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 17

「え?今度は次の火曜日のアリバイ作り手伝ってくれですって?」
『うん。来週の火曜日に約束してるんだよ。お願い!』


暗号は無事に解けたんだけど、アリバイ作りを何とかしないとそこへ行くことすら出来ない。
今のお兄ちゃんはいつ終わるか分からない過保護強化月間のせいで、あたしが別行動する時は行き先を言わないといけないのだ。
あたしは小さな子どもじゃないってのにっ!
とは思うけど、そんなこと言ったらマジで軟禁くらいはされそうな気がするから言えない。


「んー…そのデート、どこ行くかとか決めてないの?」
『杯戸デパートのカフェだけど?』
「じゃあ、こうしましょ?あたしの買い物にあんたが付き合ってくれるってさ。来週は杯戸デパートでセールがあるから、元々あたしも行く予定だったのよ」
『もう園子大好きっ!』


勢い余って、園子に抱きついてしまった。
でも、なんだかんだ言って協力してくれるんだもん!
マジで助かってるし!


「オメーら最近ヤケに仲良くねぇか?よく内緒話してやがるし、何があったんだよ?」
「新一くんが蘭とばっかいるから、なまえが寂しがってあたしんとこ来るんじゃない。バカップルの邪魔出来ないってさ」
「なっ…だから!蘭とはそんなんじゃねぇって言ってんだろーがっ!!」
『園子、あの真っ赤な顔で説得力あると思う?』
「全っ然ないわね」
『だよねー』


真っ赤になったお兄ちゃんを指差して園子と二人で笑ってたら、首根っこを掴まれてひょいっと持ち上げられた。
ちょっと!あたし猫じゃないんだけど!?


「なまえ。オメー、今日は一緒に帰れるんだろうな?」
「今日はいいけど、来週の火曜日はあたしに貸してよ?」
「は?またかよ?」
「杯戸デパートでセールがあるから着いて来てもらう約束したのよ」
「へいへい。ったく、女ってホントに買い物とか好きだよな」
『お兄ちゃん!いい加減下ろしてったら!!』


園子とお兄ちゃんの暢気な会話よりも、地味に足が届かない今の状況の方があたしには一大事だっての!!


『やっと降りれた…』
「ほら、帰んぞ?」
『はーい。園子、またね!』


お兄ちゃんに手を繋がれて一緒にとてとてと帰るのは、過保護になる前からの習慣だ。
高校生にもなって何やってんの?ってみんなには言われるけど、お兄ちゃん曰く、小さい頃からこれやってるから自然とやっちゃうんだって。
あたしも記憶にある限り、お兄ちゃんと一緒に帰る時はこれが当たり前だったから、違和感ないんだよね。


「目暮警部にどうしても来て欲しいって言われたから行って来っけど、オメーは家から一歩も出るんじゃねぇぞ?」
『分かってるって』
「いいか?俺が家電鳴らしても出ないとかやってみろ。そん時はこの家から一歩も出さねぇからな」
『だから分かったってば!早く行きなよ!警部さん、お兄ちゃんのこと待ってるんでしょ!?』
「じゃあ、行って来る。遅くなるようなら連絡すっから、そん時は先に飯食って寝とけよ」


やっと出て行った…。
あたしは初めて留守番する子どもか?
どんだけ注意したら気が済むんだよ…。
10分以上、おんなじこと言われ続けたんだけど…。
疲れたーってご飯作る前に自分の部屋でちょっと休もうとしてたら、直ぐに窓からの来客があった。


「兄ちゃんスゲーな。あそこまで過保護になってるとは思わなかったぜ」


他人事だと思って、楽しそうに笑ってる怪盗さんがムカつく。
不法侵入で訴えてやろうかな。


『今日はどうしたのさ?珍しいじゃん。怪盗さんがわざわざ家に来るなんて』
「あー、兄ちゃん出掛けるって知ったから、また飯作ってくんねーかなぁって思ってよ」
『は?』
「今日、母さんいねーからコンビニ弁当買うしか俺の飯ねぇんだよ」


