×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


 08

「なぁ、なまえ」
『…』
「オイ!オメーいい加減に返事くれーしろよ!」
『お兄ちゃんが質問に答えてくれたらね』


あれから自分で考えてても埒が明かないと、お兄ちゃんに真っ向から尋ねてみた。
怪盗さんもお兄ちゃんに聞けば分かるって言ってたし、何よりお兄ちゃんのあの言い方は絶対何かを隠してる。


『怪盗さんの犯行現場に何があるっていうのさ?』
「オメーは知らなくていいことだ」


以上、会話終了。って納得出来るか!
あたしがこういう性格だってお兄ちゃんなら分かってるはずじゃないっ!


「ちょっと、まだ仲直りしてないの?今回はいつもより長くない?」
『お兄ちゃんが意地っ張りなんだよ』
「はぁ?それはオメーの方だろ?」
「はい、ストーップ!新一もむやみになまえ怒んないの!」
「んなこと言ったってだな…オイ!何勝手に一人で学校行こうとしてんだよ!」


後ろで叫んでるお兄ちゃんの声はもちろん聞こえてるけど、聞こえなかったフリをして蘭がお兄ちゃんを押さえてる間にあたしは一人黙々と学校へと向かった。

怪盗さんの犯行現場付近は時折戦場になる。
これは怪盗さん本人が言ってたんだから間違いないだろう。


「それに答えると言うことは貴女の身にも危険が及ぶかもしれないんです!」


あれはあたしを危険から遠ざけようとしたから?
だからあんなゲームを用意したの?

考えれば考える程分かんない。
せめてお兄ちゃんがホントのことを言ってくれたら、何か分かるかもしれないのにっ!


「なまえってば!」
『え?何?』
「もうっ!あたしずっとなまえを呼んでたのよ?ったくあんたたち兄妹は考え事すると周りが見えなくなるんだから」
『園子そんなに怒んないでよ。ごめんってば。それでどうかしたの?』
「例の逢い引きって今日でしょ?どうなったかちゃんと教えなさいよね」


そうか。お兄ちゃんが教えてくれないなら怪盗さんに聞くって手が残ってたんだ!


『さっすが園子!頼りになるー!』
「え?まぁね。この園子様に任せておけばどんなことでも大丈夫よ」

ギャーハハハとよく分かんない笑い声を出し始めた園子を置き去りにして、あたしはまた自分の思考に集中し始めた。
どう聞けば怪盗さんが素直に答えてくれるのか。
怪盗さんの気まぐれで終わってしまうこのゲームは、次があると思って質問をしてたらいけない。

怪盗さんを狙ってる人がいるの?
なんて聞けば、そうですね。で会話が終わってしまいかねないのだ。
ここは質問を慎重に選ばないといけない。


「今晩は。なまえ嬢」
『今晩は、怪盗さん』


今日の待ち合わせ場所はビルの屋上。
夜景を見ながら考え事をしていたら、どうやら約束の時間になってしまっていたらしい。
密かに恒例にしていたカウントダウンが出来なかった。


「今日も園子嬢の家に泊まると言って出かけて来たのですか?」
『よく知ってるね。でも毎週泊まってたんじゃ、すぐにお兄ちゃんにバレちゃうよ』
「ほう。それでは今日は何と言って出てきたんですか?」
『当ててみれば?』


お互いを鋭く見据えたまま、口元には深く笑みを浮かべ、その様はお互いを挑発している様にも見える。
だけど、先に動いたのはあたしだ。


『怪盗さん、今日は質問タイムの前に次のラブレターが欲しいんだけど?』
「構いませんよ。前回のラブレターは気に入っていただけなかったようですので、今回は力を入れて来たんです」


だから、ドコで見てたんだよ!っていう言葉をなんとか飲み込む。
差し出したあたしの手に、怪盗さんから封筒が渡され、それを大事にしまってから話を切り出した。


『今回はyesかnoでもいいよ。戦場になるっていうのは、怪盗さんと同じモノを狙ってる物騒な人たちがいるっていうこと?』
「…」
『沈黙は肯定ととるよ?』
「お好きなように」


質問をした時、怪盗さんを纏う空気が確かに変わった。
今回のこの質問の答えはyes。つまり、怪盗さんもお兄ちゃんもその物騒な人たちとあたしが鉢合わせするのを避けたいんだ。
心配してくれるのは結構だけど、余計なお世話なんだよ!


『怪盗さん、今回は特別ゲストを呼んでるんだよ!』
「貴女のお兄様ですか?」
『まさか。なんで自分からゲームオーバーにならなきゃいけないのさ』
「それではドナタですか?」
『それはね…』


近づいてくるヘリの音にあたしの声が掻き消された。
そしてヘリはあたしではなく、白いマントを靡かせる怪盗さんを照らし出した。


「キッドーっ!!今日こそは貴様を捕まえてやるからなーっ!!!」

「なるほど。特別ゲストは中森警部でしたか」

『さぁ、どうする?怪盗さん?』


こんな近くにヘリがいたんじゃご自慢の白い翼も使えない。


「者共!確保だーっ!!」

『ちょっ、怪盗さんは変装が得意なんでしょ!?』

「ごきげんよう、なまえ嬢」


大量の警察官が屋上に雪崩れ込んだ時、確かに怪盗さんは笑っていた。
中森警部のバカーっ!!!


[ prev / next ]