
『イラナイ心配してないで、どっか事件現場でも行ってご自慢の推理ショーでもしてきなよ』
「まぁまぁ、なまえも落ち着いて」
『だって蘭、新一が煩いんだもん。空手で黙らせちゃってよ』
「…オメーは俺に死ねっつってんのか?」
「なんですって!?」


はぁ、また夫婦喧嘩が始まっちゃったよ。
なんかこの流れ、毎朝やってるからもう定番って感じになってるんだけど。


「おっはよー!なまえっ!」
『イッターっ!!』


園子様、いきなりカバンで背中思いっきり殴るの辞めて下さい。
マジで痛いんですけど。


「何?あんたのお兄さんまだゴタゴタ言ってんの?」
『まだも何も止まる気配ないよ。鬱陶しいからどっかで事件起きてくれないかなぁって思ってるとこ』
「まぁ、新一くんシスコンだからねぇ。あんたも負けずにブラコンだと思ってたけど」
『新一のはシスコンじゃなくて過保護って言うんだよ。しかも超が何個もついちゃうような』


ギャハハハと豪快に笑ってる園子様。
他人事だと思って遊びやがって。


「でも、あれからキッド様の予告もないんでしょ?」
『そうなんだよねー。それが一番問題だよ』


そう簡単にポンポンと獲物が見つかるようなら、園子のとこのオジサマがしょっちゅう挑戦状叩きつけるんだろうけど。

そんな話をしている内に今日も平和に学校に着いてしまった。



あれだけ願掛けしたのが功を奏したのか、新一は事件があったとかでドコカへ行ってしまった。
やっと一人で平和に過ごせるーってソファでだらけてたら、あたしの携帯が鳴った。


『はい、工藤ですけど』
「なまえ君、キッドから予告状が届いたぞ!」
『ホントですか!?はい、すぐ向かいます!!』


怪盗さん、なんていいタイミングで現れてくれるんだ!
今日こそは前回の怨みを晴らしてくれる !!


『中森警部!お待たせしました!』
「おー、なまえ君早かったね。それで、これが今回のヤツからの予告状なんだが…」


今回は何の捻りもない普通の予告状だった。
時間も場所も普通に書いてある。
なんだ、あの怪盗さん、毎回予告状暗号にしてるわけじゃないんだ。


『あれ?』
「どうした?」
『ちょっと失礼します』
「あ、おい!なまえ君!」


中森警部のトランシーバーの中でキラリと光るモノを見つけて、勝手に拝借して分解する。
やっぱり…


『これ盗聴器ですよ』
「何だと!?」
『怪盗さんに作戦が筒抜けな可能性があるので、今すぐ作戦内容を変更して下さい』
「おのれ、キッドーっ!!!」


握り潰しただけでは飽きたらなかったらしい中森警部は、盗聴器を何度も踏みつけて、警察官を集めるべく集合をかけた。


『中森警部、一つだけいいですか?』
「作戦内容には口出ししない約束だろう!」
『はい。あたしは現場に入るのは初めてですから、中森警部に従います。ただ、照明のことなんですが…』
「ん?…ほう!それはいい!それで行こう!おい、A班内容変更だ!」

作戦内容の変更で慌ただしく警察官が移動する中、あたしはのんびりと現場が見渡せる渡り廊下的な高い場所で、今回の獲物である宝石を眺めていた。
捜査協力と言ったって、実質見学と変わらないあたしにすることはないのだ。

今回の獲物もビッグジュエル、か。
あたしが知ってる限り怪盗さんはビッグジュエルと呼ばれる宝石を盗んではすぐに返したりしているらしい。
あの人は一体何がしたいんだろう?


「おい、お前ら!もうすぐヤツの予告時間だ!全員気合い入れてかかれよっ!!」
「「「おーっ!!」」」


中森警部、いつもこんなに気合い入れてたのか。
前回は失礼なこと思ってごめんなさい。
そっと手を合わせて、心の中でお詫びする。

そして気を取り直して、時計の秒針を見ながら、カウントダウンを始める。


『一分前………3、2、1。警部!』
「A班照明だっ!」


さっきまで点いてた照明が消えた変わりに新たな照明が点され、展示してある宝石に近づこうとしていた白いマントが照らされる。


『残念だったね!怪盗さん!怪盗さんお得意の暗闇は潰させてもらったよ!』


マントで顔を隠してるから見えないけど、別に動揺も何もしていないらしい。
あたしの考えてることはお見通しってわけか。
面白いじゃん。今度はあたしが先回りしてやるんだから!


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