怪盗さん、その為だけにわざわざ2階まで登って、窓開けて家に不法侵入して来たわけ?
ってかお兄ちゃんが出掛けるってどっから情報が漏れたんだ?
いや、怪盗さんのことだから警察の情報ハッキングくらいしてそうだな。


「なぁ、ダメか?」
『途中でお兄ちゃん帰って来たらどうすんの?』
「帰って来ねーよ。いや、帰って来れねーって言った方が正しいか?」
『ソレ、どういう意味?』
「オメーの兄ちゃんが捜査協力断ってたせいで、未解決事件が結構あんだとよ。兄ちゃんのことだから、片付けれるだけ片付けて来るんじゃねーか?」


訂正。絶対ハッキングか盗聴かしてるわ。この怪盗さん。
でも、そんな状況ならお兄ちゃん喜んで事件片付けていくんだろうな。
最近事件不足で欲求不満だっただろうしさ。


『いいよ。怪盗さん、リクエストとかある?』
「今日の気分はハンバーグかな」
『分かった。じゃあハンバーグ作るよ。でも、何で玄関から入って来なかったのさ?お兄ちゃんいないの知ってたんでしょ?』
「バーロー!んなとこ誰かに見られて、兄ちゃんにチクられてみろ!なにがなんでも俺探し出して八つ裂きにされんだろーがっ!!」
『怪盗さんは心配性だなー。いくらお兄ちゃんでも、そんなことしないってば』
「あのシスコンが?自分が居ねー間に家に上がり込んだ男をほっとくと思ってんのかよ?その方があり得ねーだろ?」


二人で一階に下りながらそんな話をしてたんだけど、お兄ちゃん、怪盗さんに一体どんな風に思われてんだ?


「現にオメーに近付こうとした男はみんなオメーの兄ちゃんに…」
『え?何?』
「いや、何でもねーよ。オメーは知らねー方がいい気がするしな」


何か怪盗さんがボソボソ言ってたんだけど何だったんだ?


トゥルルル


『はい、工藤です』
「悪ぃ、なまえ!今日は帰れそうにねぇんだ。俺の分の飯は作んなくていいから。戸締りだけはちゃんとして寝ろよ?じゃーな」


えらく焦ってたけど、なんか楽しそうな声だったな。
やっぱり禁断症状出てたんじゃん。
でも、携帯じゃなく家電にかけて来る辺り、やっぱりあたしのこと信じてないな。


『怪盗さんの言った通りだね。お兄ちゃん、今日帰って来ないからご飯要らないってさ』
「な?だから言っただろ?」
『お兄ちゃんも最近事件現場行ってなくて禁断症状出てたし、あの様子じゃ明日も帰って来るか分かんないね』
「禁断症状って事件中毒かよ?」


怪盗さんはオカシそうに笑ってるけど、あれは中毒だよ。
事件ないと生きていけないんだからさ。


『怪盗さんが明日予告状出してくれたらあたしも助かるんだけどなぁ?』
「残念だったな。明日は仕事の予定はねーよ」


二人で怪盗さんリクエストのハンバーグを食べながら、そんな会話をしてた。
美味しい美味しいって食べてくれるのがなんか嬉しい。
お兄ちゃんは美味しいとか不味いとか、そういうこと全然言わないからなぁ。


「でも、オメーもこの姿の時に怪盗さんは辞めろよな?」
『怪盗さんは怪盗さんでしょ?それにあたしのこと名前で呼ばない人に言われたくないよ』
「わーった。俺もちゃんとなまえって呼ぶから、なまえも直してくれよ。俺、仕事とプライベートはきっちり分けてんだ」


怪盗さんはまた前みたいに両手を上げて降参ポーズをした。
どうせなら仕事中にそのポーズやって欲しいな。
そしたら簡単に捕まえられるのに。

結局、怪盗さんはご飯を食べた後に食後の珈琲まで要求して寛いでから、来た時同様、あたしの部屋の窓から帰って行った。…そういえば、靴ってどうしてたんだろ?

それにしても、このシュガースティックの空き袋どうしよっかなー。
あたしもお兄ちゃんも珈琲はブラックで飲むんだよね。
でも、まぁ、お兄ちゃんもゴミ箱漁ることまではしないかって、悩んだけど普通にゴミ箱に捨てることにした。


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