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 25

父親から引き継いだ2代目のキッド、ねぇ。
なんか、もう話聞かなくてもだいたい分かってきたな。


「初めは俺がキッドを捕まえるつもりだったんだ。俺のマジックじゃキッドに敵わねぇって言われたのがムカついたからな。俺が敵わねぇ手品師は世界でただ一人、父さんだけだって証明する為にあいつを捕まえてやんだって思ってたんだ」
『それって、キッドが復活してからの数件の犯行をやった人だよね?手口が違うから、あれが怪盗さんじゃないのは分かってるんだ』
「その時、初めてこのパネルの仕掛けに気付いたんだよ。こっち来いよ」


怪盗さんに呼ばれたから怪盗さんの方に行くと、怪盗さんは少しだけパネルを押した。


『隠し部屋かぁー。盗一さんの最後のマジックって言ったところかな?』
「親父のこと、知ってんのか?」
『お母さんが盗一さんにお世話になったことがあるんだよ。だから、話には聞いてるよ』
「そっか。話の続きだけどな、この部屋に入って、俺はマントやシルクハットとかを見つけたんだ。親父は俺にメッセージを残してくれてたみてーだけど、それはテープがダメになってて聞けなかった。だから、俺はキッドに直接聞くことにしたんだ。ヤツなら親父のこと何か知ってんじゃねーかって思ったからな」
『で、その人が快斗と盗一さんを間違えて色々と喋ってくれたわけだ?』
「よく分かったな」


パネルを戻しながら怪盗さんが笑った。
そのくらい分かるよ。
怪盗さんだと分かってれば、きっとお父さんが殺された、なんて話はしない。
その人は盗一さんがキッドだって知ってるくらいに近い存在の人だ。
怪盗さんのことも知ってるはずじゃんか。
なら、怪盗さんがお父さんが死んだのは事故だって思ってることも知ってるはずなんだ。
一般的には盗一さんはショーの最中の事故死だって思われてるんだから。


『後はもう聞かなくても分かるよ。お父さんを殺した人たちを突き止めようとして、快斗が自ら怪盗さんになったんでしょ?お父さんと同じ怪盗さんやってれば、お父さんを殺した人たちが姿を現すだろうってさ』
「…」
『で、ホントに現れちゃったわけだ?あの物騒な人たちが。それで後をつけた時にでもあの探し物の話を聞いたんだね?』
「…あぁ、そーだよ」
『でも、あの物騒な人たちは末端に過ぎないから、ついでに黒幕にもご登場願おうとしてるわけ?』
「…」
『見てれば分かるよ。あの物騒な人たちがただの雑魚に過ぎないってことくらいはね。どうせ後をつけた時に探し物のことについてベラベラと喋ってくれちゃったヤツも下っぱだったんでしょ?』
「…」
『怪盗さんが途中からビッグジュエルを主に狙ってる辺り、例の探し物はビッグジュエルの中にあるんだね?』
「…」


怪盗さんは何も言わない。
でも、顔を見てれば分かるよ。
あたしの推測は外れてない、ってさ。


『怪盗さん。前言撤回していい?』
「ん?」
『もう一つ質問が出来たんだよ』
「何だよ?」
『来週まで待たなくていいの?』
「どうせヤベー話してんだ。今の内に答えてやるよ」
『怪盗さんは探し物を見つけたらどうするつもりなのさ?』
「…」
『答えられないんならそれで構わないからさ、そう言ってくれると助かるんだけどな?』
「…粉々にぶっ壊す」
『OK。不思議な力を物騒な人たちの親玉に渡すわけにはいかないんだね』


現場に出てきてる物騒な人たちはただの末端に過ぎない。
たぶん、物騒な人たちに指示を出してる人たちも小ボスか…よくて中ボスってとこだな。
黒幕の大ボスまで行くにはどうするのが早いかなぁー。


「オメー、止めねーのかよ?」
『え?何を?』
「他人のモン、ぶっ壊すっつってんだぜ?しかもビッグジュエルなんつーとんでもねーもんをな」
『そんなの、怪盗さんが壊さなかったら、怪盗さんが殺されて物騒な人たちに奪われちゃうだけじゃんか。だったら、そんなモンはさっさと壊しちゃえばいいんだよ』
「…オメー、ホントに名探偵の妹か?」
『妹だよ?ただし、法律より大事なモンがあればそっちを優先するけどね』
「…え?」
『怪盗さんが“壊す”って決めたくらいなんだ。不思議な力ってのは、眉唾物くらいは大層なモンなんでしょ?だったら、器物破損壊罪くらいなんだってのさ。それに、怪盗さんは今までの罪がお父さんの代から積み重なってるんだ。今更その程度の罪が増えたって些細なモンじゃんか』
「オメー、何気にヒデー思考回路してんな…」
『そうかな?』


