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40.ぶつけられた想い


入院してる間、先生も有希子さんもホントに申し訳ないくらいにあたしの為に時間を割いてくれた。
先生は暇つぶしに…っていろんなジャンルの本を持って来てくれたんだけど、はっきり言ってあたしの頭では理解出来ない物理関係の本が混じってた時には泣きそうになった。
でも、先生が懇切丁寧に教えてくれたから、何となくは理解出来たと思う。
ホントに、何となく、だけど。

新一とはあれから何となく顔会わすの気まずいなぁって思ってたんだけど、本人は全く気にしてないのか、部活終わりに病室に来ては、面会時間が終わって先生に追い出されるまで病室に居座っていた。
…キミは学習能力がないのかとツッコミたくなったのは、あたしだけの秘密だ。

ってわけで、昼間は有希子さんか先生が傍に居て下さって、夕方はお見舞いに来てくれる明日香たちやクラスメート、サッカー部の方々と、入院してる割りに一人になれる時間がほとんどなかった。

おかしいな。前に未遂で入院した時は暇でヒマで仕方なかったはずなのに。
どうして色々考えたい時に限って一人になれないんだろう?

いや、みんなの気遣いはホントに嬉しいんだけど。
ちょっと今は色々考えたいことがあるから一人になりたかったり。

それでいざ退院、ってなった時に、これで一人になってゆっくり考えられると思っていたら、当たり前のように工藤邸へと帰還した。あれ?


「また何かあったら大変だから、しばらくはうちで過ごしてね?」


っていう有希子さんのお願いを、もう大丈夫ですから!って断って帰ろうとしたんだけど、先生にまで


「せめて1週間でも構わないから家で過ごしてくれないかい?私もなまえ君のことが心配なんだ」


なんて頼まれてしまっては、断れなくなってしまった。
この夫婦にあたしが勝てる筈がないんだと諦めて、じゃあ、制服や教科書とか取りに帰りますと言えば、


「それなら、もうなまえちゃんの部屋に置いてあるから大丈夫よ?」


と当たり前の様に有希子さんに返された…。
準備万端にして下さるのは有希子さんの常だけど、いつの間にあたしの家に入ったんですか。
有希子さん、入院中は基本的にずっとあたしの話相手をして下さっていた筈なのに。
あぁ、夕方のお見舞いラッシュになるといつの間にか消えてたりしたから、あの時にこっそり(堂々と?)着実に準備していたのかもしれない。

園子に新一に告白されそうになったことを相談したかったんだけど、土日は工藤家から一歩も外に出して貰えなかった。
寧ろ、新一が部活を休んでまであたしの傍から離れなかった。
だから、そんなことばっかしてたら、レギュラーから外されちゃうってば。

ってな訳で、1週間ぶりに登校した月曜日に園子の家に寄らせてもらった。


「それで?あたしに聞いてもらいたいことって何なの?」

『実はね、』


目が覚めたその日に新一に告白されそうになったことを伝えると、園子に思いっきり呆れられたような顔をされた。
いや、されると思ってたけど、もう少しオブラートに包んで欲しい。


「あんたねぇ…もう気付かないフリ出来ないとか言うくらいなら、新一くんの告白受けちゃえば良かったじゃない!」

『だって、その時は告白を断る勇気も素直に頷けるだけの余裕もなかったんだもん』

「ちょっと待ちなさいよ。何で断る必要があるわけ?あんたも新一くんが好きだってやっと認める気になったのよね?」

『それは認める。けど、』

「けど、じゃないでしょ!?何で好きなのに告白断る必要があるのよ!?」

『そんなこと言われたって、新一のキモチ素直に受け取るの怖かったんだから仕方ないじゃない』

「…なまえ、まさかとは思うけど、新一くんからの告白受ける勇気がないからアメリカに逃げようとか思ってないでしょうね?」

『やっぱ、ダメ?』

「ダメに決まってるでしょうが!!」


結構本気でアメリカまで逃げちゃおうかとか考えてたら、園子に一蹴されてしまった。
そんなこと言われたって怖いんだから仕方ないじゃない。


「あんた、怖い怖いって何がそんなに怖いのよ?好きな人が自分を好きだって言ってくれてるのよ?さっさと告白受け入れて付き合っちゃえばいいじゃない!」

『分かんない…けど、はっきり言われるの怖かったんだもん』

「はぁ…なまえの臆病風がまだ壁を作ってるってわけね。
やーっと、なまえが自分から新一くんのこと好きだって言えるようになったってのに、くっつくのにはまだ時間がかかるのかぁ」

『まだくっつくって決まったわけじゃあ…』

「何言ってんのよ!なまえが新一くんの告白受け入れて自分も新一くんのことが好きだって言えば自動的にくっつくでしょうが!!」

『でも、待ってもらってる間に新一の気が変わるかもしれないし…』

「あんた、少しだけ待ってって言ったクセに、そんなに待たせるつもりなわけ?先に言っとくけど、新一くんのキモチが変わるまで待つとかぬかしたら今すぐ新一くんになまえのキモチバラすわよ?」

『怖いこと言わないでよ』


携帯を取り出して、あたしを脅す園子に、もう苦笑いしか出ない。
園子ならホントにやりそうだから怖いんだよ。


『ちゃんと新一のキモチ素直に受け入れるだけの心の準備が出来たら自分で言うから、頼むから余計なこと言わないでよ?』

「新一くんなら、なまえが自分のこと好きだって聞いたら飛んでくると思うけどね」

『そんなことしなくても、部活が終わったら新一ここに来ることになってるわよ?』

「は?何で新一くんがうちに来るのよ?まさかあんた、告白受ける勇気ないからあたしに傍に居てとかいうつもりじゃないでしょうね?」

『そんなんじゃないってば!今、新一の家でお世話になってるって言ったでしょう?今日は園子の家に行くって言ったら、新一から部活終わりに迎えに行くからそれまで園子の家から一歩も外に出るなって言われたのよ』

「…。まぁ、あんなことがあったばっかだしね。新一くんが過保護になるのも無理ないか」

『新一だけじゃないわよ?今、工藤家過保護週間なのよ』

「は?」

『有希子さんは一緒に料理すら作らせてくれないし、先生はあたしが寝付くまで傍に居てくれるもの。あの家にいる間中、あたしの傍に必ず誰かがいるから、正直なとこ逆に落ち着かないの』


はぁ、って深いため息を吐いたら、園子に1週間の辛抱だから頑張ってって同情された。




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