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- ナノ -


 26

ピンポーン


「はーい。お、マリアさんじゃねぇか!」
「あ、ああ、あの、こ、こんっ…こんにちはっ!」
「なまえー!マリアさん来たぜー?」
『え?マリア?』


何で?


「マリアさん甘いモンが好きなんだよな?俺、ちょっとケーキか何か買って来るわ」
「えっ!?わ、わざわざいいですよ!新一さんにそんなことさせるなんて出来ませんっ!!」
「気にすんなって。この前の暗号で随分楽しませてもらったからな。お礼だと思ってくれりゃーいいからよ。じゃ、なまえ。行って来っから」
『行ってらっしゃーい。
で、何しに来たのさ?』
「とりあえずなまえの部屋行こうぜ?」
『え?うん』


怪盗さんはやっぱりお兄ちゃんの前でしかマリアをするつもりはないらしい。
せめてその男らしい声だけでも辞めてくれないかなぁー。
せっかくの可愛い格好が台無しじゃんか。


『それで?何しに来たのさ?しかも、わざわざマリアになってまで』
「なまえ、明日本気でやるつもりなのか?」
『当たり前じゃんか』


明日は怪盗さんの予告日。
怪盗さんには前以て伝えておいたんだ。
物騒な人たち見つけたら、発信器を付けて後を追うからってさ。


「はぁ…オメーが本気なのは分かったけど、せめて変装くれーはしてくれよ?」
『へ?何で?』
「オメーは自覚ねーのかもしんねぇけど、なまえは母親似で目立つんだよ」
『そうかな?そんなに似てないと思うんだけど…お母さんにはしばらく会ってないからなぁー』
「似てんだよ。外見もだけど、立ってるだけで華やかって言うか、人目を引くっていうか…とりあえず目立つから、最低限、これから俺が教える変装だけはしてくれ」
『は?』


怪盗さんの出張変装術講座?
何それ?贅沢だなぁー。


「途中で兄ちゃんに入って来られたら台無しだから、兄ちゃん帰って来てからな」
『何でお兄ちゃんにバレたらダメなのさ?』
「オメー知らねぇのか?明日は兄ちゃんも現場に来るんだよ」
『は?何それ!?』
「そういう意味でも変装がいるんだよ。ただでさえ、オメーの顔はヤツらにバレてんだ。印象変えねぇと近づけねぇだろ?」
『うーん…』


そこまで考えてなかった。
博士に盗聴機能付きの発信器作ってもらって安心してたからなぁー。
確かに、お兄ちゃんにバレるのだけは困る。
また軟禁再びになるのは目に見えてるもん。


「なまえ、入るぜ?」
『いいよー』
「どんなのがいいか分かんなかったから、店員さんにオススメ聞いて買って来たんだけど…マリアさん、どれが食べたい?」
〈どれも美味しそう!チョコレートのなんて素敵!どうしよっかなぁ?〉
《マリア、先に言っとくけど全部とか言うのはナシだからね?》
〈別にいいんじゃねぇか?残っちまっても俺は食わねぇんだし〉
《なら、こんなに買って来なきゃいいのに…何で10個も買って来たのさ?》
〈大丈夫です!あたしが責任持って食べますから!〉
〈じゃあ、取り皿と珈琲置いとくからゆっくりして行ってくれな〉
〈ありがとうございます!〉


で、お兄ちゃんはケーキの箱と珈琲を置いて出て行ったんだけどさ。


『で、何で急に英語になったのさ?』
「ん?興奮したら地が出ました、的な設定?」
『怪盗さんならこのくらいホントに全部食べるんだろうけどね』
「先になまえが食いてーの選べよ。残りは俺が食うから」
『言うと思ったよ…』
「でもしくったなぁー。珈琲ブラックで飲めるなんて設定作んなきゃ良かったぜ」
『砂糖とミルクならちゃんとあるよ?』
「へ?」
『こういうこともあるかと思って、隠してたんだよ。はい』
「さっすがなまえ!」