そんなことより、大ボスまでの攻略法だよね。
なんかいい方法ないモンかなぁー。
こればっかりはお兄ちゃんに聞くわけにもいかないんだし。んー…


「オメー、さっきから何真剣に考えてんだ?」
『え?大ボスまでの攻略法?』
「は?」
『だってさ、物騒な人たちなんて雑魚なんか相手にしてても仕方ないじゃんか。その雑魚に指示出してる小ボスや中ボスも範疇外。怪盗さんは大ボスに用があるんでしょ?だから、何かいい方法ないかなって思ってさ』
「いやいやいや!ちょっと待てよ!」
『何さ?』
「なんでオメーがんなこと考える必要があんだよ!?それを考えんのは俺の仕事だろーがっ!!!」
『違うよ。怪盗さんが考えなきゃいけないのは、どうやって物騒な人たちより先に探し物を見つけるか、だよ』
「いや、それもそうだけど、両方俺の仕事だろ!!?」
『一人で二つやるより、一人一つの方が効率いいじゃんか』
「そりゃそーだけど、そういう問題じゃなくてだな!俺はなまえを危険なことに巻き込む為に、んな話をしたんじゃねーんだよ!!」
『もう遅いね。聞いちゃったモンは聞いちゃったんだからさ』
「〜〜っ!!」


怪盗さんが一人で悶絶してるけど、放置だな。
とりあえず中ボスまで行かなきゃどうしようもない、か?
雑魚から中ボス飛ばしてラスボスの親玉、なんて都合のいい方法なんてないだろうしなぁー。


「オメー、俺を捕まえるって言ってたのはどうしたんだよ?」
『それより先にすることが出来たんだよ』
「は?」
『とりあえず物騒な人たちを組織ごとぶっ潰さなきゃいけないじゃんか』
「はぁ!?オメー、何考えてんだよ!!?オメーはただの女子高生だろーがっ!!」
『煩いなぁー。言われなくても分かってるよ。だから、何かいい方法ないか考えてるんじゃんか』
「余計なこと考えなくていいから、オメーは危ねーことに首を突っ込むんじゃねーよっ!!!」
『残念だったね、怪盗さん。あたしが諦めの悪い性格だっていうこと忘れてるよ?ついでに言うなら、あたしは一度決めたことは何があろうが曲げないタチなんだ』
「はぁ…それにしても、何だって急にそんなこと言い出したんだよ?」
『あたしもお父さんのこと尊敬してるんだよ』
「は?」
『尊敬してるお父さんが殺されても黙っていられる程、あたしは大人しい性格してないんだ』
「…」
『そんな組織、何が何でもぶっ潰してやんなきゃ気が済まないね』
「別になまえの父さんがあいつらに殺されたわけじゃ」


怪盗さんの言葉を遮るように、あたしの携帯が着信を知らせた。
やばっ、この着うたってことはお兄ちゃんからじゃん!
でも、タイミング的には都合が良かったからそのまま自然に話を逸らすことにした。


『あ、お兄ちゃんから電話だ。怪盗さん、マリアの準備して!』
「お、おう」
『もしもし?お兄ちゃん、どうしたの?』
「どうしたの?じゃねーよっ!オメー、今何時だと思ってんだ!?」
『え?何時、かな?』
「もうすぐ22時だよっ!オメー、いつになったら帰って来んだよ!?」
『あはは…もうそんな時間なんだ?ごめんごめん。マリアと話込んじゃってさ…マリアの家、今日お母さんたちいないから、つい…』
「新一さん!あんまりなまえ怒らないであげて下さい!あたしがつい話こんじゃったのが悪いんです!これからなまえ駅まで送りますから!」
「あ、マリアさんか?うちの妹が長居しちまって悪ぃな」
「とんでもないです!日本料理教えてもらったり、お喋りに付き合ってもらったり…あたしとっても楽しかったんです!それじゃあ、これからなまえを駅に送りますから!」
「なまえにこっちの駅着いたら連絡するように伝えといてくれよ」
「はい!分かりました!
だってよ」
『確実に帰り道は説教だな…あはは…はぁ』
「ついでに兄ちゃんがまた夜間外出禁止令でも出してくれると俺としちゃ安心なんだけどな」
『それはない、と信じたい』


そんな会話をしながら、怪盗さんに駅まで送ってもらっていた。

とりあえず、明日博士に何かいいメカ作ってもらえないか相談に行こうっと。


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