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 18

怪盗さんとの約束の日、あたしは園子と一緒に杯戸デパートへと向かっていた。


「ところで、カフェってどのカフェで待ち合わせしてんのよ?」
『え?3Fのカフェって言われたけど…もしかしてカフェっていっぱいあったりするの?』
「あー、それなら大丈夫よ。3Fには一つしかカフェないから。あそこのプリンアラモードが絶品なのよね!」
『へぇ?そうなんだ。じゃあ、あたし今日それ食べよっと』


園子にカフェまで案内してもらって、週1のデートなんだから楽しんで来なよって言われたけど…この前不法侵入されたからご飯一緒に食べたよ。とまでは言えない。
怪盗さんが言った意味とは違う意味でお兄ちゃんにバレたら怖いしさ。
あたしが何言われるか分かったもんじゃないし。
結局お兄ちゃんはあの次の日も帰って来なかったけど、帰って来てから、なーんか様子が変なんだよね。
あたしを探ってるっていうかさ。


「なまえー!こっちこっち!」
『あれ?快斗もう来てたんだ?』


店員さんに案内されそうになってたあたしに、怪盗さんは手を振って居場所を教えてくれた。
何で怪盗さんの方が来るの早いんだ?
あたしの学校からの方が断然近いはずなのに。


『またチョコなんだ?』
「今日はケーキだぜ?今週のオススメケーキがフォンダンショコラなんだよ」


やっぱりこの怪盗さん、何食べるかでお店決めてるな。


「ご注文がお決まりになりましたらお呼び下さい」
『あ、あたしプリンアラモードで』
「俺、ガトーショコラね」
「かしこまりました」


案内してくれた店員さんがお水を持って来てくれたから、メニューも見ずに園子のオススメを注文した。


「なんだよ。なまえもこの店よく来んのか?」
『ううん。初めてだよ?デパートまで一緒に来た友だちが絶品だって言ってたから試してみようかと思ってさ』
「へぇ。確かにあれも美味ぇけど、俺的にはここのケーキを一度食べることをオススメするね」
『そういえばまたチョコケーキ注文してたけど…まだ食べる気なわけ?』
「デザートは別腹だろ?」


それは女のコの常套句だっつーの。
しかもそんなうっすい体に細い腰で、甘いもんが好物だとか女の敵だな。この怪盗さん。
いつか呪い殺されるんじゃないか?


『あ!このプリン美味しい!何コレ!?』
「ここはそれがウリなんだって」
『んー!幸せっ!』


カラメルソースが何とも言えない幸せを運んで来るけど、プリンも何かそこら辺のと比べるのも失礼な気がするくらい美味しいんだけど!


「さて、と。注文した品も来たし、本題と行こうぜ?」
『うん?』
「今週の質問は何だよ?」
『あー、それね。じゃあ、今週の質問ターイム!』


何かあたしこれ言わないと質問出来ないのかってくらい、毎回言ってる気がするな。


『例の探し物、期限はいつまでなの?』
「え…」
『あたしの勝手な予測だけどさ、あれっていつまでに見つけなきゃイケナイとかってあるんじゃない?それっていつ?』
「…」
『何度でも言うけど、答えないのも先伸ばしにするのも禁止だからね。ついでに言うなら、嘘もナシだよ』
「…」


怪盗さんは困ったように頭をガシガシと掻いていた。
この怪盗さん、時々お兄ちゃんと似たことするよね。
外見もどことなく似てるし、しゃべり方も微妙に似てるしさ。
この前怪盗さんが言うまで、バーローなんて言ってるのお兄ちゃんだけだと思ってたし。


「次のボレー彗星が来る時だってよ」
『それって後1年もなくなかったっけ?』
「そーだよ。だから奴らも必死なんだって!だから、オメーはもうキッドの現場には」
『何言ってんのさ。それとこれとは話が別だよ』
「…」


んー。彗星が来る時?
それと隠された宝石に何の関係があるんだ?
分かんないけど、それを聞くのは怪盗さんじゃなくて、あの物騒な人たちにだろうしなぁー…
でも、それを聞いたら、その時点で確実に殺されるな、あたし。
前に一回邪魔してるんだしさ。


