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38.揺らぐ心


翌日、学校に行ってみるといつもと何も変わらなかった。
なんだ。心配して損した。


『明日香、おはよー』

「なまえちゃん、おはよー。あのね、この前行ったお店の近くに新しいお店出来たんだって!今度一緒に行こうよ!」

『へぇ、そうなんだ?いつ行く?』

「んーとねぇ、今日は塾があるから」


アメリカ行きの話をした時には取り乱していた明日香も、もう落ち着いたみたいで普通に笑いながら話しかけて来てくれる。
良かった。また泣かれちゃうんじゃないかと思って不安だったんだよね。


「なまえ、はよー」

『あ、新一。おはよー。どうしたの?』


朝から新一があたしの席に来るなんて珍しい。


「どうしたの、じゃねーよ。オメーが」

「ダメーっ!!」

「『え?』」


新一が呆れ混じりに何かを言おうとしたら、急に明日香がそれを遮った。
しかも全力で叫びながら。
え?何。どうしたの?


「工藤くんはなまえちゃんと喋っちゃダメーっ!!」

「はぁ?」


あたしを守るようにあたしと新一との間に立ち塞がった明日香に新一も訳が分かんないみたいだ。
うん、あたしも何がどうなってんのか、さっぱり分かんないし。


「工藤くーん?今度はみょうじさんになぁにしたのかなぁ?」

「は?俺は何も」

「嘘つけ!何もしてねーのに、なまえちゃん親衛隊の河野さんがお前を遠ざけるわけがねぇだろーが!何したか素直に吐きやがれ!」

「いや、俺はホントに何も」

「言い訳は向こうでゆーっくり聞かせてもらおうか」


男の子数人に取り囲まれた新一は、教室からあっという間に連れ出されてしまった。
それにしても、あたしの親衛隊って何?
まぁ、そんなことは置いといて。


『明日香、急にどうしたの?』


まだ興奮してるのか、あたしの前で肩で息をしてる明日香に声をかけてみる。
何もなしにあんなこと言う子じゃないのは、あたしもよく知ってるし。


「だって…工藤くんにアメリカ行き説得されちゃったら、なまえちゃん、アメリカに行っちゃうかもしれないんでしょ?」

『え?』

「あたしそんなのイヤだもん!」


抱きついて来た明日香に言葉が出ない。
どうやら明日香は昨日の園子たちとは反対に、新一があたしのアメリカ行きを説得しに来たと思い込んでいるらしい。

いや、あたしは新一が、あたしも先生たちにアメリカに一緒に行こうって誘われてるのを知ってるかどうかすらも知らないんだけど?


「おーおー。相変わらず朝からお熱いわねぇ」

『ちょっと園子、からかわないでよ』


さっきのやりとりを園子に説明すると、園子は目を丸くした後にお腹を抱えて大爆笑した。
…こいつ、絶対、今新一がどんな目に遭ってるか想像して笑ったな。


「河野さん、それ勘違いだから」

「え?」


笑い過ぎて溢れてきた涙を拭いながら、園子が言った言葉に今度は明日香がきょとんとしてる。


「なまえ、ちょっと河野さん借りてくわよ?」

『明日香に余計なこと吹き込まないでよね』


まだ事態を把握してない明日香がえ?え?と、あたしと園子を交互に見てたけど、あたしも園子も大丈夫だからって視線で伝えて、あたしは明日香に向かってひらひらと手を振った。




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