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『快斗ー!お待たせ!』
「お、なまえやっと来たな…ってなんだよ!?その荷物は?」
『これ?ひ・み・つ』
「はぁ?じゃあなんで持ってきたんだよ?」
『冗談だって。快斗の部屋に付いたらちゃんと話すから』


そう言って、怪盗さんに鞄から飛び出してる紙包みが見えるようにアピールした。

そう、何を隠そうあれからも週1ペースで怪盗さんと会っていたあたし。
むしろ現在進行形で会ってるし。

その上、何故か怪盗さんからの暗号ラブレターもあたしの質問特典さえも継続してるんだな。これが。
もう「怪盗さん」への質問でも昼間の怪盗さん、つまり「黒羽快斗くん」への質問でもなんでもいいんだってさ。
正直怪盗さんが何を考えてるのかあたしにはさっぱりわからない。
けど、こうして昼間の怪盗さんと会うのは楽しいからまぁいっか。


「ほら、鞄貸せって。持ってやるよ」
『え?いいよ。これ軽いし』
「いいから貸せっての。女の子にそんなデケー荷物持たせるわけにはいかねーだろ?」


そして、最近やっと気づいたけど、何気に怪盗さんは優しい。
最初にほっぺにキスされたのが衝撃的過ぎて、どっかで怪盗さん=紳士じゃない!って先入観でもあったのかな?
だって怪盗さんってマイペースで強引だったりするから、気付きにくいんだよね。
うん、あたしのせいじゃない!


「それにしても今日はどうしたんだよ?急に俺んち来てもいいかとか言い出して」


そう、今日は週1の怪盗さんの甘いもの食べ尽くすぞ!ツアーじゃない。
もちろん、質問権があるラブレターの日じゃないってことで。
まぁ、もう少し結果が出てからでも良かったんだけど、


『途中経過』
「へ?」
『例の”途中経過、ってか現状報告?快斗にも一応報告しておこうと思ってさ』


その途端、怪盗さんの纏う空気がピリッと変わる。
それは気にしなければ見逃すくらい僅かだけど、普通の高校生から、夜の怪盗さんの鋭い瞳になってるのが分かる。
この話題は怪盗さんへのタブーみたいなもんだと知ってるから、普段は極力話題にはしないんだけど、それが必要な時もあるんだよね。


「話、長くなるか?」
『全部聞きたいんなら長引くね。聞かなくていいなら端折りまくって話すけど?』
「バーロー。んなこと出来っかよ。なまえに危ない橋渡らせてんのは俺だぜ?現状把握くらいさせろっての。とりあえずコンビニ寄ってくか?」
『…あたしの飲み物買うの口実に、また大量にお菓子買うつもりなんでしょ?』
「あれは俺 の栄養源だからいいんだよ」


真剣モードだった怪盗さんが、お菓子の話になった途端に表情を緩めた。
このオンオフの使い分けはいつも凄いと思ってる。
何せ意識してやってるわけじゃないんだもん。
それはお兄ちゃんにも言えたことだけど、あたしみたいな普通の女子高生には無理な相談だ。


「それで?現状報告って何かわかったのかよ?」
『あたしを舐めないでよね。言い出したからには仕事はきちんとするに決まってんじゃん』


怪盗さんの部屋についた途端、早速話が本題に入った。
まぁ、話長くなるから早く済ませないとお兄ちゃんからの電話に邪魔されてしまう。
いくら晩御飯を作ってきたからとはいえ、最近はいつも家にいないからお兄ちゃんに不審がられても困るのだ。
お兄ちゃんも警察からの呼び出しでよく家を空けてくれてるから今のところなんとかなってるけど、中途半端なところで投げ出すなんてあたしには出来ないし、するのもごめんだ。


『とりあえずこれ見てよ』
「持ってきてた紙だな。何が書いてあるんだ?」
『あたしが今現在把握してる下っ端連中の組織図と、小ボス中ボスの名前にその傘下の雑魚のアジトや規模、その他諸々をまとめてきたんだよ』
「ぶはっ」


紙を広げてると怪盗さんが覗き込んできたから、内容をあっさりと言い放ったあたしに怪盗さんが飲んでたジュースを吹きだした。
汚いなぁ。ってか、それよりも今は、


『もう!あたしがせっかく分りやすくまとめてきたのに汚れちゃうとこだったじゃんか!』
「バーロー!んなもんあっさり言われたこっちの身にもなれってんだ!」
『何さ、ソレ!これがあたしの仕事なんだから、このくらい当たり前でしょ!自分から啖呵切っておいて今まで遊んでるとでも思ってたわけ!?』
「オメーはやることなすこと規模がおかしいんだよ!!」


そんな文句を言われても困る。
あたしとしちゃ、小ボスっぽいハズレばっかり引かされて時間を無駄にした挙句、ランクが違うと分かる中ボスらしき人をやっと見つけたとこなんだ。
黒幕の大ボスまでの攻略ルートなんか未だに闇の中だ。


「そんな簡単に見つかってたまるかよ!俺がキッドになってどれだけ調べてきたと思ってんだ!?」
『あっそう。じゃあ、これくらいもう調査済みだよね?細かいこと書いたノートも用意したけど処分するよ?』
「ちょっと待った!」


ブツブツと散々無駄足踏まされた文句を言ってたら、気分を害したらしい怪盗さんにムカついて持ってきた3冊のノートを見せつけた後に、わざわざ寝る時間を割いてまでまとめた組織図の紙ごと処分してやろうと思ったら止められた。
ってか、目にも留まらぬ速さでノートを奪われていた。
要るんなら初めから素直にあたしの報告聞いてろっての。


『何さ?自分で調べてきたからイラナイんでしょ?もういいよ。まとめて捨てるから』
「待て待て待て!俺が悪かった!だから、ちょっと落ち着いてくれよ!な!?」
『落ち着くのはあたしじゃなくて快斗でしょ?』
「わ、悪ぃ…」


ノートをあたしに奪われないように庇いながら、怪盗さんがあたしをその場に留めようと必死に言い募ってきたから、紙をぐしゃぐしゃにしてそのまま帰ろうとしてた「フリ」を辞めた。
ま、止められなかったらマジで捨ててたんだけどさ。


『じゃあ、とりあえずあたしが今まで集めた情報を順番に説明するよ?今度はちゃんと聞いてよね?』
「おう!」


怪盗さんが落ち着いたところで、あたしの途中経過報告会がやっと始まった。

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