「なまえは何でそんなにキッドに拘るんだよ?」
『あたしが捕まえるって初めて会った時に決めたから』
「え?」
『だから、これだけは誰にも譲るつもりはないんだよ』
「…」


聞き分けのない子どもを見るような困った表情をしてた怪盗さんが、どこまでも真剣に言ったあたしに目を丸くしてた。
でも、これが偽りのない本心だ。
これだけはお兄ちゃんにも譲るわけにはいかないんだよ。


「…これ、次のラブレター」
『ありがとう』


実はもう聞きたいことはほとんど聞いちゃってるんだけど、家から抜け出せる算段がまだつかない今は怪盗さんとの繋がりを断つわけにはいかない。


『今回はあたしが払うよ』
「え?いいって。俺が払うからよ」
『前払ってもらったじゃん』
「気にすんなって。じゃあ、またな」


あたしの手に確かにあったはずの伝票が、いつの間にか怪盗さんの手に移っていた。
月下の奇術師の名は伊達じゃないらしい。
…いや、こんな下らないことでもマジック使っちゃうって、どんだけ体に染み込んでんのさ?


『あ、園子?もう買い物終わった?』
「今から帰るとこだけど?」
『一緒に帰ろうよ。あたしも帰るとこだからさ』
「え?デートもういいの!?」
『今日はこれまでなんだよ』


園子と待ち合わせして一緒に帰ってると、何故かお兄ちゃんと遭遇した。何でだ?


「園子と買い物っつーのは本当だったのか」
『だから言ったじゃん。園子とデパート行くんだって』
「まぁ、何でもいいけど、用は終わったんだろ?なら家帰るぞ」
「新一くん、今何時だと思ってんのよ!?ちょっと過保護過ぎるわよ?自由に遊びに行けないなんて、なまえが可哀想じゃない!」
「こいつは何しでかすか分かんねぇから監視が必要なんだよ」
「何よ!その言い種は!」
『園子、いいよ。気にしなくて。今日は誘ってくれてありがとね』
「なまえ…」
「ほら、なまえとっとと帰んぞ」
『あっ!ちょっと!引っ張らなくてもちゃんと帰るからっ!!』


何故かずっとお兄ちゃんにぐいぐい引っ張られながら家まで帰ったんだけど、どうやらお兄ちゃんはまた目暮警部に呼ばれてるらしい。
だから、あたしを迎えに来たんだってさ。
目暮警部、お兄ちゃんの力ばっか借りてちゃ、桜の紋章が泣いちゃうよ?


「いいか?今日はすぐ事件解決して帰って来っから、大人しく家で待ってんだぞ?」
『もう…そんなに心配しなくても大丈夫だってば。この前だってちゃんと家にいたでしょ?』
「…」
『何さ?』
「いや、時間かかりそうだから、また帰ってからにする」
『は?』
「とりあえず行って来っから、家から一歩も出んなよ?いいな?」


玄関の扉が閉まったから、鍵は掛けたけど…やっぱりお兄ちゃんの様子がオカシイ。一体どうしたっていうんだ?
あたしは、怪盗さんとの約束の日以外は家で大人しくしてるし、何も問題なんかないはずだ、けど…。


『あれ?』


夕食を作って、自分の部屋に入った時に、何か違和感を感じた。何だ?
いつもの自分の部屋に見えるけど、何が違う?

机、窓、ベッド、本棚…一つずつ確認して気が付いた。
机の上にノートが置いてあることに。
目立たないように本棚の中に入れて置いたはずのノートが何故か机の上に置いてある。

学生バージョンの怪盗さんから貰ってたラブレターは簡単なものだったからこのノートは使ってないけど、初めて怪盗さんからラブレターを貰った時から暗号を解く時に使ってたノートだ。
何でこんなものが机の上にあるんだ…?



そんなの頭を使うまでもない。
お兄ちゃんがこれを見つけたんだ。


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