32.偶然の再会
いつもの様に自分の席で小説を読んでいると朝から珍しい来客があった。
「よっ、なまえ。今日も本読んでんのかよ？」
『新一、おはよー。だってちょうどいい暇つぶしなんだもん』
「ならこれも読んでみるか？俺のオススメなんだけど」
教室がいつもよりざわついてる気がしたけど、あたしには関係ないことだと思ってスルーしていた。
まさか自分たちのことで騒いでるなんて思いもしなかったから。
「ねぇ、つい最近まで工藤くん、なまえのことみょうじって呼んでたよね？」
「ああ。みょうじさんだって新一、じゃなくて工藤くんって呼んでたはずだぜ？」
「おい、鈴木！あの二人どうなってんだよ！？」
「あたしに聞かないでよ！あたしだって知らないんだから！新一くんがなまえから離れたら聞いてくるわ。蘭は新一くんの方をお願い」
「分かった！」
何とも連携の取れたクラスだが、こうなった原因は言わずもがな文化祭のキス事件にある。
園子に手を貸していたグループからあっという間に工藤新一の片想いの相手が広まったのだ。
まぁ、言われなくてもあの劇を見れば誰でも分かったことだろうけど。
「じゃあまた後でな」
『本ありがとね』
さぁて、新一も自分の席に帰ったし、本の続きでも読むかと本を開こうとした時に、机をバンっと叩かれた。
「なまえっ！」
『うわっ！ビックリした！園子、急に湧いて出るの辞めてよね』
「失礼ね。人をお化けみたいに言わないでよ！」
いつも急に出てくるから、あながち間違ってないと思うんだけど。
これは言わないでおこう。絶対、怒られるから。
『それで？何の用なの？』
「いつからなの！？」
『何が？』
「つい最近まで新一くんのこと“工藤くん”って呼んでたじゃない！いつの間に名前で呼びあうようになったのよ！？」
『あー、それならこの前のサッカー部の練習試合の時だよ？名前で呼んでくれって言われたから』
「それで？」
『それでって何が？』
「その続きに決まってんでしょ！」
『あたしのことも名前で呼んでいいかって聞かれたからＯＫしただけだけど？』
「はぁ…」
『何よ？そのため息は』
「気にしないで。あんたたちに急展開を期待したあたしがバカだったわ」
『はぁ？』
この前の新一といい、今の園子といい何を訳の分かんないことを言ってるのよ？
オマケにあたしに分かるように話す気がないとか失礼じゃない！
「ねぇ、なまえちゃん」
『なぁに？明日香』
「あのね、工藤くんと仲直りしたの？」
恐る恐ると言った感じでされた質問に？マークが浮かんだ。
仲直りって何？
「なんか劇の後から工藤くんの様子おかしかったでしょ？でも、さっきは普通に話してたから仲直りしたのかなぁって」
『別にケンカしてたわけじゃないけど…仲直り？した、のかな？』
「何よ、その曖昧な言い方は」
『だって様子がおかしかったのって新一だけでしょ？それが元に戻ったってだけだし』
「今は頭抱えてるみたいだけどね」
『え？』
「ほら、新一くんの席見てみなさいよ」
園子に言われて新一の席を見たら、蘭が新一の席にいて何だか知らないけど、新一が頭を抱えていた。
一体何話してるんだろう？
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