怪盗さんは喜んで砂糖を珈琲に入れていた。
ちなみにこれがバレないように、洗い流すようの水まで準備してたりする。
何事も下準備が大事だよね。隠し事するなら尚更、さ。


「それで、変装なんだけどな。とりあえずこのウィッグ付けてみろよ」
『え?うん』
「んで、次は化粧な。今回は目立なくすんのが目的だから、」


怪盗さんの鞄の中身はあたしの為の変装道具が入っていたらしい。
よくまぁそんなに入ってたなぁってくらいに次から次へと物が出てくる。
…四次元ポケットか?


「こんなもん、かな」
『誰、これ?』
「って本人が言うくらいなんだ。これで、普段より地味な服でも着りゃ、まずバレねーだろ」


いや、バレないも何も…鏡の中に映ってるの赤の他人にしか見えないんですけど?
さっすが怪盗さん。
変装の名人の手にかかれば、ウィッグと化粧だけでこんなに印象変えられるのか。
ある意味これもマジックなんじゃないか?


「っし。じゃあ、一回メイク落として自分でやってみろよ。その間、俺はケーキ食っとくから」
『はーい』


これまた怪盗さんが準備してくれてた拭くだけのメイク落としで素っぴんに戻る。
うん、やっぱりさっきの顔とは別人だな。


『怪盗さん、どうかな?』
「合格。やっぱオメー覚え早ぇな。今度本格的に変装の仕方教えてやんよ」
『教えてもらっても使える場所がない気がするのはあたしだけ?』
「バーロー。オメーみてーに無茶するヤツは覚えておいて損はねーんだよ」
『無茶なんかしてないもん。無謀なことならたまにするけど』
「自覚あんならすんなよなっ!!」
『しーっ!怪盗さん、声が大きいってばっ!!』


一応鍵かけてるとはいえ、お兄ちゃんに聞こえて入って来られたらどうするんだ!


『まぁ、とりあえずこれは借りとくよ』
「おー。出来れば来ること自体諦めてくれっと俺的には安心なんだけどな」
『いくら明日お兄ちゃんが現場に行こうと、それは無理な相談だね。次の機会はいつ来るか分かんないんだからさ。せめて中ボスのとこまでは案内してもらうよ』
「ぜってーに無茶だけはすんなよ?」
『分かってるって』
「分かってねー気がすっから怖ぇんだよ」


お兄ちゃんが過保護になるのも分かって来たのが怖いって失礼だな。
怪盗さんにだけは言われたくないね。
前にわざと深傷を負ったのはどこの誰だよ。
なんて、文句を言いつつも、まずは物騒な人たちを探すとこから始めないといけない。
予想ではこの前みたいに大勢でうろちょろしてなくても、怪盗さんの現場に一人や二人はいるはずなんだけどなぁー。


「…」
『(いたっ!)』


警察でもないのに無線機を持ってて、ついでに顔からして怪しい人発見っ!
警察に捕まらない程度に離れてて、尚且つ怪盗さんの現場がよく見える場所ってここに来たんだけど、正解だった!
あたし、ナイス!!


『きゃっ!』
「気をつけろ」
『す、すみません…』


よしっ、無事に発信器は取り付けられた。
後は中ボスのとこに案内してくれるのを待つだけだ。
頼むから中ボスんとこにくらいは行ってよね?
とりあえずは怪しまれないように早くこの場から離れなきゃだな。
半径5km圏内なら、盗聴機能で音拾えるって博士が言ってたし。


「ボス、やはりあれはパンドラではなかったようです」
「…し……げろ」
「はっ!」


聞こえる聞こえる。
博士の発明も役に立つ時は役に立つじゃん!
パンドラって言うのは例の探し物のこと、かな?



とりあえず、どこに行くのか、後をつけさせてもらうよ!


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