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- ナノ -


 01

『ひゃっほーい。今日も中森警部張り切ってるねぇ♪』
「おい、なまえ。オメーあんまり乗り出してっと落ちるぞ」
『失礼なっ!あたしそんなドジっ子じゃありませんよーだ。今日の予告状だって先に解いたのあたしじゃない!!』


あたしの名前は工藤なまえ。
高校生探偵で有名な工藤新一はあたしの双子のお兄ちゃん。
普段は現場に着いて行ったりはしないんだけど、今日は特別!
だってあたしもキッドを追ってるから!

別にあたしは高校生探偵でも何でもないけど、子どもの頃からお兄ちゃんと推理小説を読んだり推理ゴッコをしてたお陰で推理力が全然ないってことはないんだよね。
で、今時予告状を寄越すレトロな怪盗さんに興味を持ったんだけど、お兄ちゃんったらいつも怪盗さんに逃げられてるから今日はあたしも同行したんだ。
お兄ちゃんにはめっちゃイヤな顔されたけど、そこは無理矢理押しきっちゃった。


「おい、そろそろあいつの予告時間だぜ?」
『分かってるよ。3、2、1』


怪盗さんの決め台詞?を取って話してたら、案の定犯行予告現場の照明が落とされた。
何で中森警部毎回毎回おんなじ手に引っ掛かっちゃうんだろう?


『中森警部は今日も逃げられるかぁー。残念!』
「ま、あの警部じゃ幾ら警察官動員したって逃げられるのがオチだけどな」
『お兄ちゃんだって毎回逃げられてるじゃん』
「ウッセー」
『ほらほら、噂をしてたらレトロな怪盗さんのお出ましだよ!』


テレビ画面では何度も見たことあるけど、その白き翼を見るのが初めてなあたしは弥が上にもテンションが上がって行く。
バサリと降り立った怪盗さんはマントを靡かせて、月を背後に佇んでいた。

こんな時にこんなこと言うのは不謹慎なんだろうけど、何でこの人怪盗やってんのにこんな目立つ格好してんの?
この人に毎回ヤられてる中森警部やお兄ちゃんって一体…


「オメー今、ぜってー失礼な事考えてただろ?」
『滅相もございません!ほら、今はあたしの事より目の前の怪盗さんだよ』


小声でボソボソと話してる間も怪盗さんはあたしたちのことなんか関係ありませんっ!て感じで、さっき奪ったんであろうビッグジュエルを月に翳していた。
さすがにここまでムシを決められるとあたしもムカつく。


『ねぇ!それ、何かのおまじない?』
「おや?これはこれは名探偵の妹君。貴女までわざわざ来て下さったんですか?」
『だって、今日の予告状解いたのあたしだもん!レトロな怪盗さんに会いに来たんだよ!』


ここは上空30階のビルの屋上。
強風に負けないように声を張り上げた。


「ほう。さすがは名探偵ご自慢の妹君だ。それじゃあ、これはお返ししますよ」
『へ?うわあっ』


この怪盗、こんなバカデカイ宝石をヒョイッと投げて寄越しやがった!
あたしが落として傷でも付けたらどーするつもりだよ!!


「残念だったな。怪盗キッド。流石に俺となまえの二人がかりじゃ逃げ場がねぇんじゃねーか?」


お兄ちゃんが怪盗さんを煽ってる間に落としたりしないようにスカートのポケットに宝石をしまう。
…これ返し忘れないように気をつけなきゃあたしが強盗教唆に問われちゃうよ。


『そうだよ。怪盗さん。今日こそは捕まって貰うんだからっ!』


あたしがまず陽動に怪盗さんを捕まえるように抱きついたんだけど。
あれ?あっさり捕まっちゃったぞ?この怪盗さん。


『え?』
「強気なレディは好きですよ。なまえ嬢。しかし、私はまだ捕まるわけにはいかないので、これにて失礼」


って、上を向いたあたしのホッペに怪盗さんがキスしてきた!
誰っ!この人を怪盗紳士とか言った人っ!!!

かぁーっと顔中に熱が灯るのをただ手で抑えるしか出来なくて、その間にお兄ちゃんは怪盗さんに逃げられちゃったらしい。


「チクショー。あんにゃろー…なまえ、大丈夫か?」
『…』
「なまえ?」
『…る』
「え?」
『絶対あたしが捕まえてやるーっ!!!』


近くにいたお兄ちゃんが耳を押さえて踞るくらい絶叫したあたしの声だけが夜空に虚しく響いた。


あいつ嫁入り前の娘に何してくれてんだ!
まだ彼氏だって出来たことないのにっ!!

唇じゃなかっただけマシだろ?なんて、誰が思うか!
ここは日本だっつーのっ!!!


「バーロー!誰がオメーを二度と現場に連れてくるかよっ!」
『お兄ちゃんに連れて来て貰わなくても平気だもん!中森警部と番号交換してあるからっ!』
「オメーいつの間に…待てって、コラ!なまえっ!!」


あたしを追いかけてくるお兄ちゃんを徹底的にムシして、あたしは中森警部にこれからも捜査に全面的に協力します!とメールを打ってすたすたと家へと向かった。



次に会ったら覚えてろよ!
あのバ怪盗っ!!

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